設備機器メーカーとは? 建築業界での位置付け将来性、転職のポイントについてご紹介します
住宅設備は、私たちの生活を快適で便利にするために欠かせない要素です。
キッチンやトイレ、窓などの住宅設備は、日常生活においてその品質や機能性が生活の質に大きな影響を与えます。
住宅設備は普通の住宅だけでなく、マンションやオフィスビルにおいても重要な役割を果たしており、これらの設備が適切に設計され、製造されることで、私たちの住環境はより快適で機能的になります。
こうした住宅設備を提供する設備機器メーカーは、製品の設計・開発から製造、品質管理、施工に至るまで、幅広い業務を通じて、住まいの質を向上させることに貢献しています。
本記事では、設備機器メーカーの概要を紹介するとともに、建設プロジェクトの発注方式と設備機器メーカーの関係についても解説します。
また、コストオン方式、一括発注方式、分離発注方式といったさまざまな発注方式の説明と、設備機器メーカーが発注の過程においてどのように関与しているのかを詳しく見ていきます。
さらに、設備機器メーカーで働く主要職種とその役割、業界の最新トレンドや将来性についても触れ、設備機器メーカーでのキャリアパスを考える際の参考になる情報を提供しますので、設備機器メーカーに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
設備機器メーカーとは
住宅設備とは
設備機器メーカーについて説明する前に、まずは住宅設備について簡単にご説明します。
住宅設備は住宅やマンション、オフィスビルなどに設置される各種設備や機器のことを指します。
住宅設備の種類は多岐に渡りますが、大きく分けると以下のようなカテゴリがあります。
キッチン設備:システムキッチンや調理機器
バス・トイレ設備:浴室、トイレ、洗面台
給湯・空調設備:給湯器、エアコン、換気システム
建材・サッシ:窓、ドア、内装建材、外装建材
エネルギー関連設備:太陽光発電、蓄電池、床暖房
設備機器メーカーとは
設備機器メーカーは、これらの住宅設備を製造・販売する企業です。
住宅設備を製造する上では、技術面だけでなくデザイン性も重要で、機能性を確保しつつ、優れたデザインを取り入れることで、住宅の快適性や機能性の向上に貢献しています。
設備機器メーカーは企業によっては、専門の設備に特化した企業や、複数の設備を扱う総合メーカーも存在します。
そのため、一部のメーカーはシステムキッチンや浴室設備に特化し、別のメーカーは給湯器やエアコンなど幅広い設備を取り扱っているのが特徴です。
また、近年の新築住宅市場の縮小に伴い、企業同士の提携や統合が進んでおり、大手の総合住宅設備メーカーが市場をリードする傾向が強まっています。
建設プロジェクトにおける設備機器メーカーの位置付け(発注方式)
続いては、建設プロジェクトの中での設備機器メーカーの位置付けについて、発注方式の違いから、ゼネコンや施主(デベロッパー等)との関係についてお伝えします。
新規の、とりわけ規模の大きい建設工事においては、設備機器メーカーはサブコンに位置します。その際、施主からゼネコンに一括して工事を発注し、ゼネコンが選定した下請け企業として設備メーカーが入るイメージが一般的かと思います。
しかし実際には、施主から設備メーカーを指名し、仕様や価格が決まるケースもあるため、複数の受注スキームが存在します。
今回は、一定規模以上の建設プロジェクトで採用される一括発注方式、コストオン方式、分離発注方式についてそれぞれ説明します。
一括発注方式
一括発注方式とは、すべての建設工事を元請会社となるゼネコンなどの建設会社1社に発注する方式です。発注者は、元請会社に専門工事会社との契約を含め一括して発注し、元請会社が工事全体を管理します。この方式では、工事費の総額や責任の所在が明確になり、発注者の負担が少なくなります。
この方式で設備機器メーカーは、元請会社と直接連携し、品質管理や納期の調整を行います。例えば、大規模なマンションプロジェクトで、一括発注方式によりキッチンやバス設備を一括調達することで、効率的なプロジェクト進行が可能となります。
分離発注方式
分離発注方式とは、1つの工事をいくつかの区分に分割し、それぞれについて別々に施主から専門工事会社へ発注する方式です。
発注者が専門工事会社と直接交渉、発注するため、工事費の透明化を図ることができます。
