建築の骨格を創造する「構造設計」の仕事内容や転職のポイントをご紹介します

建築の骨格を創造する「構造設計」の仕事内容や転職のポイントをご紹介します

建築設計には大きく分けて、意匠設計、設備設計、構造設計の3つの分野があります。

意匠設計は建物のデザインや空間の使い方など、建物の全体的な形状や内外装のデザインを考えます。
設備設計は、建物内で快適に生活・利用できるよう、空調や電気、給排水などの設備を配置し、管理しやすいシステムを構築します。
そして、構造設計は建物が安全かつ安定して建っていられるように、建物の梁や柱などの構造体・躯体に相当する部分を設計します。

今回はその中でも構造設計についてご紹介します。

構造設計とは

構造設計とは、建築物や土木構造物が安全かつ長期間にわたり機能するように、材料や構造を設計する分野です。

建築物の重力や、地震、風などの外力に耐えるための構造や基礎を考案し、必要な強度や安定性を確保します。

建物の設計では、見た目やデザインに関わる意匠設計が注目されやすい一方で、構造設計は建物の安全性や信頼性を確保するという、建築において最も重要な役割を担っています。

構造設計があるからこそ、建物は重力や外力に耐え、利用者が安心して長期にわたり使用できる空間が実現するのです。

構造設計と意匠設計の関係

構造設計は意匠設計と密接に関わっています。
どれだけ斬新で大胆なデザインであっても、構造的に成立しなければ実現できないためです。

構造設計者は、施主や意匠設計者のアイデアを尊重しつつ、柱や壁の配置や強度設計に工夫を凝らし、可能な限り自由なデザインを実現できるよう努めています。

その一方で、安全性と安定性も確保しなければならず、現実の制約の中でバランスを取りながら設計を進めています。
こうして、デザイン性と安全性を両立させた建物が形づくられます。

さらに構造設計に踏み込んでいくと、構造の形態をまさに意匠としてデザインするということも考えられます。

例えば、伊東豊雄氏が設計した「せんだいメディアテーク」や、丹下健三氏が設計した「国立代々木競技場」などは、構造が建築の意匠の要素として表出した事例です。

このように一見堅苦しく見られがちな構造設計は、機能的合理性と意匠性の両方の要素が絡み合った、ロマンのある領域なのです。

構造設計職の仕事内容

さて、ここからは構造設計職の仕事内容を解説します。

仕事内容は、主に構造計画、構造計算、構造図作成、工事監理の4つに分けられます。

構造計画

構造計画は、建物の規模や用途に応じて最適な構造形式(鉄骨、鉄筋コンクリート、木造など)を決め、建物が安全かつコスト面でも成り立つような柱や梁の配置を検討する段階です。

建物のデザインや機能性を維持しながら、強度や安定性も確保できる構造を計画します。

構造計算

構造計算ソフトで地震や風圧、重力などが建物に与える影響をシミュレーションし、必要な強度や安全性を確認します。

日本は地震の影響が大きいため、建築基準法に沿って耐震性能を計算することが求められ、建物が外力に耐えられるかどうかを数値で検証します。

構造図作成

構造計算の結果を基に、設計内容を詳細に図面化します。

構造図には、柱や梁、基礎の位置、サイズ、使用する材料などが明確に記載されており、建設現場での施工が正確に行えるように指示を示します。
構造図は施工の指針としての役割を果たします。

工事監理

建設が始まると、構造設計者は現場を訪れて施工状況を確認します。

図面通りに正しく施工されているか、また予期せぬ問題が発生した際には現場スタッフと協力し、設計に合わせた調整を行います。
安全で信頼性の高い構造を確保するために、最後まで責任を持って関わります。

構造設計職の就職先

ここでは、構造設計職の就職先として、設計事務所とゼネコンについてご紹介します。

設計事務所

設計事務所は、建物のデザインや設計を専門に行う企業です。
構造設計職として設計事務所に就職した場合、建物の安全性や耐久性を確保するための構造設計を担い、建物のデザインやコンセプトを実現するために、意匠設計と連携して仕事を進めます。

また、設計事務所は設計の専門家であるため、ゼネコンなどに対するコンサルティングを行う事務所もあります。

設計事務所では設計業務そのもので利益を得るため、設計業務での効率性が重視されるという特徴があります。

構造設計専門の設計事務所

設計事務所の中には、構造設計に特化した事務所も存在します。

これらの事務所は、地震や台風などの災害リスクを考慮した耐震設計や、建物の補強設計など、より高度な構造設計の知識を有しています。

構造設計専門の事務所では、住宅や商業施設だけでなく、高層ビルや工場、公共インフラのような複雑な構造の設計に携わる機会が多く、専門的な知識と経験を深めやすい環境になっています。

構造設計専門の設計事務所は、他の設計事務所(アトリエ 系、組織設計系など)との協業を行うケースもあります。

唯一無二の、大胆な空間構成やファサード・外観デザインを施す場合には、あらゆる構造パターンやシミュレーションを行う必要があるため、専門の構造設計者を置き、意匠・デザインとの調整を図りながら、美しい構造設計を担います。

