建設業界「設計職」は転職をどう考えるべきか ーキャリアの方向性・考え方・転職パターンを詳しく解説

建設業界「設計職」は転職をどう考えるべきか ーキャリアの方向性・考え方・転職パターンを詳しく解説

はじめに ー「2つの方向性」から考える設計経験の活かし方

建設業界で設計職として数年、あるいは十数年の経験を積むと、「今のキャリアのままでいいのか」「このまま今の会社で設計を続けるべきなのか」と考える瞬間が訪れる方も多いでしょう。

「もっと設計に向き合える環境に行くべきか」
「より高度な案件に挑戦すべきか」
それとも、
「設計経験を活かして別の仕事に挑戦する道もあるのではないか」
そうお考えの方もいると思います。

こうした悩みを持ったとき、多くの方が最初にやってしまうのが、闇雲に求人を探し始め、そこで気になった会社を基準に転職活動をスタートしてしまうことです。

一見多くの方が陥りがちな転職のスタートの仕方ですが、業界において希少性の高い設計職の転職においては、このスタートは適切ではありません。

なぜなら、設計職の転職で本当に重要なのは、
「どの会社に行くか」ではなく、「どの方向のキャリアを目指すか」だからです。この方向性によって、選ぶべき転職先は根本から変わります。

この記事では、設計職が専門性を活かしながら歩むことができるキャリアの棚卸しをしたうえで、現在設計職であるあなたのキャリアの方向性、転職の考え方について、共に考えるきっかけをご提供します。

設計職のキャリア(転職)は2つの方向に分かれ

まず、設計職のキャリアの方向性について、整理してみましょう。
この方向性の設定によって、転職の意味や進め方が変わってきます。

設計職のキャリアは、大きく整理すると次の2つに分かれていきます。

ひとつは、設計職としてさらに専門性を高めていく道
もうひとつは、設計経験を土台に活躍のフィールドを広げていく道です。

この違いを理解しないまま転職先を探してしまうと、
「設計職を続けたいのか」「設計の知識・経験を活かして新たな道にチャレンジしたいのか」が曖昧なまま意思決定をしてしまい、転職後のミスマッチにつながるでしょう。

方向性①:設計職としてのキャリアを深めていく(同職種転職)

以下のような指向が強い人は、設計という仕事そのものに強いやりがいを感じていると言えます。

  • より難易度の高い案件に挑戦したい
  • より大規模な設計の中枢部分を担いたい
  • 基本計画・基本設計・実施設計・工事監理を一貫して経験してみたい
  • 設計者として、意匠・構造・設備といった各分野の知識や経験をこれからも磨き続けたい

「設計経験を積むこと」そのものに価値基準を置いており、また、この知識経験の蓄積が設計職としての市場価値を高めるといえます。

このタイプの人の転職先の選び方は、企業名や知名度、給与水準だけではなく、
どれだけ希望を満たす設計経験を得られる環境かという観点を重視してキャリアを考えたり転職活動をしたりすべきでしょう。

方向性②:設計経験を武器にキャリアの幅を広げていく(異業種転職)

一方で、設計を続ける中で以下のような疑問を抱いたり関心が向いてくる人もいるでしょう。

  • この建設プロジェクトはどういう事業環境や事業性のうえに成り立っているのか
  • この建設プロジェクトは都市や社会のなかでどのような役割を持つのか
  • 今やっているプロジェクトの前提条件から変えて、より良いものにできないか
  • 設計だけでなく事業全体を統括してみたい

こうしたことに関心が向き始めたとき、設計経験は「ゴール」ではなくなり、次のキャリアへ進むための土台に変わります。

この方向性では、設計を続けることよりも、
設計で培った視点や調整力、全体俯瞰の力が評価される仕事へとキャリアを広げていくのが正解といえるでしょう。

ではあなたはどちらの方向に進むべきなのか?