分離発注方式では、、コストが抑えられるというメリットが存在する一方で施主側の管理工数が増えるという側面もあるため、実際に分離発注方式が採用されるケースは少ないようです。
コストオン方式
一括発注方式と分離発注方式の間をとって生まれた方式がコストオン方式です。
コストオン方式とは、発注者が専門工事会社を直接選定して工事費を決定し、元請会社となるゼネコンなどの建設会社に専門工事会社(住宅設備メーカー)を指定して発注する方式です。
この方式では、コストや仕様を柔軟に決めることができます。発注者は、専門工事会社の工事費に現場管理の経費を上乗せ(コストオン)した金額で元請会社と契約します。
そのため、あくまでコストオン方式では、ゼネコンと専門工事会社(住宅設備メーカー)が契約関係にあり、デベロッパーとは直接契約は行いません。
この方式では、設備機器メーカーは発注者や専門工事会社と直接連携し、設備の仕様やコストを調整します。
これにより、事前に施主側とサブコンで価格帯の認識合わせができるため、発注者のリスク低減や工事費の透明化が実現できるというメリットがコストオン方式にはあります。
設備機器メーカーとデベロッパー、ゼネコンの関係
設備機器メーカーは、これらの発注方式に応じてデベロッパーやゼネコンと密接に関わります。
コストオン方式や一括発注方式では、元請会社であるゼネコンとの連携が重要であり、設備の品質や納期の管理が求められる一方、分離発注方式では、発注者や専門工事会社との直接の関係が強く、消費者の多様なニーズに対応することが求められます。
設備機器メーカーの主要職種と仕事内容
こちらの章では、設備機器メーカーの主要職種と仕事内容についてご紹介します。
設備機器メーカーは設備の種類や企業によって職種が異なる場合が多いですが、一般的な設備機器メーカーの職種は大きく分けると技術系の職種と事務系の職種に分けることができ、技術系の職種は商品開発、品質管理、生産管理、施工管理など事務系の職種は営業や広報が代表的な職種として挙げられます。
今回は設備機器メーカーの技術職の中で、建設系の知識を活かしやすい設計職と施工管理職の仕事内容をご紹介します。
設計職
設計職の業務範囲は企業や製品によって異なり、企画やデザイナーから挙がってきたアイデアを具体的な製品に落とし込む場合や、開発寄りの業務まで幅広く行うことがあります。
また、設計の中にもデザイン寄りの設計業務も含まれる場合があり、その仕事内容は企業や業界、製造する製品、によって異なります。
その中でも、一般的な業務としては、以下の内容が挙げられることが多いです。
・CADソフトを用いて設計図、技術資料などの検討・作成
・製品の構造や材料の検討
・お客様の要望に合わせた図面の作成
設計職には、技術的な設計だけでなく、これにより、製品の機能性だけでなく、美しいデザインも実現することが求められます。
また、新商品の開発プロジェクトにおいて、試作や評価を通じて製品の品質や性能を確認し、必要に応じて改良を加えることも求められます。
さらに、設計職は生産工場で量産するための情報を落とし込むために、生産技術部門との連携や、効率的な生産ラインの構築を支援し、製品の量産化をスムーズに進めるために、他の部門との密接な連携も求められます。
施工管理
設備機器メーカーの施工管理職は、建築現場での施工監理を担当する職種です。
設計段階から引き継がれた図面に基づき、実際の現場で製品が正確に設置されるように監督・調整します。具体的には、納まり(決められたスペースに製品が収まるか)の確認、工程に合わせた施工業者の手配、そして品質や進行状況の管理を行います。
ゼネコンの施工管理職と共通する部分として、工程管理、品質管理、原価管理、安全管理の4つの管理業務があります。さらに、発注者や協力業者との打ち合わせや技術資料の作成、現場調査も同様に行います。これにより、計画通りに工事を完了させるための全体的な管理を担当します。
一方、設備機器メーカーの施工管理職は、特に住宅設備の取り付けに特化しており、ゼネコンの広範な建設プロジェクトに比べて専門性が高く、設備の最終チェックやリフォームの現場調査なども業務に含まれます。
設備機器メーカーの将来性
ここまで、設備機器メーカーの職種や発注方式からゼネコンやデベロッパーなどの関係性を紹介しましたが、設備機器メーカーの将来性はどのように考えられているのでしょうか?
