土木建設の専門家 建設コンサルタント業界についてご紹介します

土木建設の専門家 建設コンサルタント業界についてご紹介します

みなさんは建設コンサルタント業界についてどの程度ご存知でしょうか。

土木建築業界で働かれている方の中には、建設コンサルタントの概要しか知らない方や、転職先として見ている方など、人によって理解は様々かと思います。

この記事では、建設コンサルタントの概要、仕事内容、魅力、キャリアパスなど、業界の全体像が分かるようにご紹介します。

少しでも建設コンサルタントに興味がある方は、この記事を通して建設コンサルタント業界への理解を深めてみてください。

建設コンサルタントとは

建設コンサルタントは、建設プロジェクトにおいて専門的な助言やサポートを提供する専門家です。助言やサポートをすることが役割であるため、実際に現場で建設工事をするわけではなく、建設工事の前段階である企画、調査、計画、設計などを発注者に代わって行うことが業務となります。

建築、土木工学、都市計画などの知識と経験を駆使して、発注者に対して最適な提案をし、プロジェクトが円滑に進行するよう尽力します。

建設コンサルタントが担当するプロジェクトは多岐にわたり、住宅、商業施設、公共施設、交通インフラなど、様々な規模や用途があります。

ゼネコンとの関係(他業界との関わり)

建設コンサルタントとゼネコンの違いが分かるように、建設事業の計画から施工までの流れを簡単にご説明します。

建設をする前には、企画、調査、計画、設計などを行う必要がありますが、発注者である民間企業や行政機関に建築関係のノウハウがないことは珍しくありません。
そこで、建設プロジェクトの専門家である建設コンサルタントがこれらの工程を発注者に代わって行います。

発注者は建設コンサルタントと契約を結び、発注者の代わりに建設コンサルタントが企画、調査、計画、設計を行い、発注者に対して提案を行います。
このようにして決定した計画をもとに、発注者はゼネコンに工事を発注し、工事が施行されるという流れになっています。

つまり、建設コンサルタントが建設をする前段階の計画等を担うのに対し、ゼネコンは建設工程の管理を担います。

建設コンサルタント業界の現状

建設コンサルタント業界の動向

建設コンサルタント業界の市場規模は5,000億円と、建設業界全体で見ても市場規模が大きいわけではありませんが、コロナ禍から現在に至るまで大幅に下がることなく堅調に推移しています。

その理由として、オリンピックや万博などの大規模イベントにおける調査・設計業務の発注があったことや、公共事業の発注や、近年の災害意識の高まりによる修繕工事の発注が継続したことなどが挙げられます。

長期的な視点では、約10年前のピークを境に市場規模は減少傾向にあるため、業界全体として新たな分野への進出などの取り組みに力を入れています。

建設コンサルタント業界の特徴

日本の建設コンサルタントは、これまで主に行政から発注を受けてきました。
しかし、近年は政府の財政事情の厳しさから、建設投資や公共投資の費用が減少傾向にあります。

将来にわたってもこの縮小や維持の傾向が変わらないとの見方が強まっており、公共事業の市場拡大は期待できません。

 経験や専門性が求められる業界

建設コンサルタントは土木工事の前段階である調査や設計から工事の監督まで行う必要があるため、土木工事に関する専門知識が求められます。
そのため、ゼネコンの施工管理担当などの経験がある人材の中途採用を積極的に行っており、それによって平均年齢が高くなっています。

現在の建設コンサルタント業界では、平均年齢が50歳を超えており、40代や50代の社員が多く、20代の若手社員が少ないという現状があります。
建設コンサルタント業界は今後の担い手不足の問題に直面しており、新卒採用の拡大や、魅力づけのための働き方改革などが推進されています。

海外事業の積極展開を行う業界

建設コンサルタントの海外進出は、昭和30年頃から始まり、近年では海外進出の動きが活発化し、発展途上国のインフラ整備に取り組んでいます。

しかし、日本政府機関による政府開発援助(ODA)の規模は財政の緊迫化に伴い縮小傾向にあり、中長期的な拡大は期待できません。
また、競争相手として中国などの新興国が参入しており、価格競争力の強化や民間資金を活用した官民連携事業(PPP)の展開が必要とされています。

建設コンサルタント業界の今後の動向

異分野への進出

建設コンサルタント業界では、建設業界以外の領域への進出が積極的に行われています。
異分野への進出は、農業、観光、情報通信、発電など、多岐にわたる業界が対象とされています。

農業分野においては農地整備や農業に必要な水路の整備などを行い、観光分野では水辺空間の整備にとどまらず、インバウンド向けの観光地としてのプロモーションまで請け負うなどを行います。

