照明デザイナーとはどんな仕事?仕事内容から転職に必要なスキル・資格まで紹介します

照明デザイナーとはどんな仕事?仕事内容から転職に必要なスキル・資格まで紹介します

照明は、空間の印象や使い心地を大きく左右する要素のひとつです。

明るさや色味の調整によって、同じ空間でもまったく異なる雰囲気をつくり出すことができるため、建築やインテリアの分野において照明計画は欠かせない工程となっています。

今回ご紹介する「照明デザイナー」は、住宅や商業施設、イベント会場など、さまざまな空間に合わせた照明を企画・設計し、空間全体の印象づくりを担う職種です。

照明機器そのものの選定だけでなく、光の角度や明るさ、色の組み合わせなども含めてトータルで計画を行うため、空間づくりに深く関わる役割を持っています。

本記事では、照明デザイナーの仕事内容や必要なスキル、就職先の選び方、キャリア形成の考え方についてご紹介します。
建設業界の中でも照明に関わる仕事に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

照明デザイナーとは

まずは、今回のテーマである照明デザイナーという職種についてご紹介します。

照明デザイナーとは、住宅や商業施設、公共空間、イベント会場など、さまざまな空間において光の演出を計画・設計する専門職です。
単に照明器具を選定するだけでなく、空間の用途やコンセプトに応じて光の色味や強さ、配置、点灯のタイミングまでを含めた総合的な照明計画を立案します。

また、屋内空間に限らず、建物の外観や街路、橋や広場といった屋外のライティングも担当することがあり、街の景観や安全性にも関与します。
さらに、コンサートや舞台演出、イルミネーションなどエンターテインメント分野でも照明デザイナーの活躍の場は広がっています。

このように、照明デザイナーの仕事は空間そのものの印象や使い心地を左右する重要な役割を持っており、建築やインテリアの計画段階から深く関わることも少なくありません。

照明デザイナーの仕事について

仕事の種類

ここからは照明デザイナーの仕事についてご紹介します。

照明デザイナーの仕事は上記でもご紹介したように多岐に渡りますが、大きく分けて以下の3つの分野に分類することができます。

プロダクトデザイン

照明機器そのものを設計・デザインする仕事です。

照明器具の形状や素材、光の広がり方、ユーザーの使いやすさなどを考慮しながら、照明器具としての機能性とデザイン性の両立を目指します。
照明メーカーなどに所属し、量産される製品の開発に関わるケースが多いのが特徴です。

照明空間デザイン

建築やインテリアと連携して空間全体の照明を計画・設計する仕事で、住宅やオフィス、店舗、ホテル、公共施設などを対象に、その場の機能や雰囲気に応じた照明計画を行います。

照明器具の選定だけでなく、光の当て方や角度、色温度、点灯のタイミングまでを設計し、空間の印象を演出するのがポイントです。

また、近年はLEDの普及や省エネ志向の高まりにより、より環境配慮型の照明計画も重視されています。

舞台演出照明

演劇やコンサート、イベントなどで使用される照明を企画・演出する仕事です。

出演者や演出家との綿密な打ち合わせのもと、演出意図や物語の流れに合わせて光の色や明るさ、照射のタイミングなどを細かく設計します。
場面の雰囲気などを照明で表現するため、表現力と即時対応力などのスキルが求められる分野です。

仕事の流れ

続いては、照明デザイナーの仕事内容をご紹介します。

照明デザイナーの仕事は、企画から設計、現場での監理まで多岐に渡り、上記のような仕事の種類によっても異なりますが、ここでは一般的なプロジェクトの流れを段階的にご紹介します。

ヒアリングとコンセプト立案

まずはクライアント(建築家、空間デザイナー、施設運営者など)との打ち合わせからプロジェクトは始まります。

ここでは、空間の用途や求める雰囲気、照明に対する要望などを丁寧にヒアリングし、プロジェクトの方向性を把握します。
その後、現場の立地や建築構造、内装のコンセプトなどを調査し、光の役割や演出方法を含めた照明のコンセプトを策定します。

