施工管理職とは? 必要なスキルとキャリアアップするうえで必要なポイントを解説します
建設業界の職種の中でも施工管理職は、プロジェクト全体を監督し、工事がスムーズに進むよう調整する重要な役割を担っており、建設プロジェクトを進めるうえでも欠かせない職種です。
ゼネコンなどの建設会社の企業において花形の職種でもある施工管理職ですが、キャリアを進めていくうえで、どのようなスキルが求められるのか、またキャリアアップをするうえで大切になることなどは意外と知られていません。
今回は、施工管理職について仕事内容を改めてご紹介したうえで、施工管理職としてキャリアを築いていく際の求められるスキルやキャリアアップのポイントなどについてもご紹介します。
施工管理職への転職を考えている方や、現職でキャリアアップを目指している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
施工管理職の概要
まずは、施工管理職がどのような職種なのかをご説明します。
施工管理は、建設プロジェクトにおける現場の全体管理を担当する職種で、施工現場で指揮・監督を行い、工事が安全かつ効率的に進むよう管理することが主な業務です。
施工管理は、住宅や商業施設、ビルの建設から道路や橋梁などの土木工事まで、多岐にわたるプロジェクトで活躍します。
施工管理では「工程」「品質」「原価」「安全」「環境」の5大管理と呼ばれる業務が主な仕事となります。
これらの業務はそれぞれの頭文字Quality品質)、Cost(原価)、Delivery(工期)、Safety(安全)、Environment(環境)を取ってQCDSEとも呼ばれています。
また、現場での監督業務だけでなく、書類作成や役所への申請、発注者や設計者との打ち合わせなど、デスクワークも仕事に含まれます。
今回は、「工程」「品質」「原価」「安全」「環境」についてそれぞれの仕事内容をご紹介します。
工程
1つ目の工程管理は、建設プロジェクトがスケジュール通りに進行するように調整する重要な業務で、具体的には、工事の全体工程を管理し、必要な人員配置や資材・機材の手配を行います。
また、作業が遅延しないよう、工事進捗を日々確認し、天候やトラブルによる変更にも柔軟に対応します。
工程が遅れると他の作業に影響を与えるため、自社内だけでなく、他のゼネコンやサブコンとも密にコミュニケーションを取り、関係者全体で調整を行うことが求められます。
品質
品質管理は、建設プロジェクトの品質を確保するために行う業務です。
具体的には、使用する資材や施工方法が設計図や仕様書の基準を満たしているかどうかを確認し、進捗に応じた検査を行います。
例えば、鉄筋工事であれば図面通りに配置が行われているか、内装工事では指定された施工方法に沿って作業が進んでいるかを確認します。
また、品質を確保するためには、材料の保管方法にも気を配り、施工後に予定通りの品質を達成しているかの検証も行います。
品質管理の業務では工事が基準を満たしていることを確保するために、豊富な知識と経験が必要です。
原価
原価管理は、建設プロジェクトを予算内で完了させるために費用を管理する重要な業務で、人件費や材料費、機材のレンタル費用など、すべての経費を正確に見積もり、工事が予算オーバーにならないよう調整を行います。
また、工事が進む中で、実際の支出を逐次確認し、予算と比較して適切な対応を行います。もし予算超過のリスクが生じた場合には、工法の変更や資材の見直しを行い、コスト削減を図ります。
安全
安全管理は、工事現場で働く作業員の安全を確保するための業務です。建設現場では常に危険が伴うため、事故や災害を未然に防ぐための対策を徹底する必要があります。
具体的には、作業前の安全ミーティングや現場パトロールの実施、立入禁止区域の設定、適切な注意喚起看板の設置などが含まれます。
また、作業員の健康管理や使用機材の点検も日々行います。
安全管理は、作業員の安全を確保するだけでなく、プロジェクト全体の信頼性とクライアントの満足度にも直結するため、上記の3つと同じく建設プロジェクトを進めるうえでも重要な業務となります。
環境
環境管理は、工事が環境に与える影響を最小限に抑えるために行われる重要な業務です。
環境管理には、自然環境、周辺環境、職場環境の3つの要素があります。
まず、自然環境への配慮として、地盤や空気、水質に対する影響を考慮し、適切な工法や材料の選定を行います。
次に、周辺環境への配慮として、騒音や振動、排気ガスなどが周辺住民に与える影響を最小限に抑えるための対策を実施します。
最後に、職場環境では、現場作業員が安全で働きやすい環境を整えることが求められます。
これらの要素を管理することで、施工現場が周囲の自然や住民、そして作業員に対して安全で配慮された環境となるよう努めることが施工管理者の重要な役割となります。
施工管理で求められるスキル・能力