では、「自分はどちらの方向性に進むべきなのか?」はどのように考えていけばよいのでしょうか。

この問いに対して、感覚や希望だけで答えを出すことはできません。
設計職のキャリアは、これまで積み上げてきた経験そのものによって、適した方向が見えてくるからです。
そのために、まず自分の設計経験を体系的に整理し、「経験の棚卸し」「強みの言語化」をする必要があります。

「経験の棚卸し」から始めよう ー棚卸しの3つの観点とはー

ここからは設計経験の棚卸しをするために考えたほうがいい観点を挙げていきます。
なお、これらの観点は、転職時にも企業側から注目される要素であり、自身の市場価値を測るためのポイントでもあります。

棚卸しと同時に、自身が満たせていない要素がないかも確認しながら考えていきましょう。

観点① 設計プロセスを一貫して経験してきたか

ご認識の方も多いと思いますが、設計職として評価されるのは、業務の一部分ではありません。
基本設計から実施設計、そして工事監理まで、
設計がどのように形になり、現場で実現されるかを理解していることが重要でしょう。

また、設計の各フェーズでは求められる能力や養える力も異なります。

基本計画〜基本設計初期
全体のコンセプト、ゾーニングや動線計画といった、抽象的な思考力が求められるとともに、施主や関係者との間で設計方針の大枠の合意を形成する力が必要

基本設計〜実施設計(確認申請など)
法規や条例といったルールを満たしていく必要があるため、着工に向けて正しく設計を進める実務力が必要

工事監理
着工後に施工側(建設会社)との連携・調整、場合によっては、この段階で設計変更なども必要となるため、マネジメント力や調整力が必要


これらの経験は、①設計を深めるキャリアの方向性・②他職種へ広げるキャリアの方向性のどちらにも共通する土台になります。

観点② どのような建物を設計してきたか(用途・構造・規模)

これまで携わった建設経験の用途・構造・規模は、そのまま「その人に任せられる案件の幅」を示します。そのため、転職活動のなかでは「どの会社にいたか」よりも「どんな建物に関わってきたか」で評価されやすいといえます。

例えば、「住宅中心の設計経験」と、「オフィスや商業施設、物流施設、医療・教育施設といった用途の設計経験」では、設計者として求められる知識や配慮すべきポイントが大きく異なります
用途が変われば、法規の扱い方・動線計画・求められる空間構成・誰が関係者となるかが変わるためです。

また、どの構造木造・RC・S・SRC)の経験を積んだかによっても設計者の考え方が形成されるため、企業側にとっては注目するポイントです。
さらに、「構造を理解している設計者」と、「意匠だけを扱ってきた設計者」とでは、図面の説得力や施工者とのやり取りの質が大きく変わるということも抑えておきましょう。

そして、携わったプロジェクトの規模も重要です。
小規模建築では設計者一人が担う範囲が広いため設計の全体像を把握する力が養われ、大規模建築では、関係者調整や分業体制の中での設計推進力が身に付くでしょう。

これらの経験は単なる経歴ではなく、設計者としての引き出しの多さそのものです。
そしてこの引き出しの多さは、どちらの方向性に向かう場合でも強力な武器になります

観点③ どのポジション・役割として関わったか

同じ用途・規模・構造の案件に関わっていたとしても、
主担当・サブ担当・マネジメント職などのどの立場で関わっていたかによって、設計者としての経験値の質は大きく変わります。

例えば、主担当としてプロジェクトを進めていた場合、設計判断の責任を持ち、関係者との合意形成を図りながら設計を前に進める経験を積んでいます。
これは、設計者としての推進力や判断力、調整力を裏付ける経験といえます。

一方で、サブ担当として関わっていた場合でも、詳細図面や法規整理、作図業務を通じて、実務の精度や設計の実装力を高める経験を積んでいることになります。

また、マネジメントの立場で関わっていた場合は、個別の設計業務だけでなく、プロジェクト全体の進行管理や設計品質の担保といった、より俯瞰的な経験を積んでいることになります。

このように、「どの役割で関わったか」は、単なる担当範囲の違いではなく、
設計者としてどの能力を伸ばしてきたかを示す重要な要素になります。

設計の経験を深めるキャリアにおける転職とは?(設計職⇨設計職)