提案資料の作成

コンセプトが定まったら、クライアント向けにPowerPointやPhotoshopを用いたプレゼン資料を作成します。

空間の完成イメージや照明効果を伝えるため、イメージパースや参考写真を活用しながら視覚的な表現を工夫します。

規模の大きいプロジェクトでは、これらの提案資料が50ページ以上に及ぶこともあります。

図面・設計業務

照明器具の配置や配線を具体化するために、AutoCADなどのソフトを用いて照明図面を作成します。
また、必要に応じて照明器具そのものの構造設計や仕様書、操作パネルのレイアウトなども担当します。

オーダーメイドの照明器具が必要な場合には、製造業者と連携し、試作や製品化プロセスの監修も行います。

現場での監理と調整

施工が始まると、デザイナー自身が現場に足を運び、進捗状況の確認や仕上がりの監修を行います。

図面通りに設置されているか、光の見え方に違和感がないかなどを実際の空間で確認し、必要に応じて微調整を行います。

その他の業務

上記でご紹介したプロジェクト業務以外にも、トレンドや最新技術の調査、新商品の企画や社内プレゼン資料の作成、展示会や広報活動など、日常的にさまざまな業務を担います。

そのため、照明デザイナーの仕事は単なる設計にとどまらず、空間づくりの初期段階から関わり、現場での仕上げや製品開発にまで携わる非常に幅広い役割を持っていると言えます。

転職時のポイント

最後に照明デザイナーに転職する場合のポイントについて、求められる資格やスキル、代表的な転職先の例についてご紹介します。

また、最後には照明デザイナーとして働く際のキャリアプランの例についてもご紹介するのでぜひ参考にしてみてください。

必要な資格について

照明デザイナーとして働くために、必須となる国家資格は存在しません。

実際の現場では、経験、専門知識などが重視されることが多く、未経験から照明デザインの仕事に携わるケースもあります。

ただし、照明に関する知識を体系的に学びたい方や、将来的に専門性を高めてキャリアアップを目指したい方にとっては、関連する民間資格を取得するとキャリアアップの際に役立ちます。

ここでは、代表的な資格として「照明コンサルタント」と「照明士」の2つをご紹介します。

照明コンサルタント

「照明コンサルタント」は、一般社団法人照明学会が認定する民間資格で、住宅、店舗、事務所など幅広い空間において、適切な照明計画や照明提案を行うための知識とスキルを身につけられるのが特徴です。

基本的には通信教育で学び、指定されたカリキュラムを修了すれば資格が与えられます。

照明プランの立て方やクライアントへの提案力を養う内容となっており、初心者でもチャレンジしやすい点が魅力です。
なお、資格は5年ごとの更新が必要となります。

照明士

「照明士」は、照明コンサルタントの上位に位置付けられる資格で、より高度な専門知識や技術を身につけたい方、照明設計の実務経験を積んだ方に向けた内容となっています。

この資格を取得することで、オフィスや店舗、住宅などの照明環境に対して、より専門的なコンサルティングや設計提案が行えるようになり、照明機器の開発や照明環境の新たな設計にも携われるなどキャリアの選択肢を広げることができます。

必要なスキルについて

続いて、照明デザイナーに転職する際に必要なスキルについてですが、照明デザイナーとして働くために、絶対に必要とされるスキルはありません。
実際には、未経験からアシスタントデザイナーとしてスタートし、働きながら知識や技術を身につけていくケースも多く見られます。

ただし、未経験可の求人もある一方で、経験やスキルの有無によって年収や採用後のポジションに差が出ることも事実です。
転職活動を有利に進めるためには、以下のようなスキルや経験があると評価されやすくなります。

デザインや建築関連の実務経験

建築照明やインテリアデザイン、建築設計など、空間づくりに関する業務経験は高く評価されます。
また、舞台演出やプロダクトデザイン、照明器具の製作に関わった経験も、照明デザインとの親和性が高いため、採用の際に有利になることがあります。

使用ソフトウェアのスキル

照明デザインの現場では、各種ソフトウェアを用いた資料作成や図面作成が日常的に行われます。中でも以下のツールが使用できると強みになります。

AutoCAD:照明器具の配置やレイアウトを行う図面作成に必須

Photoshop / Illustrator:イメージパースの作成やプレゼン資料の作成に活用

PowerPoint / Word / Excel:提案書や報告書などの資料作成に使用

DIALux evo:照明の照度シミュレーションなどに使われる専用ソフト

その他(コミュニケーション力・語学力)

