建物の建設や土木インフラの更新に不可欠な「地質調査業界」をご紹介します
建築工事やトンネルや道路といったインフラ整備はまず初めにその土地の地質や地盤を調べる作業から始まります。
地盤の特性や安全性を評価することで、災害リスクの低減や建物の耐久性向上に貢献しています。
自然災害や建物の保全への意識が高まるなか、地質調査の重要性はますます増しています。
今回はそんな地質調査業界について、概要や仕事内容、将来性についてご紹介します。
地質調査業界とは
地質調査業界とは、土地や地盤の構造や性質、状態を調査する業界で、建設業界の基盤を支える重要な分野となっています。
建築物や橋梁、道路などの安全な設計・施工には、地質、地盤の正確な理解が欠かせず、地質調査は建設の出発点として重要な役割を果たします。
日本は地形の性質上、地震や洪水、地滑りなどの自然災害が起こりやすいため、地盤の安全性を正確に評価し、それに基づいて建築物を支えるための適切な基礎や構造を計画することが特に重要視されています。
建設分野以外での役割
地質調査業界は、建設分野だけでなく、学術的分野や資源開発分野でも重要な役割を果たしています。
学術的分野では、地球科学や環境科学の研究のための調査依頼を受け、地質構造の解明や自然環境の変化を調査する基礎データを提供しています。
こういった研究が災害予測や防災計画の策定にも寄与し、社会全体の安全性向上に貢献しています。
資源開発分野では、鉱物資源やエネルギー資源の探索のために地質調査が行われます。
日本でも以前は石炭の調査のために調査が多く行われていましたが、利用しやすい石油が普及したことで、今では資源開発のための地質調査はほとんど行われていません。
今では日本の地質調査の9割以上が建設を目的として行われていると言われています。
地質調査業界の仕事内容
地質調査業界の主な仕事は、土地や地盤の性質や構造を明らかにし、そのデータを基に建設や災害対策などの計画や設計を支援することです。
この業界で行われる調査は多岐にわたり、調査目的や対象によって具体的な内容が異なりますが、大きく分けるとフィールド調査、データ解析、報告書作成の3つの工程があります。
フィールド調査
現地での調査作業は、地質調査業務の中心的な役割を担います。
代表的な方法として、ボーリング(掘削)調査やサウンディング(地盤貫入試験)などがあります。
ボーリングでは、地中深くから土や岩石のサンプルを採取し、地層の構成や性質を確認します。
一方、サウンディングは地盤の強度や硬さを調べる試験で、特に浅い地層の評価に用いられます。専用の器具を地面に押し込んでいき、その抵抗値を測定します。これにより、地盤の密度や強度、硬さを定量的に把握することができます。
また、最近では、非破壊検査技術として地中レーダー探査や地震波探査も導入されており、調査の精度と効率が向上しています。
データ解析
フィールド調査で得られたサンプルや測定データは、ラボやオフィスで詳しく解析されます。
たとえば、採取した土壌や岩石を用いて、粒度分布、含水比、せん断強度などの特性を測定します。これらの解析結果は、建設地の安全性評価や基礎設計に必要なデータとして活用されます。
また、地下水位や土壌の透水性を調査することで、地震時の液状化リスクや洪水対策に役立つ情報を提供します。
調査報告書の作成
データ解析が終わると、調査結果を基に報告書が作成されます。
この報告書は、地盤の状態や特性を詳述し、それに基づいた設計上の提言やリスク評価を含む重要な資料です。
建築士や土木技術者にとって、報告書は計画や設計の根拠となるため、分かりやすく正確にまとめる必要があります。
地質調査業界の企業
地質調査業界には、さまざまな企業形態が存在します。
まず、地盤調査の専門に特化している専業の企業です。
これらの企業は、地質調査に必要な機器や設備を完備し、豊富な経験と高度な技術を持っていることが多いです。
そのため、より専門的な内容の調査や、高精度のデータ解析やリスク評価を求められるケースが多いです。
地質調査業界では地質調査を専業で行なっている企業は比較的少なく、他の事業と兼業している企業が多数を占めています。
次に、建設コンサルタント企業の一部門として地質調査を手掛けている企業があります。
具体的には、土木工事の設計業務などの前段階にあたる設計業務などを行う建設コンサルタントが地質調査を兼業しているケースが多いです。
建設コンサルタントは、土木設計など建設前の工程を主力業務としており、地質調査はその一環として行われます。
地質調査データをもとに、施工計画や設計と密接に連携しながらプロジェクト全体をサポートできる点が、建設コンサルタントと兼業している企業の強みです。
地質調査業界の将来性
地質調査業界の需要は高まっています。
近年の自然災害の影響を受けて、防災面での地質調査が注目されています。
2011年の東日本大震災や2024年の能登半島地震での液状化現象、2021年の熱海市の土砂災害などの事例を受けて、地盤の安全性評価や災害リスクの軽減が重要視されています。
これにより、地下水位が高く粒子が細かい地盤や、山間部の急傾斜地など、災害リスクの高い地域での地質調査が多く行われています。
また、建物や都市インフラの老朽化も地質調査業界の需要を押し上げています。
特に、道路や橋梁、ダムなどの社会基盤が築かれてから長期間が経過しているため、これらの施設の耐久性を評価し、必要な補修や改修を行うために地質調査が不可欠となっています。
今後も老朽化による修繕や立て直しは増えていくことが予想されるため、地質調査業界の需要は今後も拡大が見込まれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
地質調査業界は普段生活をしていても意識をすることが少ない業界かもしれませんが、建物やインフラの建設において重要な役割を担っていることが分かったのではないでしょうか。
地質調査業界は社会にとって必要不可欠な業界であるだけでなく、近年の自然災害や建物の老朽化による影響で、今後の業界の拡大が期待される将来性のある業界でもあります。
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