ゼネコン

ゼネコンは、ビルや商業施設、インフラ施設などの建設を手掛ける総合建設会社で、施工を中心とした事業を展開していますが、比較的規模の大きいゼネコンの場合、設計部門を自社に設けていることがあります。

構造設計職としてゼネコンに就職した場合、建物の設計や施工管理に関わり、安全性や耐久性を考慮した構造計画を行います。特に大型プロジェクトでは、地盤や環境の影響を考慮した構造設計が求められます。

ゼネコンは施工が事業の根幹であるため、効率的な施工を意識した設計が求められることが特徴です。そのため、発注者と直接関わる機会が少ないのが設計事務所と比較したときの特徴です。

また、設計が赤字になっても施工で挽回できるため、施工費の低減と施工時の問題回避を目的とした事前検討を行い、プロジェクト全体の利益を見据えた設計が求められます。

構造設計に関わる資格

ここでは、構造設計職に関わる資格をご紹介します。

二級建築士

二級建築士は、建築の基礎的な知識と技能を持つことの証明になり、比較的小規模な建物の設計や施工管理が可能です。
構造設計者としてのキャリアを目指す人にとって、この資格は第一歩となります。

二級建築士の資格を取得することで、住宅や低層建築の構造設計、工事監理に関わる仕事を行うことができ、構造設計士としてキャリアを積むきっかけになります。

受験資格を得るためには、建築関連の科目を修めて学校を卒業するか、7年以上の実務経験を積む必要があります。

一級建築士

一級建築士を取得することで、あらゆる規模の建築物の設計と施工管理が可能になり、大型商業施設や高層ビルのような構造的に複雑な建築物にも対応できます。
一級建築士は、より高度な設計スキルが求められ、構造設計業務における責任が増します。

一級建築士として登録するためには、試験に合格していることと、実務経験(建築学科を卒業した場合は2年以上)が必要条件となります。

構造設計一級建築士

構造設計一級建築士は、構造設計の専門性を深めた一級建築士の上位資格です。
この資格は、構造設計の高度な知識と実務経験を持つ建築士に与えられ、特に安全性が重視される構造設計において重要な役割を担います。

大規模なプロジェクトや、技術的に高度な建築物の設計に携わる場合、構造設計一級建築士の資格が求められることが多く、業界内でも専門性の高い立場として認知されています。

資格を取得するには、一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事することが必要となります。

JSCA建築構造士

JSCA建築構造士は、日本建築構造技術者協会(JSCA)が認定する資格で、構造設計に特化した資格です。

この資格を取得することで、耐震診断や耐震補強設計といった、建物の安全性向上を目的とした業務に携わる機会を増やすことができます。

受験資格として、構造設計一級建築士の取得者で、責任ある立場で2年以上の構造設計及び監理業務の実務経験があることが求められます。

構造設計職への転職のポイント

構造設計の実務経験

設計事務所、ゼネコンのどちらも、中途採用の場合3〜5年以上の実務経験が問われることが多いです。
特に、業界内の大手企業のほとんどが構造設計の実務経験を募集要項の条件に加えています。

また、大規模プロジェクトでの設計経験や、特殊な構造を設計した経験があると、さらにアピールポイントとなります。

構造設計に関する資格

構造設計職の転職では、資格の有無も重要なポイントです。

先ほどご紹介した資格の中でも、一級建築士以上の資格があると高い専門知識や技術力があることの証明となり、採用に有利になりやすいです。

企業によっては一級建築士が応募条件に含まれることもあるなど、資格を持っていると非常に有利に転職を進められます。

コミュニケーション能力

構造設計職は11、単に構造を設計するだけでなく、施主や意匠設計、施工担当者など様々な関係者と密に連携する必要がある職種です。
そのため、設計意図を的確に伝えるためのコミュニケーション能力が重要となります。

特に大規模プロジェクトでは、多くの関係者と協力して進めるため、調整能力が求められます。_
例えば、技術的な専門用語を噛み砕いてわかりやすく説明する力や、プロジェクト進行中に発生する問題に柔軟に対応できる姿勢があると、転職時に高く評価されるでしょう。

実務経験が問われることの多い構造設計職の転職ですが、会社によっては実務経験を問わない企業もあります。

そういった企業で採用されるためには、構造設計の知識や意欲はもちろんですが、こういったコミュニケーション能力などが求められてきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

建築設計には、意匠設計、設備設計、構造設計の3つの分野があり、構造設計は建物の安全性と安定性を確保する重要な役割を担っています。

構造設計職は、構造計画や計算、図面作成、工事監理といった業務を通して、耐震性能や外力に耐えられる強度を持つ建物を設計します。

就職先は設計事務所やゼネコンがあり、設計事務所では設計業務での効率性が、ゼネコンでは効率的な施工を意識した設計が求められるという特徴があります。

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構造設計職に転職するための条件は企業によって異なり、構造設計の実務経験が求められる場合や、資格の有無が問われる場合があるなど、ご自身に合った条件の企業を調べるには比較的労力がかかりやすいです。

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