【新社会人向け】建設業界でキャリアを築くために重要なマインドとは?

建設業界に入ったあなたへ ー今こそ「キャリアの土台」を考えよう
この記事を開いた方は、社会人として「企業」という新しい環境に入り、やる気に満ち溢れている方もいれば、今後の社会人生活に不安や期待が入り混じっている方もいらっしゃると思います。
特にモノづくりの産業である建設業界は、これまでに学んできた建築・土木の知見や取り組みを活かし、リアルな現場に入り込んでいくことになります。
ご存知のとおり建設業界は、企画、調査、設計、施工というように、さまざまなフェーズごとに、複数の業界や職種が連携をしながら、一つのプロジェクトを作り上げていく業界です。これからあなた自身もそのなかで役割を担いながら、キャリアを歩んで行くことになります。
「モノづくり」の業界だからこそ、個々人の専門性や知識・経験が非常に重要となり、ご自身が活躍していくためにも、確かな実務力を身につけていくことが重要となるでしょう。
一方で、目の前の仕事だけでなく、将来を見据えたキャリアを思考しながら、日々の業務を励むのと、そうで無いのとでは、中長期的な時間軸のなかで、大きな差が出てきます。
自分の立ち位置や強みを意識しておくことが、建設業界においてうまくキャリア形成をするためのカギになります。
今回は、建設業界における新入社員の方々限定で、あなたに合った今後のキャリアを的確に築いていくために、中長期で持つべきマインドをご紹介します。
キャリア形成とは
まずはキャリア形成とは何かを押さえておきましょう。
キャリア形成とは「ご自身の強み・価値観・達成したい目標に基づいて、中長期的な視点で知識・経験、成果、人間関係を積み重ねていくプロセス」のことです。
特に建設業界では、複数の関連法規などの知識、求められる品質・専門性の高さに加え、様々な職種・役割との連携が必須となります。
つまり、ご自身がどのような知識・経験を身につけ、どのような環境で、どのような役割を担い、目標達成や成果を出していきたいかを考えることが、キャリア形成を考えるということです。

キャリア形成の主要な4要素 —資格、プロジェクト経験、関わり方、組織内・現場内での立場
ここからは、具体的にキャリア形成において重要な考え方について解説していきます。
まずは、自分のキャリアを構成する要素を意識するところから始めましょう。
基本的には「知識」と「経験」の2つの枠組みとなりますが、少し噛み砕くと以下の4つの要素に分かれます。
①資格
②プロジェクトの内容
③職種としての関わり方
④組織内・現場内でのポジション
これら4つの要素をどう育てるかで、将来の選択肢の広がりに違いが出てきます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
①資格
一つ目の要素は資格(知識)が挙げられます。建設業界では、一級・二級建築士や一級・二級施工管理技士など、国家資格によって定められた“独占業務”が数多く存在します。これらの業務は、資格を持つ者しか実施できないものであり、一定の専門性と社会的信頼を証明するものでもあります。
つまり、キャリアを築くうえで資格取得は一つの大きなマイルストーンであり、自分の専門性を高め、携われる業務の幅を広げる鍵となります。長期的な視点で、自分がどの専門領域を深めたいのか、どの資格を目指すのかを意識することが、建設業界におけるキャリア形成に繋がります。
②プロジェクトの内容
建設業界では、ダムやトンネル、道路といった公共インフラ、学校や病院といった公共公益施設、マンションや戸建て住宅といった住宅施設、オフィスや商業施設といった民間施設というように、多岐にわたる建設プロジェクトがあります。
近年は、特に防災面や環境面などにおいて、各分野ごとに要求される品質水準も高まりを見せており、建物においては大規模再開発事業に代表されるように、住宅・商業・オフィス・宿泊施設・公共施設といった複数用途の複合化などの傾向が強まっています。
つまり、企業自体も各領域の専門性の深度化、掛け合わせが求められる時代のため、個々人がどういったプロジェクトに関わっている(関わってきた)のかが、キャリアにおいても重要視される傾向にあります。
③職種としての関わり方
続いては職種です。
②プロジェクトの内容に付随しますが、職種としての関わり方によっても、同じプロジェクトのなかでもご自身に蓄積される知識や経験は異なります。
例えば、マンションやビルの建設にあたって、設計士は建築基準法や認定基準を満たした設計を、基本計画、基本設計、実施設計というように、より詳細に進んでいきます。
一方、施工管理職は、設計者が引かれた図面をベース(施工図)に現場レベルでどう施工を進めていくか、細部の収まりをどうするか、職人と連携をして進めていきます。
同じプロジェクトでも必要となる知識や経験がƒ異なり、即ち身につく知識・経験も異なってきます。
④組織内・現場内でのポジション
最後は、組織内・現場内でのポジションです。同じ業界・職種の場合でも、組織内でのポジション(役職・役割)に応じて、得られる知識・経験が異なります。
建築系の施工管理職を例に取ると、例えば鉄筋コンクリート造(RC造)のマンション建設における躯体工事の場合では、同じ施工管理職でも鉄筋担当、型枠担当、コンクリート担当といった役割があるほか、それらを統括するマネージャー的な施工管理職や、現場の意思決定を総括する現場所長といった役割に分かれます。
次に以上の4要素のどこに比重をおき、または掛け合わせをしていくかについて、次章より解説をしていきます。