ここでは、設備機器メーカーの現状を踏まえたうえで、今後将来性を予測するうえでのトピックをご紹介します。
新築市場の低迷とリフォーム需要の増加
住宅設備業界は、新築住宅市場の低迷が続く中で、リフォーム需要の増加に注力しています。
少子高齢化により新築住宅の着工数は減少傾向にありますが、既存住宅のリフォーム需要は増加しており、多くの住宅設備メーカーがリフォーム市場に焦点を当て、新たなビジネスチャンスを模索しています。
また、リフォーム需要の増加は、住宅の老朽化やエネルギー効率の向上を目指す社会的な動きとも連動しているため、今後もこの流れは継続すると考えられています。
業界再編と大手企業の台頭
住宅設備業界では、企業の再編が進んでいます。
かつては専門分野に特化した企業が多く存在しましたが、市場の縮小に伴い、複数の住宅設備メーカーが統合し、総合的に設備機器を扱うようになりました。
大手企業が市場をリードする形となり、規模の経済を活かしてコスト削減や技術革新を進めています。
こうした動きは、業界全体の競争力を高める一方で、中小企業の存続が難しくなっているという側面もあります。
海外市場の開拓
国内市場の縮小を補うために、住宅設備メーカーは海外市場の開拓にも力を入れています。
特に、人口増加が続く米国や東南アジアなどの市場は、今後の成長が期待される地域です。
これらの地域では住宅需要が高まり続けており、日本の住宅設備メーカーにとって新たな収益源となる可能性があります。
加えて、各メーカーは現地のニーズに応じた製品開発やマーケティング戦略を展開し、海外市場でのシェア拡大を目指しています。
設備機器メーカーへの転職ポイント
最後に設備機器メーカーへの転職を目指す際のポイントについてお伝えします。
設備機器メーカーへの転職を考える際、まず重要なのはどのような設備を扱う企業なのか、そして自分がどの職種に就きたいのかを明確にすることです。
設備機器メーカーには技術職と事務職が大きく分けて存在し、それぞれに求められるスキルや資格が異なります。
商品開発や施工などの技術職では、特定の資格が必要となる場合がありますが、企業や製品によっても必要な資格は異なります。例えば、キッチンやバス、トイレといった特定の住宅設備を扱う企業では、その分野に特化した資格が求められることがあります。
また、一級建築士の資格を取得することで、建設に関する深い知識や信頼性を高めることができ、特に設計や施工の分野で高度な設計や工事管理が可能になります。
ただし、これらの資格は必須ではなく、入社後に取得を目指す場合も多いです。資格取得支援制度を設けており、入社後のスキルアップを奨励している企業も多いため、事前に興味のある企業がどのような設備を扱っているのかを調べ、自分が希望する部門や職種に関連する資格についても確認しておくことが大切です。
また、希望する職種が決まっている場合は、その職種に関連した資格を取得することや、現在の仕事で関連する経験を積むことで、転職活動時に具体的な実績としてアピールすることができます。
まとめ
今回は、住宅設備の概要から、設備機器メーカーの主要な役割や業務について、さらに建設プロジェクトにおける発注方式とその中での設備機器メーカーの位置づけについても紹介しました。
普段の建設プロジェクトの中では、設備機器は注目されることが少ないですが、実際には建設物を作る上で非常に重要な要素です。
キッチンやトイレ、窓などの設備機器は、日常生活の質に直接関わるため、これらの製品の開発には技術的な側面だけでなく、デザイン性も求められ、住宅の快適性や機能性の向上に大きく貢献しています。
住宅設備機器の開発は、日々の生活に直結するため、建設業界の中でも独自のやりがいがあります。
デザイン性や機能性を追求し、私たちの住環境をより良くするために取り組むことができる設備機器メーカーに興味のある方は、ぜひ個別の企業研究を進めキャリアップへの準備を進めていきましょう。
ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を
一級建築士の資格は、設備機器メーカーはもちろん、さまざまな業界でキャリアアップに繋がる資格です。
また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。
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