建設業界の設計職について 必要なスキルからキャリアアップまでをご紹介します

建設業界の設計職について    必要なスキルからキャリアアップまでをご紹介します

建設業界の職種の中でも設計職は、アイデアを形にできるという魅力や、クリエイティブな作業のやりがいから、人気の職種の1つです。

しかし、実際に建築士や設計士として働くために必要なスキルや、キャリアアップのためのポイントについては、あまり詳しく知られていないのが現状です。

そこで今回は、設計職の仕事内容や求められるスキル・能力、さらにはキャリアアップのポイントや設計職に転職するための要点について詳しく解説します。

設計職への転職を目指している方や、設計職に興味をお持ちの方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

設計職の概要

まずは、設計職について、設計職の業種や設計職として働く際の職場についてご説明します。

設計職の業種

建築設計の場合、設計の業種は大きく意匠設計、構造設計、設備設計の3つに分けられます。

意匠設計

意匠設計は、建築物の外観デザインや内装の設計など、建築設計の中で特に目に見える部分の設計を行います。

この分野では、建物の見た目だけでなく、使いやすさや快適さも重視されており、建物全体のコンセプトを作り、間取りやインテリアなどの詳細なデザインを計画します。

また、最近では環境への配慮や動線の工夫なども意匠設計において重要な要素となっています。

構造設計

構造設計は、建物の基礎や骨組みの設計を行います。

意匠設計が建物の外観や空間のデザインを担当するのに対し、構造設計は建物の耐震性や強度を計算し、柱や梁などの骨組みを設計するのが主な仕事です。

構造設計により、建物が安全かつ安定して立つことが可能となるため、建物の安全性を確保するためにも、非常に正確で厳密な設計が求められる分野です。

設備設計

設備設計は、建築物の機能を支えるためのインフラ設計を担当する仕事です。

設備とは電気配線、空調システム、給排水やガスの配管などが該当し、建物が快適に利用できるようにするための設計を行います。

これらの設備の設計は、建物の居住性や効率性に直結するため、専門知識と精度が求められます。

設計職として働く際の主な職場

続いては、設計職として働く際の主な職場についてです。

建築設計を行う際の職場にはいくつかの選択肢がありますが、それぞれの職場の概要や、仕事内容の特徴などについてここではご紹介していきます。

アトリエ事務所

アトリエ事務所は、個人の建築家が主宰する設計事務所で、少人数で運営されることが多いのが特徴です。

アトリエ事務所では、建築家の独自のデザイン性や作家性が強く反映され、特に意匠設計に重点が置かれる傾向があります。
また、アトリエ事務所の特徴として、デザイン力を発揮する機会が多く、早い段階から設計の全工程に携わることが可能です。

ただし、少数精鋭のため、一人一人の負担が大きくなることもあり、長時間労働になることも少なくありません。
また、即戦力が求められる職場でもあるため、新卒や他業種からの就職は難しい場合が多いです。

組織設計事務所

組織設計事務所は、多くの設計士を抱える大規模な建築設計事務所であり、意匠設計、構造設計、設備設計のすべてを手がける組織です。

これらの事務所では、基本的には意匠設計部門が設計全体の統括を行い、他の専門部門と連携してプロジェクトを進行させていきます。

このような事務所は、全国の主要都市に支社や支店がある場合など、全国規模で展開されている組織設計事務所もあります。

また公共施設や商業施設、オフィスビルなどの大規模なプロジェクトを手掛け、法人関係の仕事が多いのも特徴です。

組織設計事務所では、デザイン性だけでなく、機能性やコストパフォーマンスが重視されるため、堅実な設計が求められます。

アトリエ事務所と比較するとデザインの自由度が低く、個人の創造性を発揮する機会は少ないかもしれませんが、企業の規模や分業体制の整った環境で働くことで、大規模なプロジェクトに携わりながら、多岐にわたるスキルを磨くことができる職場です。