続いては、施工管理で求められるスキル・能力をご紹介します。
上記でご紹介した管理業務を含め、施工管理の仕事を行ううえでどのようなスキルや能力が求められるのか理由も含めてお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
計画力とスケジュール管理能力
まず1つ目が計画力とスケジュール管理能力です。
施工管理職では、段取りが8割とも言われるほど、計画的なスケジュール管理が重要です。工事の各工程は連携して進むため、どこかで遅延が生じると全体に影響を及ぼします。
そのため、進捗を常に確認し、工事が予定通り進むよう適切に調整する必要があります。
特に、プロジェクトの引き渡しをゴールとしたスケジュール作成では、トラブルに備えてバッファーを確保し、時間的余裕を生み出す工夫が求められます。
これにより、遅延が発生しても柔軟に対応し、プロジェクトをスムーズに進行させることが可能になります。
リスク管理と問題解決能力
続いてご紹介するのがリスク管理と問題解決能力です。
計画力とスケジュール管理能力のパートでお伝えしたように、工事が予定通り進むよう準備することは重要ですが、建設現場では予期しない問題が同時多発的に発生することが少なくありません。
具体的には、天候不良や資材の納期遅延、作業員の体調不良など、様々なリスクが工事の進行に影響を与える可能性があります。
そのため、事前にリスクを予測し、対応策を準備しておくことが大切です。
また、実際に問題が起こった際には、冷静に状況を把握し、迅速に解決策を見出す能力が求められます。
問題が大きくなる前に適切に対応することで、工事の遅延やコストの増加を防ぎ、プロジェクト全体の成功へ繋がります。
コミュニケーション能力と協調力
3つ目がコミュニケーション能力と協調力です。
施工管理職では、職人やサブコン、ゼネコン、設計者、発注者など、多岐にわたる関係者との密な連携が求められます。
特に現場では、迅速かつ正確な情報共有が重要で、ミスコミュニケーションが工事全体に影響を及ぼす可能性もあります。
また、施工現場では、年齢やキャリアが異なる職人に指示を出さなければならない場面も少なくありません。
そうした場合、いかに調和を保ちつつ、適切に指示を出し、関係者と信頼関係を築くことで、全員が協力して働ける体制を築くことが非常に重要です。
さらに、発注者や設計者との打ち合わせでは、相手の意図を正しく理解し、それに応じたフィードバックを行うことが求められます。
関係者との信頼関係を築くことで、現場で問題が発生した際にもスムーズに解決策を導き出し易くなります。
安全意識とコンプライアンス遵守
最後にご紹介するのが、安全意識とコンプライアンス遵守です。
施工管理の業務の5大管理の中に安全管理が含まれるように、建設現場では常に安全意識を高く持つことが求められます。
高所作業や重機の操作など、作業員や周囲の安全を脅かすリスクが常に存在しており、これらを未然に防ぐためには、作業開始前の安全確認、適切な保護具の使用、作業手順の徹底など、安全対策を徹底することが不可欠です。
さらに、建設業界では法令や規制の遵守も重要な課題です。
労働安全衛生法や建築基準法など、法的規範を守らなければ、重大な事故や法的トラブルに発展する可能性があるため、施工管理者は、現場全体の安全を確保すると同時に、法令遵守の意識を高く持ち、関係者全員に対して規範となる行動を取ることが求められます。
施工管理のキャリアアップのポイント
続いては、施工管理職のキャリアアップのポイントをご紹介します。
上記では、施工管理の仕事を行ううえで、求められるスキルや能力をご紹介しましたが、実際に施工管理職についた後に、キャリアアップをしてくためにはどのようなことがポイントとなってくるのかをここではご紹介します。
様々な現場経験と多様なプロジェクトへ携わる
施工管理職でキャリアアップを図るためには、様々な現場経験と多様なプロジェクトへ携わることが重要です。
異なる規模や用途の建物、そして土木工事や商業施設、住宅など、多様なプロジェクトに関わることで、施工方法や管理技術の幅が広がります。
様々な現場を経験することで一つの現場だけでは得られない知識やスキルを積み重ねることができ、対応力が磨かれるため、複雑なプロジェクトでも柔軟に対処できるようになります。
施工方法に関する知識を広げる
続いてご紹介するのが、施工方法に対する知識です。
建設現場では、プロジェクトごとに異なる施工方法や技術が求められます。
例えば、鉄筋コンクリート構造の建物、鉄骨造の建物、または木造建築など、それぞれの工法が異なるため、施工管理者としては幅広い技術知識が必要です。
また、現場ごとの特殊な条件に対応するためには、最新の施工技術や工法の動向を常に学び続ける姿勢が求められます。
日々、新しい構法や工法の技術が研究、実装される業界なので、そうした情報についてアンテナを張っておくようにしましょう。