これらのスキルは照明デザイナーに限らず、多くの仕事に共通して求められるものですが、プロジェクトの進行には、社内外の関係者と連携するための調整力やコミュニケーション力も重要です。

また、英語や中国語といった語学スキルは、グローバル案件や多国籍のクライアントと関わる際に役立つことがあります。

就職先の例

では、照明デザイナーとして就職する場合どのような業界や企業で働くことができるのでしょうか。

ここでは照明デザイナーとしての転職先の例をいくつかご紹介します。

照明器具メーカー・プロダクト系企業

照明器具そのものの設計や開発に関わりたい人は、家電メーカーや照明器具専門メーカーが主な就職先になります。

このような業界に就職した場合、プロダクトデザインの知識や工業製品に関するスキルが求められ、照明器具の構造設計や素材選定、試作の監修などを行うことがあります。

建築・インテリア系の企業

住宅や商業施設、ホテル、オフィス空間などに携わりたい場合は、建築設計事務所やインテリアデザイン会社、住宅メーカーなどが選択肢となります。

これらの企業では、建築士やインテリアデザイナーと連携しながら照明計画を立てるケースも多く、空間全体の印象づくりに関与できる可能性が大きいです。

照明デザイン事務所・施工会社

照明演出に特化したデザイン事務所や、照明計画から施工までを一貫して担う照明施工会社では、より専門的な業務に携わることができます。

このような企業ではファサード照明、ランドスケープ照明、商業施設の照明コントロール設計など、多彩なプロジェクトに関わる機会があります。

舞台・映像系制作会社

舞台演出やイベント、映像作品で照明を扱いたい場合は、舞台制作会社や映像関連の企業での就職が選択肢となります。

この分野では、演出意図を照明で具現化する能力が求められ、スケジュールに応じた現場対応力も重視されます。

その他の就職先

市町村の環境デザインを手がける会社や、公共施設の計画を担う行政機関で照明デザインに携わることもあります。

また、照明販売店や工務店などで、営業とデザインを兼ねるポジションで働くケースや、インテリアデザイナーや建築士との兼任が前提となる求人もあります。

キャリアプランの例

照明デザイナーとしてのキャリアは、一つの職場で専門性を高めていく道だけでなく、スキルや経験を積んだ上で転職・独立といった選択肢を取ることも可能です。

まず、未経験から照明デザインの世界に入る場合は、照明デザイン事務所や照明器具メーカーでアシスタントとして経験を積むケースが一般的です。現場での実務経験を通じて知識や技術を学びながら、照明コンサルタントや照明士などの資格取得を目指すことで、担当できる業務の幅が広がっていきます。

中堅層になると、プロジェクトの主担当としてコンセプト立案から設計、現場監理まで一貫して担当するポジションにステップアップすることが多くなります。この段階で建築士やインテリアコーディネーターなどの資格を取得すれば、空間全体を統合的にデザインする力が身につき、より大規模で複雑な案件を任される可能性も高まります。

さらに、将来的に独立を目指す場合は、一定期間企業で経験を積み、人脈や実績、資金などを蓄えたうえでフリーランスとして活動を始めるのが一般的です。フリーランスとしての働き方には、クライアントとの直接契約や、建築・デザイン事務所からの外注依頼を受けるケースなどがあり、自らのセンスや専門性を最大限に発揮できる魅力があります。

ただし、独立には自己管理能力や経営知識、営業力なども求められるため、しっかりとした準備と計画が必要です。

このように、照明デザイナーとしてのキャリアは多様であり、専門性を磨きながら自分に合った働き方を選ぶことができます。どのようなキャリアを描きたいかを意識しながら、経験とスキルを積み重ねていくことが重要です。

まとめ

照明デザイナーは、単に明るさを調整する職業ではなく、空間の印象や居心地を左右する「光の設計者」です。住宅や商業施設、舞台など、活躍の場は多岐にわたります。プロジェクトでは、クライアントとの打ち合わせからコンセプト立案、図面作成、現場監理まで一貫して関わり、建築やインテリアの仕上がりを大きく左右します。

特別な国家資格は不要ですが、照明コンサルタントや照明士などの資格取得は専門性を高める有効な手段です。経験を積むことで、企業での設計職から独立・フリーランスへとキャリアを広げることも可能です。光を通して空間を創り出すやりがいを感じたい方にとって、照明デザイナーは魅力的な選択肢といえるでしょう。

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