建設会社(ゼネコン)

建設会社(ゼネコン)にも設計部があり、意匠設計、構造設計、設備設計の設計者が在籍しています。

ゼネコンの設計部では、会社ごとに異なる設計方針に基づき、施工部門と連携して設計を進めることが一般的です。

設計事務所とは異なり、施工者の要望や提案を受け入れ、図面の変更を行うことも少なくありません。
また、設計後の施工についてもゼネコンが担当するため、会社のなかで建設プロジェクトの流れを知ることができる一方で、設計者の自由度は、アトリエや組織設計事務所と比較するとやや制約される傾向にあります。

ゼネコンでは商業施設やオフィスビル、マンション、集合住宅や公共施設、都市再開発などの大規模な建物やプロジェクトに携わる機会が多いのも魅力の1つです。

ゼネコンの設計部門については、
ゼネコン設計部門への転職のポイントとは? 設計事務所、アトリエと比較してご紹介します
の記事でも詳しくご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

ハウスメーカー

ハウスメーカーは住宅建築に特化した企業のため、ハウスメーカーの設計職は戸建住宅やマンション、アパートなどの比較的小規模な住宅を手がけます。

ハウスメーカーでの設計業務の特徴としては、設計段階のすべての工程をほぼ一人で担当する点です。

小規模な住宅を扱うため、意匠、構造、設備のすべてを一人の設計者が行うことが求められます。

住宅の設計では施主と直接会って話し合いながら設計を進める場合と、営業担当者のヒアリング結果に基づいて設計する場合があり、施主と直接やり取りする場合は変更や修正の対応が迅速にでき、手応えを感じやすいですが、設計以外の時間も多くなることがあります。

一方、営業担当者のヒアリングを通じて設計する場合は、設計業務に集中できるものの、情報が変わることが多いため、何度もプラン修正を行う必要があります。

ハウスメーカーといってもその規模は様々で、戸建て住宅の企画・設計・販売や技術開発を行い、全国規模で展開する企業や地域に密着した工務店型の企業まで幅広く存在します。

全国規模で展開する企業は、各社が独自の住宅商品を提供し、最新の設備やデザインのトレンドを取り入れて設計を行います。
一方で工務店型の企業は、地域特有のニーズを直接把握し設計に反映させるため、設計者が営業活動も兼ねるケースが多いのが特徴です。

設計職で求められるスキル・能力

続いては、設計職で求められるスキル・能力についてご紹介します。

今回は、設計職で求められるスキル・能力を3つご紹介します。
それぞれ、なぜそのスキルや能力が必要なのかも説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。

建築基準法・自治体の条例等の読み解きや理解・知識があること

建築の設計を行ううえで、建築基準法や自治体の条例を理解することは、最低限身につけておきたいスキルです。

建築基準法や自治体の条例の理解は、建築士の試験範囲に含まれるため、建築士の資格取得を目指す過程で、建築基準法や自治体の条例に関する知識は自然と学ぶことになりますが、法律や条例は頻繁に改正されることがあるため、最新の情報をキャッチアップし続ける姿勢も重要です。

以下では建築基準法や自治体の条例の理解が重要となる理由をより詳しく説明していきます。

安全確保・設計の適法性

建築基準法や自治体の条例を守ることは、設計職として最低限守るべきことで、これらの法令に違反する設計は、建築確認申請が通らず、工事が進められない可能性があります。
設計で不備があるとその後のプロジェクトがスムーズに進まず、遅延やコスト増加のリスクが高まります。

そのため、ベースとなる設計時に法令や規制に対する理解を深め、適正な設計を行うことでその後のプロジェクトを円滑に進めることができます。

条例による土地ポテンシャルの向上

自治体の条例は、その地域の特性や環境に応じた規制を設けています。

例としては、景観保護のための建物の高さ制限や、耐震性能に関する特別な要件などが挙げられます。

これらの規制に対応するためには、地域ごとの規制の知識を深め、迅速に理解することが重要です。

また逆に緩和型の条例もあり、一定の要件を満たせば、容積率の割り増し、高さ制限の緩和など、土地のポテンシャルを高めることが可能です。施主としては資産価値の向上になります。

