【2025年最新】なぜ建設工事のコストは高騰しているのか?建設業界のキャリアへの影響も解説

【2025年最新】なぜ建設工事のコストは高騰しているのか?建設業界のキャリアへの影響も解説

近年、建設業界では工事コストの高騰が深刻な課題となっています。
都市開発やインフラ整備、住宅建築など、さまざまなプロジェクトでコスト増加が顕著です。

この状況は、業界全体の収益性やプロジェクトの進行に影響を及ぼしており、建設業界での転職を検討する中途求職者にとっても重要な情報となります。

建設業界での中長期的なキャリア形成を見据えるうえで、こうした業界の現状や動向を正しく理解しておくことは非常に重要です。
今後の建設業界でどのような力が求められるのか、どのような分野にチャンスが広がっているのかを知ることで、自身の方向性をより的確に描くことができます。

本記事では、建設工事コストの上昇要因、業界への影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。中途求職者が転職活動を進める上での参考になれば幸いです。

実際どのくらい上昇している?建設業界の現状

建設業界は、日本の経済において重要な役割を果たしています。建設投資額は2010年度以降増加傾向にあり、2022年度には約67兆円に達しました。特に民間の建設投資は、東京オリンピック後も堅調に推移しています。

しかし、建設工事コストの上昇が業界全体の課題となっており、企業の収益性やプロジェクトの実現可能性に影響を与えています。

引用元:一般社団法人日本建設業連合会(https://www.nikkenren.com

労務コストの上昇幅

建設工事における労務コストは、現場で作業する技能労働者への人件費や社会保険料などが含まれます。
2021年1月と比較すると、2023年2月時点での公共工事設計労務単価は全国平均で約10%上昇しており、職種別では以下のような上昇が確認されています。

  • 溶接工:+7.3%
  • 塗装工:+10.6%
  • 配管工:+12.2%
  • ダクト工:+16.1%

これらの上昇により、全職種平均では約9.1%の上昇となっており、労務費が全体の工事費に占める割合を30%と仮定すると、労務費の上昇だけで全体の工事コストに3%程度の影響を与えている計算になります。

資材コストの上昇幅

一方、資材費の上昇も顕著です。建築部門においては、2021年から2023年にかけて資材価格が約29%、建設全体では約28%上昇しています。
具体的には、以下のような資材価格の上昇が見られます。

  • 板ガラス:+20%
  • 生コンクリート:+26%
  • 軽油:+35%
  • 鋼矢板:+42%
  • ステンレス鋼板:+84%

建築コストにおける資材費の占める割合を50〜60%とした場合、これらの価格上昇は、全体の工事費を14〜17%程度押し上げている要因となっています。

総合的な影響

以上を総合すると、労務費と資材費の両方の上昇を受けて、仮設費や現場経費などを含めたトータルの建設工事コストは、2021年からの約2年間でおおよそ17〜20%上昇していると推定されます
このような急激なコスト増加は、発注者・施工者双方にとって大きな影響を与えており、建設業界全体で深刻な課題となっています。

建設工事コストが高騰している要因

ここでは、建設工事コストの上昇を招いている主な要因について、「労務コスト」と「資材コスト」の観点から詳しく解説します。

労務コスト上昇の要因

①慢性的な人手不足

建設業界では長年にわたり人材不足が深刻化しており、特に若年層の建設業離れが進んでいることが最大の要因です。
その結果、現場で必要とされる技能労働者の高齢化が進み、人材確保のための人件費が上昇しています。
また、人手不足によって一人当たりの負担が増え、工期の延長や工程の非効率化を招き、結果として工事全体のコストも上昇します。

②働き方改革による影響

労働時間の短縮や休日の増加など、建設業における働き方改革も労務費の上昇に影響を与えています。
週休2日制の導入や時間外労働の上限規制により、現場の稼働日数が減少し、同じ工事を行うにもより多くの日数が必要になります

このため、仮設設備や現場管理費などの経費も増加し、全体の工事コストに跳ね返っています。

③法定福利費の適正化

従来は一部の業者で適正に処理されていなかった法定福利費(社会保険料など)の支払いが、近年はガイドラインにより明確化され、元請業者にも適正な支払いが求められるようになっています
これにより、企業全体の負担が増加し、それが労務コストの上昇につながっています。

資材コスト上昇の要因

①世界的な建設需要の拡大

アジアを中心とした新興国での都市開発が急速に進んでおり、建設資材への需要が世界的に高まっています。
たとえば、中国やインド、インドネシアなどではインフラ整備が盛んに行われており、これにより資材価格が世界規模で上昇しています