設計という仕事そのものに価値を置き、これからも設計者としての専門性を高めていきたいと考える場合、転職は「環境を変えること」によって設計経験の質を引き上げる行動になります。

ここで重視すべきなのは、会社の知名度や待遇条件ではなく、どのような設計経験を積むことができるかという視点です。
設計を深めるキャリアにおける転職は、「どこに行くか」ではなく、「どんな設計に関われるか」で整理することが重要になります。
その代表的な転職パターンを見ていきましょう。

転職パターン①:組織設計事務所へ

組織設計事務所への転職は、設計そのものにより深く向き合いたい人にとって、非常に相性の良い選択肢です。

組織設計事務所では、意匠性やコンセプト設計といった設計の根幹部分に関わる機会が多く、設計の自由度や裁量も比較的高い傾向にあります。
また、施主とのコミュニケーションの機会も多く、設計意図を直接伝え、合意形成を図りながらプロジェクトを進める経験を積むことができます。

さらに、大規模案件や多用途案件を扱う機会も多いため、設計者としての引き出しを広げながら、設計力そのものを磨いていけるでしょう。

転職パターン②:ゼネコンの設計部門へ

ゼネコンの設計部門への転職は、「実現される設計」を強く意識した設計経験を積みたい人に適しています。

施工工法やコスト、工程といった現場視点を踏まえながら設計を進めるため、実直で合理的な設計力が養われます。
また、施工側との距離が近いことから、図面がどのように現場で形になるのかを具体的に理解する経験が積めます。

近年では意匠設計の自由度も高まっており、設計力と施工理解の両面を兼ね備えた設計者としての経験を深めることができるでしょう。

転職パターン③:ハウスメーカー・工務店へ

ハウスメーカーや工務店への転職は、一貫した設計経験を積みたい人にとって有効な選択肢です。

施主との距離が非常に近く、ヒアリングから提案、設計、引き渡しまでを通して関わることができるため、提案力やコミュニケーション力が磨かれます。

また、案件の回転が比較的早いため、PDCAを回しながら設計の精度を高めていくことができる環境でもあります。短期間で多くの設計経験を積むことができる点も特徴です。

転職パターン④:大手企業から中堅企業へ

大手企業から中堅企業への転職は、設計における役職や役割、裁量を高めたい人におすすめです。

大手企業では分業体制が進んでいることも多いですが、中堅企業では設計者一人あたりの担当範囲が広くなる傾向にあるので、設計全体を俯瞰しながら推進する経験を積めるでしょう。

自らの判断で設計を進める場面が増えるため、設計者としての総合力を高めることにつながります。

転職パターン⑤:中堅企業から大手企業へ

一方で、中堅企業から大手企業への転職は、より多様な案件経験を積みたい人にマッチしていると言えます。

大規模案件や多用途案件など、中堅企業では経験しづらかった規模や種類の設計に関わる機会が増えるので、設計者としての経験の幅を広げるという観点で、大きなメリットがあります。

ただし、大手企業では昇格やポジションの競争もあるため、これまでの経験をいかに活かせるかが重要になります。

Structural engineering designers are working on the blueprints and analyzing them together.

方向性②:設計経験を武器にキャリアを広げる場合の転職とは?(設計職⇨異業種)

設計経験は、実は多くの職種で高く評価されます。
その理由は明確で、設計職はプロジェクトの全体像を理解しながら業務を進める、数少ない職種だからです。

設計職は、単に図面を描く仕事ではありません。
法規・コスト・施工性・関係者調整・スケジュール管理といった複数の要素を同時に考慮しながら、プロジェクトを成立させていく役割を担っています。

こうした経験は、「設計を続ける」以外のキャリアにおいても、極めて汎用性の高いスキルとして評価されます。
ここでは、設計経験を武器にキャリアを広げる代表的な転職パターンを見ていきましょう。

転職パターン①:デベロッパー

デベロッパーとは、事業採算性を確認したうえで、土地の取得から建物の企画、設計事務所への設計委託、ゼネコンへの建設委託を経て、建物の運営・売却までをトータルでマネジメントする企業です。

