正確な建設工事に欠かせない職種 測量士についてご紹介します
トンネルや橋梁の土木工事や、土地取引や建設を行う前に「測量」と呼ばれる、土地や建物を正確に測定する作業を行う必要があります。
測量は測量士、測量士補の資格を持った方だけが行える独占業務であり、高い技術力が求められる仕事です。
今回は、測量士の概要から、仕事内容、勤務先、求められるスキルについてご紹介します。
測量とは
測量とは、土地や建物、地形などの位置や形状を正確に測定し、そのデータを地図や設計図に反映させる技術です。
位置や形状の測定と聞いても難しいイメージを持たれないかもしれませんが、土地や建物は単純な直線や平面で構成されていないため、正確なデータを得るためには精密な測量機器と測量技術が求められます。
測量の目的は、土木工事、建築設計、インフラ整備などに必要な地理情報を提供することで、これにより正確な施工や管理が可能になります。
特に、測量データの誤りは、橋梁やトンネルなどのインフラ工事において重大事故を引き起こすリスクがあり、安全な社会基盤の構築には欠かせない重要な技術とされています。
また、測量のもう一つの重要な目的は、境界値の確定です。測量によって土地の境界を正確に定めることは、土地取引や開発におけるトラブルを防ぐために不可欠です。
誤った境界線の設定は、法的な紛争や開発計画の遅れを引き起こす可能性があるため、測量士は精密な技術で土地の境界を正確に測定し、法的に有効な境界線を確定します。
測量士の仕事内容
測量士の仕事内容は、外業と内業に大きく分かれます。外業は主に現場で行う作業、内業はオフィスで行う作業です。それぞれについてご説明します。
外業(現場作業)
外業は、現場に出向いて測量をする業務のことをいいます。
2人〜5人のチームで現場に出向き、トータルステーションと呼ばれる三本脚で立つ測定器を用いて測量を行います。
外業は天候などの自然環境に影響を受けやすく、計画通りに進まない場合もあるため柔軟な対応能力が求められます。
内業(オフィス内作業)
外業以外のオフィスで行う業務を内業といいます。
外業の事前準備で、機材の調達、測量計画などを行い、外業後の作業で、CADソフトによる図面作成や、測量データの分析などを行います。
他にも、顧客との打ち合わせや予算管理など、外業以外の様々な業務を行います。
測量の詳しい流れ
ここでは、より測量業務のイメージが持てるように、橋梁工事を例に挙げて測量の流れをご説明します。
計画測量
まず、プロジェクト全体の安全性を確認するために、計画測量として現場の地形や地盤、既存のインフラなどを調査します。
この段階では、河川や谷などの地形の高低差や斜面の角度、河川の幅を把握します。
また、橋の基礎部分の設計に必要な地盤の強度や土質の調査も同時に行われます。このデータは、橋の設計に反映され、最適な施工方法を決定するために重要です。
さらに、現場周辺に既存する道路や電線などのインフラや、土地の所有権や境界の確認も行い、工事が問題なく進められるかを確認します。この段階の測量は、プロジェクト全体の安全性と正確さを確保するための基礎となります。
設計段階での測量
設計段階では、橋の正確な位置や高さを決定するための詳細な測量が行われます。
この段階では、橋梁の両端や中間地点に基準点を設け、橋全体の座標を決定します。
基準点の設置によって、橋の中心線や高さが精密に定まるため、橋の構造が設計通りに進められるかどうかが決まります。
設計段階での測量は、ミリ単位の精度で施工が行われるための重要な指針を提供し、橋梁の全体設計に影響を与える非常に重要なプロセスです。
施行中の測量
橋梁工事が開始されると、工事の進捗に伴い、施工中の測量が定期的に実施されます。
特に、基礎となる杭を打ち込む際には、その位置や角度を正確に決定する必要があり、ここでの測量は工事の精度に直接関わります。
支柱や橋脚の位置や高さも施工中に何度も確認され、設計通りの位置に設置されているかを測定します。
施工中の測量は、工事の進行に合わせて常に行われ、現場の精度と安全性を確保します。
完成時の確認測量
橋梁が完成した後には、完成確認測量を行い、実際に設計通りに施工が進められたかを最終確認します。
この段階では、橋の長さ、幅、高さが設計に基づいて正確に施工されているか、沈下や傾きが発生していないかを確認することも重要です。
この確認測量によって、橋梁が安全に利用できるかどうかが判断されます。
測量士の勤務先
測量士の勤務先として、測量事務所、建設コンサルティング会社、公務員があります。
測量事務所
測量士の最も一般的な就職先として、測量事務所があります。
測量事務所は、民間企業で土地や建物、地形に関する測量サービスを提供する専門の企業です。
他業界と比べて圧倒的な大手企業がなく、それぞれの測量事務所が土地に根付き、安定した経営をしているといった特徴があります。
建設コンサルティング会社