業界ネットワークの構築
最後にご紹介するのが、業界ネットワークの構築です。
業界内での信頼関係を構築することで、新しいプロジェクトへの参加機会やキャリアの幅が広がります。
特に施主などのクライアントとの信頼関係を深めることで、リピーターや紹介による新しい仕事の依頼が増える可能性があります。
施主の要望で現場での状況確認などの打ち合わせを行うケースもありますが、この打ち合わせには現場の所長や副所長、統括担当が出席するケースが多いため、その職級に上がることが必要となります。
それまでには多少時間がかかるかもしれませんが、業界ネットワークが広がると、最新の技術や動向、現場での実践的なノウハウといった情報をキャッチアップしやすくなります。
施工管理に転職するには
施工管理技士の取得
建設業界では関連する資格の取得が転職時にも重要なポイントとなりますが、施工管理職に関連する資格としては、「施工管理技士」の資格取得が挙げられます。
特に、1級施工管理技士は現場での重要な役割を担う「主任技術者」や「監理技術者」として配置されるため、資格がほぼ必須とされています。
施工管理技士の資格は、1級と2級があり、2024年度からは受験資格に変更がありました。
2024年度の技術検定制度の見直しにより、1級施工管理技士の第一次検定は19歳以上であれば、実務経験がなくても受験できるようになり、これにより学歴や実務経験に関係なく、早い段階から資格取得を目指すことが可能になったのです。
第一次検定は、筆記試験で施工管理の基礎知識を問われ、合格すると「施工管理技士補」として現場での業務に携わることが可能になります。
その後、一定の実務経験を積むと、実務能力を問う第二次検定を受験でき、これに合格すると1級施工管理技士の資格を取得できます。
受験資格の変更により、実務経験を積む前に第一次検定に合格し、施工管理職としてのキャリアをスタートさせた後、実務経験を重ねてから第二次検定に挑戦するという戦略が立てやすくなりました。
そのため、まずは1次検定の合格を目指し、転職後に実務経験を積みながら第二次検定に合格するという計画のもと施工管理技士の資格取得を目指しましょう。
建設業界での現場経験や人脈の形成
続いてのポイントは現場経験や人脈の形成です。
転職時には経験とスキルが重要視されます。
そのため、転職前の段階から転職時にアピールできるような経験を積むことが重要です。
可能であれば、建設業界での現場経験を積むことができると施工管理の転職を有利に進めることができますが、建設業界とは違う業界で働いている場合は、今回お伝えした施工管理で求められるスキルなどを参考に、転職時にアピールできそうなスキルで現在の仕事でも経験を積むことができることがないかを探してみましょう。
また、人脈の形成も大きなポイントです。
建設業界では、他の職人や同業者との繋がりが重要視されることが多く、人脈を広げることで、転職先を紹介してもらう機会が生まれるだけでなく、現場で役立つ実践的な情報をキャッチアップすることもできます。
また、業界の先輩や同僚と密な関係を築いておくことで、転職やキャリアの方向性について相談もできるため、自分が目指す企業や職種に転職するためには、何が必要かといった具体的なアドバイスをもらえる機会も増えます。
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まとめ
今回は、施工管理職で求められるスキルや能力、キャリアアップのポイント、そして施工管理職に転職するための具体的なステップについてご紹介しました。
施工管理職は建設プロジェクトの成功に欠かせない重要な職種であり、その責任も大きいため、キャリアを築くためにはスキルの向上や現場経験の積み重ねが重要です。
今回の記事でご紹介したように、施工管理技士の資格取得や、多様な現場経験、そして業界ネットワークの構築は、キャリアアップを目指す上で不可欠な要素となります。
施工管理職への転職や、現職でのキャリアアップを目指している方は、計画的に資格取得や経験を重ね、さらにネットワークを広げることで、施工管理職としてのキャリアを一層発展させていきましょう!
ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を
今回ご紹介した施工管理技士の資格に限らず、建設業界での転職をを希望する場合資格取得が重要視されます。
また、転職後のキャリアアップでも様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。
ビルドアップでは、資格の活かし方や、建設業界のあらゆる職種についてどのように転職した方が良いかといった専門性を有した、建設業界に特化したエージェントが多数在籍しております。
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