世界中の社会インフラを支える専門家 「建設コンサルタント」の海外部門についてご紹介します

建築土木業界で働かれている皆さんの中にも、海外のプロジェクトに興味がある、将来的に関わりたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
今回は、建築土木業界内で海外勤務が比較的多い建設コンサルタント業界について、海外部門の特徴を中心にご紹介します。
建設コンサルタントとは
建設コンサルタントとは、建設プロジェクトにおいて発注者や事業主体に対し、専門的な助言や技術的なサポートを提供する専門家です。彼らの役割は、建設工事そのものを行うのではなく、プロジェクトの企画から設計、調査、計画といった前段階の業務を担い、発注者の意図を具現化する役割を果たします。
建築、土木工学、都市計画といった高度な専門知識と豊富な経験を活用し、発注者にとって最適な提案をします。また、プロジェクトが円滑に進行するよう、予算管理やスケジュール調整、技術的な問題解決にも対応します。
一方で、実際の施工管理についてはゼネコンが担うことが多く、建設コンサルタントはプロジェクト全体を俯瞰しながら、施工の前段階に注力します。
建設コンサルタントが関わるプロジェクトは主に土木工事が中心で、道路、橋梁、鉄道、港湾、ダム、下水といった社会インフラの整備が主要な業務領域です。
建設コンサルタント業界について詳しく知りたい方は「土木建設の専門家 建設コンサルタント業界についてご紹介します」をご覧ください。
建設コンサルタントの海外での役割
建設コンサルタントの海外部門では、発展途上国や新興国を中心にインフラ整備プロジェクトに携わる機会が多くあります。
道路、橋梁、水道、港湾、空港などの社会基盤を整えることは、地域経済の発展や住民の生活向上に直結する重要な役割を担っています。
特に、ODA(政府開発援助)プロジェクトや国際機関が主導する事業では、日本の技術力やノウハウを活かして、プロジェクト計画や設計、施工管理、現地技術者の教育などを総合的にサポートします。
海外と日本の建設コンサルタントの仕事内容の違い
建設コンサルタントの業務は、日本と海外で基本的な枠組みは共通していますが、取り扱う領域や役割に違いがあります。
取り扱う領域の違い
海外、特に発展途上国では、病院や学校、下水処理施設、道路など、生活に必要な基礎的な社会インフラを新たに整備する案件が多くあります。
これらの国々では、まだ社会基盤が十分に整備されていないことが多く、地域の発展や人々の生活向上を目指して、一から社会インフラを構築する必要があります。
一方で、日本ではこうした基本的な社会インフラはすでに整備されており、現在は老朽化したインフラの改修や高度化、防災対策などが主な課題となっています。
このように、建設する対象や目的が異なります。
関わる工程の違い
海外の建設コンサルタントは、日本に比べてプロジェクトの初期段階から深く関与することが多い点も特徴的です。
日本の案件では、既存の計画や基準がある程度整備された状態でプロジェクトが進行することが一般的ですが、海外では計画が全くない状態からスタートすることも珍しくありません。
この場合、建設コンサルタントは、まず地域全体の発展方針を定めるマスタープランの策定から担当し、具体的な計画立案や設計へと進んでいきます。
このように、より広範な視点と柔軟な対応力が求められる点が、海外での業務の特徴といえるでしょう。

