人手不足解消の鍵となる? 建設業界で注目される外国人労働者の制度と今後についてご紹介します

少子高齢化に伴い、国内の労働人口が減少している中で、あらゆる業界で注目を集めているのが「外国人労働者」の存在です。
ニュースなどでも「外国人採用を拡大している企業が増えている」という話題を耳にする機会が増えましたが、実際に建設業界ではどのように外国人を受け入れているのでしょうか。
本記事では、建設業界における外国人労働者の現状を中心に、受け入れ制度や課題、今後の取り組みや展望についてご紹介します。
人手不足の解消や技術力向上の一策として期待される外国人労働者が、建設現場でどのような役割を担い、どんな課題に直面しているのかなど、建設業界の動向を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
外国人労働者の現状
外国人労働者について
まず「外国人労働者」という言葉ですが、本記事では「外国籍を持ち、日本国内で就業する(あるいは就業を希望している)人材」という程度の意味合いで用いています。
後ほど在留資格の種類などはご説明しますが、今回は「外国籍のまま日本で働く人々」を指す言葉として理解してください。
日本では少子高齢化により、今後さらに労働力不足が深刻化すると予想されています。こうした背景のもと、各業界では外国人労働者の受け入れを積極的に検討・拡大する動きが進んでおり、建設業界もその例外ではありません。
特に建設現場では、建設業界は高齢化と若手人材の減少が顕著で、慢性的な人手不足に悩まされています。
そのため人手不足の解消や技術力・労働力の強化といった観点から、外国人労働者に対する期待が高まっています。
データで見る外国人労働者の現状
では実際の日本国内や建設業界における外国人労働者の規模や推移について、数値を用いて見ていきましょう。
日本全体における外国人労働者数の推移
日本国内の外国人労働者数は、ここ数年で着実に増加傾向にあります。
厚生労働省が公表している資料によると、20XX年にはおよそ○○万人だった外国人労働者が、20XX年には○○万人を超える規模になりました。
この背景には、少子高齢化に伴う国内の労働力不足や、日本企業のグローバル化に伴う積極的な外国人材の採用といった要因が挙げられます。
建設業界における外国人労働者の割合
建設業界に限定した場合でも、同様に外国人労働者の数は増加しています。
国土交通省の統計や業界団体のレポートによると、2023年時点で建設業界に従事している外国人労働者はおよそ15万人に達し、2016年と比べると3.5倍に増えたとも言われています。
国籍別の内訳とその他の特徴
国籍別に見ると、近年はベトナムやインドネシア、フィリピンといったアジア地域からの労働者が大半を占めています。
上記の理由としては、技能実習や特定技能といった制度を利用して入国し、日本の建設現場で経験を積むケースが増えているためです。
また、建設現場における外国人労働者の多くが、技能実習生として就労しているという点も特徴のひとつです。
後ほど詳しく説明しますが、技能実習制度は「日本で学んだ技術を母国へ還元する」という国際協力の側面を持ちつつも、実際の現場では「人手不足を補う」要素が現状大きいと言えます。

外国人が日本で働くために必要なこと
日本で外国人が働くには、基本的に在留資格が必要となります。
建設業界であれば、大きく分けて「技能実習生」として働くケースと、「特定技能」の在留資格を取得して働くケース、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するケースが代表的です。
本章では、それぞれの制度の背景や目的、実際の活用状況、そして課題などについて解説します。
パターン①技能実習生
技能実習制度は、もともと日本の技術や技能を途上国へ移転し、国際協力に貢献することを目的として設立されました。
受け入れ企業は実習生に対して必要な教育・指導を行い、実習生は日本の現場で働きながら実践的な技術を習得し、将来的には母国でその技術を活かすことが期待されています。
国際協力に貢献することを目的とした制度のため、技能実習制度での滞在期間は最長でも5年となっています。
活用状況と課題
当初の国際協力という建前とは裏腹に、実際の現場では「労働力不足を補う手段」として技能実習生を受け入れているケースが多いのが実情となっており、特に建設業界では、高齢化による人材不足が顕著で、技能実習生を積極的に活用する傾向にあります。