この視点を持って設計の仕事ができるようになると、デベロッパーなどの大規模開発事業者から重宝され、活躍の幅が広がります。

顧客の信頼確保

法律や条例に詳しい設計者は、顧客に対して適切なアドバイスができ、質問にも的確に答えることができます。

これにより、顧客の信頼を得ることができ、プロジェクトを円滑に進めることが可能となります。

後ほど説明するコミュニケーションの重要性についてもご紹介しますが、基礎となる知識や知見があることで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。

顧客視点、ヒアリング能力

満足度の向上

設計を行ううえで、顧客視点、ヒアリング能力は欠かせないスキルです。

建設プロジェクトは、顧客の存在があって初めて動き出すため、顧客の要望やニーズに基づいて進められ、設計に反映することが重要になります。

設計者が作りたいものを作るのではなく、顧客の立場に立って設計を進めることが求められるため、顧客視点を持つことで、なぜその要望があるのかを理解し、それに応じた最適な提案を行うことができます。

また、顧客の立場を考慮した設計を提供すること、顧客の期待に応えるだけでなく、それを超える提案を行うことで、信頼関係を築くことができ、リピーターや紹介を通じて新たな顧客の獲得にも繋がります。

顧客の要望を正確に把握するため

設計職において、顧客の要望を正確に把握することは重要です。

多くの顧客は建築に対しての知識がないため、頭の中に描いているイメージを具体的に言葉で伝えることが難しい場合があります。

そのため、設計者にはヒアリング能力が求められ、顧客の漠然とした要望を的確に捉え、それを具体的な設計に落とし込むスキルが必要となります。

最初の段階から丁寧に顧客の意図を引き出し、設計に反映することで、顧客が頭の中に描いていたイメージを実現させていくことが可能になります。

顧客の要望をその場でプランニングできる能力

顧客の要望は設計が進むにつれより具体的かつ多様化してきます。

それらの要望に対してその場で手書きのラフスケッチを描くなどのプランニングできる能力があれば、変更にも迅速に対応し、常に臨機応変に適切な提案が可能となります。

顧客も自分の要望がすぐに形としてアウトプットされると満足感を得られ、信頼も高まります。

また、顧客のニーズに応じた柔軟な設計を提供できるため、プロジェクトのスピード感の向上や、顧客の満足度を高めることにも繋がります。

設計職のキャリアアップのポイント

続いては、設計職のキャリアアップのポイントをご紹介します。

上記では、設計の仕事を行ううえで、求められるスキルや能力をご紹介しましたが、実際に設計職についた後に、キャリアアップをしてくためにはどのようなことがポイントとなってくるのかをここではご紹介します。

様々な用途の設計に携わる

1つ目は様々な用途の設計に携わることです。

様々な用途の設計に携わることがキャリアアップにおいて重要な理由は、現代の建築プロジェクトでは、商業施設、オフィス、住宅、公共施設などの複合開発が主流となっているためです。

こうしたプロジェクトに対応するためには、各用途の設計に関する幅広い知識と経験が必要です。
そのため、様々な用途の設計に携わることで、より複雑で大規模なプロジェクトにも対応できるようになります。

規模の大きな設計に携わる

2つ目は、規模の大きな設計に携わることです。

大規模なプロジェクトに関わることは、実績としてアピールできるだけでなく、関係者間の調整やコミュニケーションスキルを向上させる機会にもなります。
また、こうしたプロジェクトでは最新の技術に触れる機会が多く、求められる設計スキルも高いため、設計者としての成長に繋がります。

このように、規模の大きな設計に携わることで、技術面だけでなく、プロジェクト管理能力や調整力といったスキルも磨くことができ、キャリアアップの際にアピールできる実績となります。