建設コンサルティング会社は、土木工事の企画、調査、設計、施工管理、維持管理などを発注者に代わって行う役割を担います。主に公共事業のコンサルティングおよび実務を行政から請け負うことが多いです。
工事の調査段階として測量は必須な工程であるため、測量士が求められています。
建設コンサル会社によって、測量業務を内製化している会社もあり、内製化しているでは測量士を採用しているケースが多いでしょう。
一方、内製化せずに先述した測量事務所に外注しているケースもあります。
コンサルティング業界は比較的給料が高い傾向にありますが、技術の知識に加えてコミュニケーション能力などゼネラリストとしての面も求められることや、業務量が多くハードなケースが多いなど、人によって向き不向きが分かれやすい業界と言えます。
建設コンサルタントの概要について知りたい方は、まずは「土木建設の専門家 建設コンサルタント業界についてご紹介します」の記事を参考にしてみてください。
公務員
公務員の場合、測量を行うのではなく、公共事業の測量を発注する側を担当します。
そのため、現場に出向いて測量を行うことはせず、測量の発注や、発注先との打ち合わせを行います。
実際に測量業務に携われないことをマイナスに感じる方もいらっしゃるかと思いますが、公務員であるため非常に安定しており、福利厚生などの労働条件も整っているといったメリットがあります。
測量業界で求められるスキル・資格
測量士
測量士は、国家資格であり、土地や建物の測量業務を行う専門家です。
測量士には高い技術力が求められます。
具体的には、トータルステーションやGPS、レベルなどの測量機器を使いこなす能力が必要です。また、データの解析やGIS(地理情報システム)を利用した情報処理のスキルも重要です。
さらに、法律や規制に関する知識も求められ、特に土地の境界確定に関連する法的要件を理解していることが必要です。
合格率が10%ほどと低く、非常に難易度が高い資格となっています。
測量業務は測量士または後述する測量士補のいずれかの有資格者でしか行うことができない独占業務となっています。
また、測量業者は営業所ごとに測量士を1人以上置くことが法律で定められており、難易度が高い分重要度も高く、一度取得すると食いっぱぐれない資格であると言えます。
測量士補
測量士補は、測量士の補助を行う役割であり、測量業務を円滑に進めるために必要な資格です。
測量士補に求められるスキルは、測量士に比べてやや基礎的なものですが、依然として専門知識が必要です。具体的には、測量機器の取り扱いや、基本的な測量技術を習得することが求められます。
測量士が測量計画から実施まであらゆる業務を行うのに対して、測量士補は基本的に、測量士が作成した実務計画に則り、実際の測量業務の実施を担います。
合格率は30%ほどと、測量士と比べると難易度が低い国家資格です。
CADスキル
現場で収集したデータをもとに、正確な図面や設計図を作成する必要があります。このプロセスにおいて、CADソフトの活用が不可欠です。
CADを使うことで、土地や建物の形状、境界線、地形の特性を視覚的に表現でき、顧客とのコミュニケーションを円滑にすることができます。
最新の測量機器・技術をキャッチアップする力
様々な技術の進歩によって、測量で使用する機器・技術も高度化してきています。
ドローン、3Dレーザースキャナー、GPSなどを用いた測量や、地理情報システム(GIS)を用いた測量データの可視化など、様々な機器を扱うことが求められています。
今後も技術の進歩に伴い新たな機器が登場すると考えられるため、その都度学習し、柔軟に取り入れられるスキルが重要となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
測量士の概要から、仕事内容、勤務先、求められるスキルについてご紹介しました。
測量は測量士、測量士補の資格を持った方だけが行える独占業務であり、それぞれの土地に根付いた測量事務所が多くあるため、一度資格と技術を習得すると食いっぱぐれない仕事です。
測量士は、道路、トンネル、橋梁の建設など、公共事業に携わることも多くあります。自身が携わったものが完成後に多くの人に利用されることにやりがいを感じられる方も多くいるのではないでしょうか。
ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を
先ほどご説明した通り、測量士として一人前に働くためには、測量士補、測量士の資格を取得し、様々な測量機器や技術をキャッチアップする必要があります。
また、測量の外業では基本的にチームで行動するため、協調性やコミュニケーション能力といった力も求められます。
ビルドアップでは、測量業界内でのキャリアアップや、他業界から測量業界への転職などに詳しい、土木建築業界に特化したエージェントが多数在籍しております。
測量業界でのキャリアアップ・転職を少しでも有利に進めたい方は、こちらからご登録ください。