将来的に建設業界が縮小する可能性を見据えて、各企業が新たな市場を開拓する動きが活発化しています。

地方自治体との連携強化は、建設コンサルタント業界にとって重要な戦略の一環です。
多岐にわたる業界への進出は地方自治体との繋がりを強化し、建設コンサルタントの本業の受注につなげ、さらに新たな事業を軌道に乗せることで、新領域の開拓も成功させるという狙いがあります。

新技術への投資

建設コンサルタント業界では、新たな技術への投資が積極的に行われています。
各企業はAIや3Dデータなどの先端技術を活用し、独自の技術を開発しています。

具体的には、AI技術を建設プロジェクトの設計や管理に活用することで、より効率的なプロセスが実現されます。また、3Dデータの活用により、建築物やインフラのモデル化やシミュレーションが容易になり、設計段階からの問題解決やコスト削減が可能になります。

企業は本業や異分野で得た利益を研究、開発に回し、新技術を使って新たな仕事を取るという流れが業界全体のトレンドになっています。

働きやすい労働環境への取り組み

従来、残業が多く仕事が大変というイメージがありましたが、この課題に対処するために、様々な改善策が実施されています。

例えば、ノー残業デイの設定や、決められた時間でのPCの強制シャットダウンなど、企業ごとに独自の対策が実施されています。これにより、労働時間の適正化やワークライフバランスの改善が図られています。

また、建設コンサルタント業界全体でも動きがあります。建設コンサルタンツ協会内で、ビジネスモデルや働き方について考えるための若手有志組織が設立されています。このような組織を通じて、業界展望を共有し、改善策を模索しているようです。

現在、各企業は労働環境の整備に取り組んでおり、今後も若手社員などの声を参考に、さらなる改善が進められていくことでしょう。

海外事業への取り組み

国内需要の縮小が予想される中、海外市場は依然として新たな収益源として期待されています。
今後は、海外企業との競争が激化する中で、日本の特性を生かした高品質なサービス提供が求められます。

企業によって、現地法人や新事務所の開設、現地企業のM&Aなど海外進出の取り組みも異なるため、海外事業拡大への取り組みの理由や背景を調べ、企業の特徴を知るきっかけにも繋げてみましょう。

業界の事業内容・仕事内容・魅力

事業内容

河川・港湾系

護岸や桟橋等の施設や、洪水対策の河川整備の設計や管理の企画・計画をします。その際には、水理水文解析モデルを用いて水害等による影響をシミュレーションしつつ事業を推進していきます。

都市系

駅周辺開発や、市街地の再開発などの企画・計画をします。
地方自治体やその土地の地権者との調整も重要な役割になります。

交通技術系

建設コンサルタントは、ビッグデータやシミュレーションといった最先端技術を駆使して、交通の効率化を推進しています。道路ができることによる影響を、交通量調査やシミュレーションにより算出し、国民にも分かりやすい指標に換算します。

コンサルタントの提案が国の政策に関わるような重要な事業です。

建築系

河川、下水道等の施設として要求される機能を満たすための企画・計画をします。
施設運転や保守点検などの作業性や、都市計画や建築基準法及び関係法令の遵守や地域住民への親しみやすさなどを考慮する必要があります。

仕事内容

企画

建設コンサルタントの企画段階では、クライアントの要望やプロジェクトの目的を理解し、実現可能な計画を立てます。同時に、プロジェクトの予算化も企画段階で重要な作業です。

プロジェクト全体の予算を初期段階で評価し、クライアントの予算制約内でプロジェクトが進行できるよう助言します。

調査

調査段階では、建設コンサルタントはプロジェクトエリアにおける地質、地形、気象条件などの自然環境を調査します。また、既存の建築物やインフラ、地域社会の特性なども詳細に把握します。これにより、将来のプロジェクトに関連するリスクや機会を正確に把握し、設計や計画段階での意思決定を支援します。

計画

計画段階では、調査結果やクライアントの要望をもとに、プロジェクトの具体的な計画を策定します。土地利用計画、建物配置、施設配置、交通インフラの設計など、プロジェクト全体の骨格が形成されます。計画段階の適切な実施は、後の設計や施工段階の円滑な進行に繋がります。

設計

設計段階では、計画を具現化するために建築物や構造物の詳細な設計が行われます。建築設計、構造設計、電気・配管設計など、専門分野ごとに設計者が関与します。建設コンサルタントは、品質、効率性、コストなどの観点から設計を審査し、クライアントと協力して最適な解決策を見つけ出します。また、法規制への適合や環境への影響を最小限に抑えるような設計を推進します。