専門性を極めるか、領域を広げるか —キャリアの2つの方向性
キャリア形成における考え方には2つの方向性があります。
専門分野を深掘りする道と、複数の職種や領域を横断して広げていく道があります。どちらにも価値があり、自分の性格や目標に合わせて選ぶことが、軸のあるキャリア形成につながります。もちろん両立もでき、キャリアを歩む中でマイナーチェンジをしていくこともできます。
専門性を極めるキャリア
専門性を極めるキャリアとは、特定の領域において、他の関係者よりも高次元な知識や経験を有するプロフェッショナルです。「この業務なら〇〇さんに任せれば大丈夫だ」という周囲からのお墨付きが得られている状態をイメージしてください。
同じ業務でも難易度が高い仕事は、高いレベルの知識・経験が求められますが、それを担える人材に至るには、同じ職種を長く続けていくことが必要となってきます。
そこまでに至ると、組織からの育成が必要ないため、組織に依存せずに、建設業界のさまざまな環境で力を発揮することができるようになります。
領域を広げるキャリア
領域を広げるキャリアとは、複数の領域での主要な知識や経験を身につけそれらを掛け合わせることで自身の裁量を高めていくキャリアを指します。
特定の領域において主要な知識や経験を身につけた段階で、部門異動や転職などによって関連する別の領域に移り、そこでも同様に主要な知識や経験を経て、それらを掛け合わせることで、他にはかえが効かない人材となるイメージです。
例えば、施工管理職から設計職に転換をすることで、「現場がわかっている設計者」となることができます。
現時点でどちらかを選択する必要はありません。ご自身がこれからさまざまなプロジェクトや業務、環境に触れるなかで、先述した「4要素」を変数としながら、徐々に決めていけばよいでしょう。
「確かな現場経験」は他職種・他業界にも活用可能である
建設業界および建設プロジェクトは、調査、設計、施工、など建設の各工程は一見バラバラでも、実際には密接につながっています。設計は設計だけで完結しているのではなく、手戻りのない図面を引くためにも施工の知識を求めています。また、事業主である施主もより良い商品企画やコストコントロールのために、設計、施工の知識を求めているのです。
例えば、建設工事全般の知識を有する施工管理職は、精度の高い実施設計業務に活かすことができます。また、ゼネコンやCM会社(コンストラクションマネジメント)の積算職の経験は、デベロッパーのコスト管理にも応用可能です。専門性は職種や業界を越えて活きるということです。
他の業界との接点のある業務を率先して担い確かな知識・経験を身につけることで、キャリア形成に活かすことができるでしょう。
複数の「知識」と「経験」の掛け算が、キャリアの選択肢を広げる
多くの人にとって、キャリア形成の戦略を考える場合には、たった一つの強みより、異なる知識や経験を掛け合わせた強みが武器になります。
たとえば、設計力×施工の理解、特定の専門性×マネジメント力など、複数要素の掛け合わせが市場価値の高い人材を生み出します。
例えば、設計と施工の両方を理解している人は、公共事業などの建設プロジェクト全般を支援する建設コンサルタントにおいて、広範囲な領域をカバーできるようになり、施主や現場などから高く評価されるでしょう。

「数年後の理想像」から逆算する —バックキャスト思考を身につけよう
新社会人にはまずは仕事を覚えることに集中する期間が必ず必要です。
そんななかでも、中長期でのキャリアも同時に考えることで、将来と現在に意味ある繋がりを見出すことができるようになり、結果、目の前の業務により注力できるようになるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、「バックキャスト思考」です。これは将来のありたい姿から逆算して今後のやるべきことを定める思考法です。
半年から1年ごとに、「数年後に何を達成したいか、どのようなプロジェクトにどのようなポジションで貢献したいか」を描くようにすると良いでしょう。そこから逆算して、今身につけるべき知識・経験を認識し、キャリアの4要素をより具体化していくことで、理想のキャリアを現実に近づけます。
例えば、施工管理職なら、5年後にここまでの実務力を身に付け、同時に建築士の資格を取る。そうすれば、より自分が手がけたいプロジェクトを担える人材になれると同時に、設計会社や建設コンサルといった別業界への転職という選択肢も見えてくる・・・。そのためにこの半年〜1年で担当業務を1人でこなせるようになることと、建築士の勉強を週に10時間確保しよう・・・。といったようなイメージです。
最後に —まずは確かな実務力を身につけよう
ここまで建設業界でキャリアを築くために重要なマインドをご紹介してきました。
キャリアは1日にして成らずなので、中長期で軌道修正をしながら考えていくと良いでしょう。
しかし、マインドだけではキャリアは形成することはできません。何より大事になるのは、目の前の業務を着実にこなし、特定の領域での確かな実務力・強みを身につけていくことを継続することです
俯瞰した視点を持ちながら、現在の担当業務の意味づけを自身でしながら、将来に向けて着実な実務力を身につけていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
建設業界は、職種ごとにその専門性の高さや独占業務の有無などによって、キャリアが固定化される傾向があります。
実際には様々な環境で活躍できる知識や経験を身につけていても、キャリア形成の思考がなくては知らず知らずのうちにキャリアの選択肢を狭めていくことになってしまいます。
まずは狭い領域での実務力を高めながら、バックキャスト思考を持ちながら、中長期でのロードマップを描いていきましょう。
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