エクステリアデザイナーとはどんな仕事?仕事内容から転職に必要なスキル・資格まで紹介します
建設業界の職種と聞くと、設計や施工管理など建物内部を支える仕事を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、街並みの外観や、快適な外部空間も建物の価値を大きく左右する重要な要素です。
今回ご紹介するエクステリアデザイナーは、門扉やアプローチ、庭、照明といった建物まわりの空間を一体的に設計し、デザイン性と機能性の両立を図る職種で、建築士や造園技術者と連携しながら、暮らしを彩り、街並みの景観価値を高める外構空間をつくり上げていきます。
本記事では、エクステリアデザイナーの具体的な仕事内容、求められるスキル・資格、活躍フィールド、転職時の注意点までを分かりやすく解説します。
外構やランドスケープの仕事に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
エクステリアデザイナーとは
まずは今回ご紹介するエクステリアデザイナーについてご説明します。
エクステリアデザイナーとは、建物の外部空間をデザインする専門職で、住宅や商業施設、公共空間などの外構全体を対象に、門扉・アプローチ・フェンス・植栽・照明計画までを手掛ける仕事です。
単に見映えの美しさを追求するだけでなく、通行の安全性や防犯性、メンテナンス性といった機能面とのバランスを取ることが求められます。
また、季節ごとの光や風、周辺環境との調和を考慮し、時間帯や天候によって変化する景観を設計に落とし込む点も特徴です。
クライアントの要望や敷地条件に応じて、全体コンセプトやデザインテーマを設定するため、高い空間構成力に加え、丁寧なヒアリングと提案を行うコミュニケーション力も欠かせません。さらに、設計図の作成から資材選定、現場での工事監理まで一貫して携わるケースが多く、造園・土木・建築に関する幅広い知識と調整力が必要です。
対象の建築物は戸建住宅だけではなく、マンションの外構、大型商業施設のランドスケープ、駅前広場や遊歩道などの公共空間も手掛けます。
エクステリアデザイナーと似た職種に外構施工管理や造園施工管理技士がありますが、これらが主に施工計画・現場管理を担うのに対し、エクステリアデザイナーは空間そのものの構成や演出をゼロから企画・設計し、デザイン面でプロジェクトをリードするといった違いがあります。
またエクステリアデザイナーが建物の外部空間をデザインする仕事に対して、内部空間を手掛けるインテリアデザイナーという職種も存在します。
インテリアデザイナーについては下記の記事で詳しくご紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
インテリアデザイナーの仕事とは?仕事内容から、転職時に求められるスキル・経験まで紹介

エクステリアデザイナーの主な仕事内容
続いてはエクステリアデザイナーの仕事内容についてご紹介します。
エクステリアデザイナーの業務は、企画設計から植栽提案、技術的な調整、コスト管理まで多岐にわたり、大きく分けると以下の4つの領域に整理できます。
外構の企画設計
門扉・フェンス・アプローチ・カーポートなど、敷地全体の外構をトータルにプランニングします。
住宅であれば「家との調和」、商業施設であれば「集客動線やブランドイメージ」を優先するといった具合に、建物ごとの目的に合わせてデザインの優先順位を設定します。
図面は Vectorworks や RIKCAD などの CAD、3D パースソフトを用いてビジュアル化し、クライアントへの提案資料も作成するケースが多いです。
造園・ガーデニングの提案
植栽計画や庭づくりも重要な領域です。
季節感や維持管理のしやすさを考慮しつつ、緑化による温熱環境の改善、防犯性の向上など機能面も併せて検討します。
造園施工管理技士・造園技能士と連携し、適切な樹種選定やレイアウトを行うため、造園の基礎知識も求められます。
機能性・安全性を考慮した技術調整
エクステリアデザインでは、見た目の美しさだけでなく、通行の安全性や防犯性、バリアフリー対応など、機能面にも配慮する必要があります。
さらに、敷地の高低差調整や排水計画、土木構造物の強度確認といった「目に見えない部分」の設計にも関わることが求められます。
コストと品質のマネジメント
デザインが決まった後は、資材選定・見積り作成・発注管理といったコスト面の調整や、施工会社・職人との打ち合わせを通じた品質管理も行います。