設計職の知識・経験が活かせる職種としては、商品企画やプロジェクト計画を担う職種、社内の設計部門、設計の専門的な助言を行うプロジェクト・計画支援などが挙げられます。

設計フェーズごとのポイントや法規を理解している設計出身者は、設計事務所への指示出しが的確で、設計者側の思考や進め方を理解したうえでコミュニケーションを取れるでしょう
また、ものづくりを具体化する力や、事業性を踏まえた経済設計(VE・CD)の考え方を理解している点も大きな強みです。

設計経験を持つ人材は、事業性と設計品質の両立ができる存在として、高く評価されます。

転職パターン②:建設コンサルタント

建設コンサルタントは、公共事業やPFI事業などの建設プロジェクトにおいて、企画・調査・設計・マネジメントを担う企業です。

建設コンサルの分野は大きく建築系土木系の2つに分けられます。土木分野では、道路・橋梁・公共空間の設計やPM/CMを担い、建築分野では、公共施設の設計やPM/CM、市街地再開発や土地区画整理などの都市開発コンサルティングを行います。

設計職の知識・経験が活かせる職種としては、公共寄りの案件が中心の建築・土木の設計職、または設計実務の幅広い理解を活かしたPM/CMなどが考えられます。

特に行政を相手にする案件では、予算管理や投資効果の検証といった視点も求められるため、設計だけでなく事業全体を理解できる設計出身者は重宝されるでしょう

転職パターン③:都市計画コンサル・再開発コンサル

都市計画コンサルタントや再開発コンサルタントは、都市や地域の将来像を描きながら、市街地再開発や土地区画整理、公共空間整備などを支援する専門家集団です。

行政や地権者、デベロッパーと連携しながら、計画立案・事業スキームの検討・関係者調整・制度活用の整理などを行います。

設計職の知識・経験が活かせる職種は、計画立案段階の技術的支援、再開発事業における設計面からの助言、設計内容を踏まえた事業性や実現性の検討など。設計を通じて培った空間理解力や、図面・計画をもとに関係者を調整する力は、この分野において非常に大きな強みになります。

正しくキャリア形成するために客観的な意見を取り入れよう


キャリア形成・転職では、「①これまで積み上げてきた設計経験を整理→②自分がどちらの方向性に進むべきかを見極める→③転職先を選ぶ」という順番が極めて重要になります。

しかし実際には、自分一人でこの整理を行うことは簡単ではありません。主観だけでは、自分の市場価値や適切な方向性を正確に把握することが難しいのです。

だからこそ、設計職のキャリアや業界構造を理解しているキャリアの専門家と共に、「これまでの経験」と「これからの方向性」を整理していくことが重要になります。

第三者の視点が入ることで、これまで気づかなかった強みや、経験の偏り、そして本来選択肢に入り得る転職先が明確になるでしょう。
主観的な自分の考えと、客観的なプロの視点を行き来しながら整理していくことで、初めて納得感のあるキャリアの意思決定が可能になります。

設計職の転職は、選択肢が多いからこそ難しく、
だからこそ、正しい順序と正しい視点で進めることが、転職の質を大きく左右します。

まとめ

設計職の転職は、単に「次の会社」を選ぶことではありません。
これまで積み上げてきた設計経験を、どの方向に活かしていくのかを考えることが、転職の本質です。

設計をさらに深めるのか。それとも、設計経験を武器にキャリアの幅を広げるのか。

この方向性によって、選ぶべき転職先や進むべきキャリアは大きく変わります。

その判断のためには、まず自分の設計経験を棚卸しし、
「どのプロセスを経験してきたか」
「どんな建物に関わってきたか」
「どの役割で関わってきたか」
を整理し、強みを言語化することが重要です。

そのうえで初めて、自分にとって意味のある転職先が見えてきます。

設計職という仕事は、建設業界のなかでも極めて専門性が高く、
同時に、多くのキャリアの可能性を秘めた職種です。

だからこそ、焦って求人を探すのではなく、
まずは立ち止まり、自分の経験と向き合うことから始めてみてください。

そのプロセスこそが、設計職としての価値を最大限に活かす転職への第一歩になります。

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