②新型コロナウイルスによる影響

コロナ禍では、アメリカや欧州での郊外住宅需要の増加により木材価格が高騰しました(ウッドショック)。また、感染拡大に伴う物流の混乱やコンテナ不足により、輸送コストも増加し、建材価格に波及しています。

③ウクライナ情勢の影響

2022年以降のロシア・ウクライナ紛争により、エネルギー資源や金属資源の供給が不安定化し、価格が高騰しています
特に日本が輸入に依存している鉄鋼や木材については、調達コストが上昇しており、資材費の高騰を招いています。

④円安の加速

日本国内で使用される建材の多くは海外から輸入されており、円安が進むと相対的に輸入コストが上昇します
これに加え、燃料費や電力料金の値上がりも資材製造や輸送にかかるコストを押し上げており、資材価格の高騰に直結しています。

このように、建設工事コストの上昇は単一の要因によるものではなく、複数の国内外要因が複雑に絡み合った結果として起きており、今後の動向にも注意が必要です。

今後建設工事コストはどうなっていく?

建設工事コストの上昇は、一時的な資材価格の変動や国際情勢の影響にとどまらず、構造的な問題として定着しつつあります。
短期的には、ウクライナ情勢の沈静化や為替の安定により、鋼材や燃料など主要資材の価格上昇は一定の落ち着きを見せる可能性があります。

しかし長期的には、少子高齢化による建設労働力の減少や、時間外労働規制など、働き方改革の影響が続くことで、労務費の上昇は避けられないと考えられます。

このため、企業は限られた人材で生産性を高める必要に迫られており、建設業におけるICT(情報通信技術)の導入やBIM(Building Information Modeling)の活用、さらにはロボットやドローンを使った自動化の取り組みが加速しています

また、環境配慮や脱炭素社会への対応といった新たな要請も、今後の建設コストに影響を及ぼす要因となるでしょう。
省エネ建材の採用や再生可能エネルギーの導入など、環境対応型の工事が増えることにより、コスト構造自体が変化していくことも想定されます。

これらの背景を踏まえ、建設業界は今後、より高度なマネジメント能力と技術力が求められる局面に入るといえます

建設業界への転職希望の方へ

こうした構造的な変化が続く中で、建設業界への転職を検討する方にとっては、情報収集と見極めの力がこれまで以上に重要になります。

まず、企業の財務健全性や利益率、さらには労務費や資材費の高騰にどのように対応しているかを確認しましょう
安定した経営基盤を持ち、柔軟かつ積極的に新しい技術や制度に対応している企業は、今後の成長も見込めます。

加えて、企業文化や働き方にも注目しましょう。柔軟な勤務制度や教育体制の整備、キャリアアップ支援制度の有無など、自身のライフスタイルや価値観に合った職場を選ぶことが、満足度の高い転職につながります

業界特有の動向や課題を正しく理解し、自身の強みを活かせるフィールドを見つけることが、成功への第一歩です。

建設業界で働いている方へ

建設工事のコスト高騰や人材不足が続く現在、限られた予算や人数で現場を回す必要性が増しており、建設業界では従来以上に「マネジメント力」が求められています
計画の立案、工程・品質・安全管理、コスト管理に至るまで、より柔軟で総合的な判断ができる人材が重宝されています。

こうした環境の中で安定したキャリアを築くためには、変化への備えとして、継続的な学習とスキル更新が不可欠です。

とりわけ、資格取得やスキルアップによって業務の幅を広げることは、個人としての市場価値を高め、より良い条件でのキャリア形成につながります
現場管理・施工管理・設備や電気など複数の分野にまたがる知識や経験を積む「多能工化」は、特に重視されています。

加えて、BIMやCIM、ドローン測量など、デジタル技術への対応力も重要です。こうした新技術を積極的に習得することで、将来性の高いプロジェクトへの関与や新たな業務領域へのステップアップが期待できます。

政策面でも、グリーンインフラや防災減災を重視した公共事業が拡大する傾向にあり、今後の注目分野として知識を深めておくことが有効です。

まとめ

資材価格の上昇や人材不足、エネルギーコストの増大といった要因が複合的に絡み合い、建設工事のコストが高騰しています。

工事コストの増加や人手不足により、建設プロジェクトの計画・遂行においてより高度なマネジメント力が求められる時代となっています。

こうした状況下で転職を検討する中途求職者にとっては、単に経験や技術を活かすだけでなく、コスト意識を持った計画力やVE(バリュー・エンジニアリング)への理解、柔軟な調整力といったスキルが、より高く評価される傾向にあります。

特に中長期的なキャリア形成を見据える上では、現在の建設業界が直面している構造的な課題やその背景を正しく理解しておくことが不可欠です。業界の現状や動向を把握することで、自身の今後のキャリア戦略を描く参考にしてみてください。