上記のような背景から、技能実習生が十分な待遇を受けられていない事例や、不適切な管理が行われていたケースも報道されています。
これらの問題を踏まえ、国は受け入れ企業に対して監査を行うなど、制度改善を続けています。
パターン②特定技能制度
特定技能制度は、深刻な人手不足を補うために2019年に新設された在留資格です。
特定技能外国人を受け入れる分野は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあり、外国人により不足する人材の確保を図るべきとされている16分野と定められていますが、建設業界も対象業種のひとつとして認められています。
一定の試験に合格した外国人は、特定技能の在留資格を得て日本で働くことができます。
とりわけ建設業界は、特定技能の対象業種のひとつとして認められており、一定の試験に合格した外国人は、特定技能の在留資格を得て日本で働くことができます。
パターン③技術・人文知識・国際業務
現在、日本の建設業界で働く外国人の中には、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持ち、専門性を活かして働く方々が増えています。
特に近年では設計、施工管理、設備設計、CAD関連の分野でその活躍が顕著です。この資格は、高度な知識や技術を必要とする職種に適用される一方、技能実習生のように現場で直接作業する職種には適用されていません。
この資格を得るためには、日本で日本語を一定期間(2年間程度)学び、その後建築や土木の大学や専門学校で専門知識を習得することが一般的です。
これにより、設計や施工などの業務に必要な技術を身につけ、日本企業に就職する際には日本人と同様の新卒・中途採用の条件で採用されることが可能です。
このため、期限に制限されず、安定して働き続けることができます。
また、日本語の勉強を自国で行ってから日本に来るケースが多い技能実習生や特定技能制度と比較すると、日本で日本語を学べる点や、建築・土木の専門知識を学校で学べる点が、この制度の大きな特徴です。
こうした背景から、若い世代を中心に、現在は技術・人文知識・国際業務の制度を利用して日本で働く方が増えています。
スキル面
日本語能力
技能実習制度や特定技能制度では日本語能力試験(JLPT)のN4程度、もしくは日常生活レベルの会話力を求めることが多いため、日常生活での日本語のコミュニケーションは基本的には問題なく行えます。
しかし、建設現場では技術的な用語や安全上の注意点など、日本語でも専門的な言葉が飛び交うため、現場ならではの専門用語や方言への対応に苦慮するケースもあります。
最近では、外国人労働者を多く受け入れる企業が、通訳スタッフの配置や翻訳アプリの導入、多言語で書かれたマニュアルの整備などを行い、現場でのコミュニケーションを補助している企業も多く、今後も改善が期待されています。
建築、土木に関する知識
外国人労働者の中には、母国で建設関連の学校を卒業したり、基礎的な工事経験を積んでから来日する方もいます。
そういった人材は、日本の現場ルールや資材の扱い方などの違いを学ぶ必要はあるものの、基本的な施工技術や安全意識に関しては適応が早い傾向があります。
制度別では、技能実習生は、実際の現場で働きながら日本の建設技術や作業手順を学ぶというOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が中心です。
一方、特定技能制度を利用する人材は、業務に必要な試験に合格してから来日するため、一定の専門知識や実務経験がある場合が多いと言われています。

外国人労働者が実際に担っている業務の役割
では、実際に日本で働く場合、どのような職種に就くことが多いのでしょうか。
今回は「技術・人文知識・国際業務」と「技能実習生」の2つの制度で日本で働く場合のケースを例にあげてご紹介します。
技術・人文知識・国際業務の場合
技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人は、大学卒業者は施工管理、大学院卒業者は建物の設計や構造計算など、設計分野で働くケースが多いです。
また、専門学校などでCADを学んでいた場合は、図面作成や設計補助業務において即戦力として採用されるケースが多いようです。