一級建築士を取得する

キャリアアップで重要なのは、経験とスキルです。

経験は上記でご紹介した規模の大きな設計に携わることなどで積むことができますが、スキルを証明するためには資格が重要になります。

一級建築士の資格を取得することで、できる仕事の範囲が広がり、設計職としてのキャリアアップが可能になる反面、取得していないとキャリアアップが難しくなることもあります。

多くの企業で一級建築士の資格は非常に重視されており、この資格は設計職以外の職種でもアピールできるため、設計職に携わる方は是非とも取得するようにしましょう。

顧客とのコミュニケーションを重要視する

設計職で求められるスキル・能力の章でもコミュニケーション能力が求められることはお伝えしましたが、特に意思決定権のある施主と信頼関係を築くことが重要です。

施主との関係が良好であれば、プロジェクト中の調整がスムーズに進み、施主の要望を正確に反映した設計が可能になります。

また、施主からの信頼を得ることで、次の仕事を依頼される可能性や新しい顧客を紹介してもらえる機会も増え、長期的なキャリアの安定にも繋がります。

もちろん、社内の人間やプロジェクトを一緒に進める企業とのコミュニケーション能力も重要ですが、キャリアアップの観点からは、特に施主とのコミュニケーション能力が重要になることを覚えておきましょう。

設計職に転職するには

最後に、設計職に転職するための具体的なポイントについてご紹介します。

本記事をご覧になっている方の中には、これから設計職への転職を考えている方もいるかと思います。

この章では、別の業界、職種から設計職に転職する際に重要となるポイントを2点ご紹介します。

建築士の取得

設計職に転職する際、最も重要な資格の1つが建築士です。

特に、一級建築士の資格を持っていることは、多くの企業で重視されており、転職の際に非常に有利になります。
また、設計職のキャリアアップのところでもご紹介したように、一級建築士の資格を取得することで、設計の幅が広がり、より大規模で複雑なプロジェクトに携わることが可能になります。

建築士の資格を持っていない場合でも、まずは二級建築士の資格取得を目指し、実務経験を積んだ後に一級建築士を目指すというステップアップもできるので、将来的な一級建築士の取得を目指してキャリアプランを考えていきましょう。

入社後、実務経験を重ねるまで粘り強く仕事に向き合う

設計職に転職した後は、実務経験を積むことが重要になります。

もちろん建築士などの資格も重要にはなりますが、設計職は、理論だけでなく実際の現場での経験が非常に重視されるため、最初はわからないことや難しいことが多いかもしれませんが、粘り強く仕事に向き合い、経験を重ねることでスキルを磨いていくことが大切です。

また、設計職は常に新しい技術やトレンドが求められる職種です。

自己学習や研修に積極的に参加し、最新の知識を身につけ、常にアップでとしていくことが重要となるため、設計職としてのキャリアを築くためには、継続的な学習と実務経験を積み重ねるようにしましょう。

まとめ

今回は、設計職で求められるスキルや能力、キャリアアップのポイント、そして設計職に転職するための具体的なステップについてご紹介しました。

設計職は建築工程において非常に人気のある職種ですが、その分 設計職に就きたいと考えている人も多くいるため、設計職としてのキャリアを築くためには、実績を重ねるためのステップアップをしっかりと計画したうえでキャリアを築いていくことが重要となります。

この記事でもお伝えしたように、一級建築士の資格は設計職において非常に重要な要素です。

設計職に転職したい方やキャリアアップを目指している方は、一級建築士の資格取得を目指し、計画的に準備を進めていきましょう。

ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を

今回ご紹介した一級建築士の資格は、設計職を希望の方はもちろん、さまざまな業界でキャリアアップに繋がる資格です。

また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。

ビルドアップでは、資格の活かし方や、建設業界のあらゆる職種についてどのように転職した方が良いかといった専門性を有した、建設業界に特化したエージェントが多数在籍しております。

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