魅力

社会インフラとして生活を支えられる

建設コンサルタントの魅力の一つは、自身の仕事によって、人々の生活の支えになる社会インフラの建設に関わることができることです。

建設コンサルタントは道路、橋、空港、水処理施設など、社会インフラの設計に関わることが多く、これらの基盤は直接的に私たちの生活の支えとなっています。

プロジェクトを通じて社会の基盤整備に貢献することで、やりがいを感じられる方も多いのではないでしょうか。

仕事が目に見える形として残る

もう一つの魅力は、建設コンサルタントの仕事が目に見える形として残り続けることです。

建設コンサルタントは大規模な建設プロジェクトに関わることが多く、計画から完成までに必要な工程もかかる時間も多くなります。
その分、建設物が完成した時の達成感も大きなものになります。

また、建設物は完成後その地域に長期的に影響を与え続けます。
自身が計画や設計で関わった建設物が何十年と残り続けることに魅力を感じる方もとても多いです。

業界におけるキャリアパスの描き方

建設コンサルタントのキャリアパスは、補助担当者、主担当者、管理技術者と役割をステップアップさせていくことが一般的です。

まずは補助担当者として主担当者からの指導やサポートを受けながら業務の一部を担当します。補助業務を担当し、建設コンサルタントとして一人前といえる主担当者を目指します。

主担当者は事業者との窓口となり、自ら主体的に業務を進めていきます。管理技術者のチェックの下、建設コンサルタントの仕事内容である、企画、調査、計画、設計を一人で担当できる必要があります。

管理技術者は、契約した業務の技術的事項全般に責任を負い、業務の担当だけでなく、工程管理や部下の指導も行います。

管理技術者になるには技術士やRCCMといった受験資格に実務経験が含まれる資格を取得する必要があります。

管理技術者として様々な経験を積んだのち、プロジェクトマネジメントのリーダーなどのプロジェクトの責任者を担うポジションまで至れば、専門性に加えマネジメントの能力も磨くことができ、さらなるキャリアアップに繋がるでしょう。

また、建設コンサルタントとしての経験を積めば、社内でのキャリアアップだけでなく、他社への転職や独立も選択肢に入ってきます。

他の建設コンサルタントが最も一般的な転職先ですが、他にもゼネコンや設計事務所、都市計画コンサルタント、再開発コンサルタント、デベロッパーといった様々な業界も候補に入ってきます。

転職の際にも、土木系の資格である技術士やRCCM、その他の専門性の高い資格を保有していれば有利に進めることができるでしょう。

建設コンサルタント業界への転職のポイント

現職における業務の習熟度・専門性を高める

建設コンサルタント以外の建設業界から建設コンサルタントに転職する際、建設コンサルタントは調査、計画、設計、施工、管理・運営まで幅広くかつ専門的な業務を担うため、各分野への専門性を有する人材を求めています。そのため、測量・調査、数値解析、設計、施工管理、施設管理など、現在従事している職種の業務内容の習熟度や専門性を高めることで、企業からの評価も高まるでしょう。

資格の取得(技術士・一級建築士 など)

技術士の資格を保有していれば、建設コンサルタント業界での転職を非常に有利に進められますが、実務経験が受験資格として必要になります。

そのため他業界からの場合、事前に技術士資格を取得することは難しいですが、実務経験が不要な一次試験のみ合格しておいて、建設コンサルタントとして実務経験を積んだ上で二次試験に合格し技術士になることは可能です。

転職前に一次試験に合格しておけば、建設コンサルタントとして必要となる基礎知識を得られるうえ、モチベーションを示して選考を有利に進められるでしょう。

また、一級建築士は業界全体として評価が高く、建設コンサルタント業界においても、設計、施工など幅広い知識を有する一級建築士の資格に対して、優遇する傾向が見られます。

そのほかにも専門性を高めるために様々な資格を取得することが望ましいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
建設コンサルタントの概要から業界でのキャリアパスの描き方、転職のポイントまで建設コンサルタント業界の全体像をご紹介しました。

建設コンサルタントは、建設プロジェクトにおいて専門的な助言やサポートを提供する専門家で、企画、調査、計画、設計などの建設工事の前段階が主な業務となります。
直近の市場規模は横ばいに推移していますが、公共事業の縮小や労働者の高齢化問題などの課題を抱えています。

社会インフラとして生活を支えられることや、仕事が目に見える形として残ることが魅力で、近年は働きやすい労働環境への取り組みも行われ、若手労働者を増やすための取り組みがされています。

ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を

先述したように、建設コンサルタント業界でキャリアアップをしていくためには、技術士やRCCM、一級建築士といった資格を取得することが非常に有利に働きます。

他業界から建設コンサルタント業界に転職する場合は、建設コンサルタント業界で求められる測量・調査、数値解析、設計、施工管理、施設管理などの経験をしていると有利に選考を進めやすいです。

また、建設コンサルタントとして働くうえで重要となるコミュニケーション能力や提案力も選考の際に求められるポイントになります。

ビルドアップでは、建設コンサルタント業界内でのキャリアアップや、他業界から建設コンサルタント業界への転職などに詳しい、土木建築業界に特化したエージェントが多数在籍しております。

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