また、長期的に日本で働くことができるため、施工管理職からキャリアをスタートし、設計分野へのステップアップを目指すケースが多いのも特徴です。
技能実習生の場合
技能実習生は、建設現場の直接作業に従事することを目的として来日しています。
「日本の技術を母国に還元する」という国際協力が技能実習生の目的であるため、型枠工事、鉄筋工事、左官作業などの現場作業が主な職務です。
また、設計や施工管理といった高度な専門職には就けないという制限があります。
今後の展望と課題
ここまで外国人労働者の現状や日本で働くための精度などをお伝えしましたが、少子高齢化と労働力不足が深刻化する日本において、建設業界での外国人労働者受け入れは今後ますます重要なテーマになる可能性があります。
制度の章でも触れたように、現行の制度にはいくつかの課題がありますが、今後はさらに受け入れを拡大しながら、外国人労働者が安心して働ける環境を整備していく必要があります。
本章では、政府の取り組みや規制緩和の動向、受け入れにおける課題を中心にご紹介します。
政府の取り組みと規制緩和
外国人労働者を受け入れるための枠組みは、これまで段階的に整備されてきました。
深刻な人手不足が懸念される建設業界に対して、政府や関係機関はさらなる受け入れ拡大に向けてさまざまな施策を講じています。
技能実習制度の見直し
「国際協力」としての側面と、実際には「人手不足を補う労働力」としてのギャップを埋めるべく、技能実習制度の改善が図られています。
監理団体や受け入れ企業に対する監査の強化や、実習生の相談窓口の整備などが進められ、より適切な運用を目指す取り組みが行われています。
特定技能制度の拡充
特定技能制度には1号と2号があり、2号では在留期間の更新回数に上限がなく、家族帯同も可能になります。
建設業界は特定技能2号に移行が認められている業種であるため、政府としては、特定技能2号への移行基準を明確化するなど、制度をさらに使いやすくするための見直しを行うことで、外国人材の定着・長期就労を後押ししています。
多言語対応や生活支援施策
外国人労働者の受け入れによるトラブルやミスマッチを減らすため、入国在留管理庁や地方自治体を中心に、多言語での情報提供や生活支援窓口の設置などが進められています。
これらは言語や文化の壁を最小限にし、円滑なコミュニケーションや定着を促すことが狙いです。
外国人受け入れへの課題
外国人労働者の受け入れが拡大する一方で、解決すべき課題も多く存在します。
多国籍な人材が集まると、その分コミュニケーション上のトラブルが起きやすくなります。
またすでにご紹介したように、技能実習制度における不正や、特定技能で来日した外国人への不当な待遇などの労働条件の整備は監督機関による指導・検査体制の強化が求められています。
特定技能2号へ移行すると長期就労や家族帯同が可能になる場合がありますが、そのプロセスや要件がわかりにくく、外国人本人や受け入れ企業が十分に活用しきれていないという現状があります。
また、外国人労働者が日本で働き続けることで具体的にどのようなキャリアを築いていけるのか、事例がまだ少ないため、企業側も明確に説明しにくいのが実情です。
一方で、キャリアビジョンを提示できる企業は、外国人労働者に対して魅力的な就労環境をアピールができるため、こうした仕組みづくりを進めていくことが企業側にも求められています。
まとめ
本記事では、建設業界における外国人労働者の現状や受け入れの仕組み、日本国内で働くために必要な制度などについてご紹介してきました。
現状でも多くの方が技能実習制度や特定技能制度を活用して、建設現場で活躍しています。
一方で、言語や文化の壁、待遇改善、キャリアパスの不透明さといった課題が依然として存在するのも事実です。
建設業界に限らず、どの業界でも人材の確保は業界の成長のためには欠かすことができません。
今回のように近年のトレンドであるトピックに対して、建設業界はどのような現状になっているのかや、今後について考えることで、業界の将来性を分析できます。
また、さらに細分化し、自身の興味がある業界や企業ではどのようなアプローチが取られているかを調べることによってより、詳細な分析を行えます。
今後のキャリアを考える際にもぜひトレンドやニュースなどの情報収集や、そこに対しての考察をする習慣をつけていきましょう。
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