必要に応じて照明器具やアウトドアファニチャーなどプロダクトデザイン領域まで踏み込み、プロジェクト全体の完成度を高めるのが役割です。

エクステリアデザイナーの仕事の流れ
エクステリアデザイナーの仕事は、ヒアリング・現地調査に始まり、プランの作成、プレゼンテーション、実施設計、施工監理、引き渡しまで一連の流れで進められます。
ここでは、その主な流れを順を追ってご紹介します。
ヒアリング・現地調査
プロジェクトの第一歩は、施主へのヒアリングです。
ここでライフスタイルや好みのテイスト、予算、将来のメンテナンス負担などを細かく確認し、空間づくりの方向性を固めます。
次に現地へ足を運び、敷地の勾配や隣地との高低差、周辺の植生、法規制、日照・風向などを実測を行います。
コンセプト立案と基本プラン作成
集めた要件と現地情報をもとに、外構全体のコンセプトを策定します。
和風・モダン・ナチュラルなどのテイストや動線計画、ゾーニングを決めたうえで、Vectorworks や RIKCAD を用いて平面図・立面図・3D パースを作成します。
その後素材や色彩、植栽の大枠を決定し、複数案を比較しながら基本プランをまとめます。
プレゼンテーションとプラン調整
完成した基本プランを施主に提示し、パースや概算見積を通じてイメージを擦り合わせます。
コスト、メンテナンス性、防犯・バリアフリー対策など実用面の懸念を一つずつ解消し、照明計画や排水計画といった機能ディテールもこの段階で確定します。
実施設計・発注準備
最終合意が取れたら、施工図や部材リスト、工程表を作成し、専門工事会社や職人と詳細を調整します。
植栽時期や材料納期、近隣への配慮を含めたスケジュールを策定し、見積を確定して資材を発注。ここではコスト管理と品質確保を両立させるマネジメント力が求められます。
施工監理・引き渡し後フォロー
着工後は設計意図どおりに工事が進むよう、現場で品質・安全・工程をチェックします。
最終仕上げでは植栽位置や照明試験点灯を確認し、完成検査を経て施主へ引き渡します。
引き渡し後もメンテナンス方法をレクチャーし、必要に応じて追加提案や不具合対応を行うことで、長期的に携わる場合もあります。

エクステリアデザイナーになるために求められるスキル・経験・資格
ここまででエクステリアデザイナーの仕事とその流れをご紹介してきましたが、実際にこの職種を目指すにあたって、どのようなスキルや経験、そして資格が求められるのでしょうか。
この章ではエクステリアデザイナーになるために求められるスキル・経験・資格をご紹介します。
エクステリアデザイナーに求められる実務スキル
エクステリアデザイナーになるために国家資格を取得する必要はありません。
未経験歓迎の求人も一定数あり、「外構や造園に興味がある」「CAD を学んでみたい」といった意欲が評価されるケースも見受けられます。
しかし、未経験で転職した際の給与は低くなる傾向があります。
また、一般的な転職時の募集要項では、外構やリフォーム業界での設計経験、Vectorworks/RIKCAD/O7 などの CAD 操作スキル、見積作成や資材発注の経験などを歓迎条件に挙げる企業が多いのも事実です。
そのため、実際に現場で使われるソフトや工程管理のフローを理解しておくと、選考時のアピール材料になります。
また、クライアントとの打ち合わせや施工会社との調整も多いため、ヒアリング力や提案力をはじめとしたコミュニケーションスキルも重要です。
これらの対人スキルは実務を通じて磨かれる部分が大きいものの、建築・土木・造園に関する基礎知識を並行して学んでおく良いでしょう。
関連資格
エクステリアデザイナーに必須の資格はありませんが、スキルの証明やキャリアアップに役立つ関連資格も存在します。
代表的な資格としては、以下のようなものがあります。
エクステリアプランナー(1級・2級)
日本エクステリア建設業協会が認定する民間資格で、外構設計や工事監理に関する知識と技術を証明できます。図面作成や資材選定の基礎を学べるため、未経験者のスキルアップに適しています。
造園施工管理技士(1級・2級)
庭園や緑地の施工計画・監督を担う国家資格です。
エクステリアデザイナーは仕事によっては、大規模なランドスケープ案件や公共工事で監理技術者としての立場が求められる場面もあり、キャリアの幅を広げられます。
カラーコーディネーター検定
色彩理論を学び、配色の提案力を証明する民間資格です。
外壁材・タイル・植栽など多彩な要素を扱うエクステリアでは、色彩計画の知識も中雨ようになります。