海外部門の建設コンサルタントのプロジェクト
海外部門の建設コンサルタントが手掛けるプロジェクトは、主にJICA(国際協力機構)が展開するODA(政府開発援助)によるものが中心です。これらのプロジェクトは、国際社会における日本の貢献を目的とし、無償資金協力、有償資金協力、技術協力という3つの枠組みで進められています。
無償資金協力
無償資金協力は、対象国に対して日本が無償で資金を提供し、病院や学校、下水処理施設などの基礎的な社会インフラを整備するプロジェクトです。建設コンサルタントは、プロジェクトの初期段階である計画や設計のほか、費用対効果の分析や環境影響評価にも携わります。
有償資金協力
有償資金協力は、対象国に対して低利子で資金を貸与し、大規模なインフラ整備を支援する枠組みです。道路や港湾、鉄道などのプロジェクトが主で、建設コンサルタントは調査から計画、設計、さらには事業運営の効率化提案まで広範な業務を担います。
技術協力
技術協力では、対象国の技術者に対し、日本の専門技術やノウハウを伝えることを目的とします。建設コンサルタントは、現地の人材育成や技術移転、施設の維持管理に必要な指導を行い、持続可能な発展に貢献します。
海外部門の建設コンサルタントの魅力
発展途上国の経済成長に直接貢献できる
海外部門の建設コンサルタントの最大の魅力は、発展途上国の成長に直接貢献できる点です。道路や橋梁、上下水道といった基礎的な社会インフラを整備することは、地域の経済発展や人々の生活環境の改善に直結します。
例えば、新たな道路の建設によって交通がスムーズになり、物流が活性化することで地域経済が飛躍的に成長することもあります。
こうした成果を目の当たりにできることは、大きなやりがいとなるでしょう。
また、プロジェクトを通じて現地の人々の生活がより豊かになる瞬間を共有できることも、この仕事ならではの魅力です。
多文化環境で経験が積める
もう一つの大きな魅力は、多文化環境で働く経験を積める点です。
海外では、さまざまな文化や背景を持つ人々と連携し、不確実性の高い状況下でプロジェクトを進めることが求められます。
このような環境で培われるマネジメント能力や調整力は、海外プロジェクトに留まらず、他の業務でも大いに役立つスキルです。
限られた情報やリソースの中で最適な判断を下し、柔軟に対応する力は、国内外を問わず様々な分野で応用可能な重要な経験となります。

海外部門の建設コンサルタントに必要な力
海外部門で活躍する建設コンサルタントには、様々なスキルが求められます。
建設コンサルタントとして働く以上、土木や建築分野の知識や設計のスキルが求められるのはもちろんですが、海外部門で働くうえで特に重要なのがプロジェクトマネジメント力と言語力です。
プロジェクトマネジメント力
まず、プロジェクトマネジメント力は不可欠です。
海外プロジェクトでは、現地の行政機関やクライアント、施工会社、地域住民など、関係者が多岐にわたるため、全体の調整力が求められます。
スケジュール管理、予算管理、リスク管理を的確に行いながら、全てのステークホルダーと円滑に連携する力が重要です。
また、途上国では、計画が整っていない段階からスタートする場合も多く、プロジェクト全体の方向性を決め、効率的に進行させる能力が必要です。
このように、プロジェクトを成功に導く包括的な視野と実行力が欠かせません。
言語力
海外部門の建設コンサルタントとして働くうえで、言語力も不可欠となります。
海外では、プロジェクトの共通言語として英語が使用されることが一般的です。
専門的な技術用語を使った正確なコミュニケーションが必要になるだけでなく、契約書や報告書といった文書の作成や読み解きにも対応できる言語力が求められます。
また、現地の言語を習得することで、クライアントや現地スタッフとの信頼関係を築きやすくなり、プロジェクトをスムーズに進行させることができます。
プロジェクトの全体を見渡しながら、現場の細部に対応できるプロジェクトマネジメント力と、的確なコミュニケーションを支える言語力は、海外で活躍する建設コンサルタントにとって最も重要な力といえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
海外部門の建設コンサルタントは、発展途上国を中心に社会インフラの整備を通じて地域の発展に貢献するやりがいのある仕事です。
多文化環境でのプロジェクトマネジメントや、現地の課題解決を図る柔軟な対応力が求められる一方で、それらを乗り越えることで国内外問わず多岐にわたる業務で活かせるスキルを身につけることができます。
特に、ODAプロジェクトを通じて日本の技術力やノウハウを世界に広め、地域住民の生活向上に貢献する役割は、大きな責任と達成感を伴います。
新たな挑戦やスキルアップを目指す建築土木業界の皆さんにとって、海外部門の建設コンサルタントは魅力的なキャリアパスのひとつといえるのではないでしょうか。
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