その為、他の資格と同じように仕事やキャリアの幅を広げるという意味で取得しておきたい資格と言えるでしょう。
上記のような資格に加え、建築士や建築・土木施工管理技士の資格を取得することで、外構だけではなく、建築物に対する知識を保有していることをアピールできます。

エクステリアデザイナーとしての就職先
就職先の代表的な業界
最後にエクステリアデザイナーとしての就職先をご紹介します。
エクステリアデザイナーは、住宅の門まわりから商業施設のランドスケープ、公共空間の緑地設計まで幅広い案件に携われるため、就職先の選択肢も多彩で、実際の求人動向でも、新卒・中途採用を問わず需要が高い職種のひとつと言えます。
ここでは、エクステリアデザイナーとして活躍できる主な業界や企業の特徴をご紹介します。
住宅メーカー・ハウスメーカー
住宅メーカー・ハウスメーカーに就職した場合、戸建住宅や分譲マンションの外構をトータルにコーディネートする仕事が多くなります。
建物と外構を一体で提案できるため、設計初期から施主のライフスタイルを反映したプランを描ける点が魅力と言えるでしょう。
またリフォーム部門を持つ企業では、既存住宅の外構リニューアルやバリアフリー改修を担当するケースもあります。
設計事務所・ゼネコン
設計事務所やゼネコンでは大型商業施設やホテル、オフィスビルなど公共性の高い建築物の外構・ランドスケープ設計を手がける機会が多いです。
また、都市計画や景観条例への対応、動線計画、防災・防犯対策など考慮項目が多く、建築・土木・造園と横断的に連携しながらプロジェクトを進めたい方に適しています。
エクステリア専門会社・造園会社
門扉・フェンス・カーポートなど外構部材を扱う専門商社や造園会社では、デザインから施工監理まで一貫して担当するケースが多数あります。
家庭用プールや屋外防犯設備などニッチな商材を扱う企業もあり、特定領域のスペシャリストを目指せるといった特徴があります。
リフォーム・リノベーション企業
既存住宅や店舗の外構改修を請け負うため、限られた敷地条件や既存設備との取り合いを調整するスキルが鍛えられます。
インテリア部門と協働して「内外トータル提案」を行う企業も増えており、空間デザインを包括的に手がける機会がある可能性があります。
就職先を選ぶ際の注意点
エクステリアデザイナーとして就職できる業界、企業を探す際は以下の点で注意が必要です。
業務範囲の確認
企業によっては「建築設計〜施工」の一部として外構を扱う場合があり、実際の担当領域が設計に限られるのか、施工管理まで担うのかが大きく異なります。
また、求人票では「設計職」「施工管理職」とまとめて募集されていることもあるため、興味がある企業は事前に業務範囲を確認するようにしましょう。
CAD・資格要件は企業ごとにばらつきがある
RIKCAD や Vectorworks が必須、あるいは造園施工管理技士を歓迎とする企業もあれば、未経験可のポテンシャル採用を行う企業もあります。
このような場合、求められるスキルによって業務範囲も異なる可能性が高いです。
応募時点で求められるスキルセットを把握し、キャリアステップに合わせて資格取得やキャリアアップを検討すると就職後の選択肢も広がります。
デザインと営業の比重
専門会社や規模の小さい企業では設計業務と営業・積算が一体化している場合があり、見積対応や契約手続きまで担当することも珍しくありません。
そのため、事前にクリエイティブワークに専念したいのか、顧客折衝も含めて幅広く携わりたいのか、キャリアビジョンを明確にしておくことが大切です。
まとめ
今回は、エクステリアデザイナーの仕事内容から仕事の流れ、必要スキル・資格、就職先選びのポイントまでをご紹介しました。
エクステリアデザイナーは、門扉やアプローチ、植栽など“建物の顔”となる外構空間を企画・設計し、時には施工監理まで担うクリエイティブかつマネジメント性の高い職種です。
一方で未経験者の採用を行っている企業もあるため、転職時のハードル自体は決して高くありません。
ただし、エクステリア専門会社・住宅メーカー・ゼネコン・公共団体など活躍の場は幅広く、企業によって担当フェーズや求められるスキルセットは大きく異なります。
そのため、エクステリアデザイナーに転職する際はキャリアビジョンを明確にし、転職前に補えるスキルや資格は何か、入社後どのように経験を積んでキャリアアップしていくかを具体的に描くようにしましょう。
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