技術系で最高位の国家資格といわれる「技術士」についてご紹介します
建築業界で働かれている方の中には、技術士という名前だけ聞いたことがある方や、知ってはいるが資格取得にどんなメリットがあるか知らないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、技術士という資格の概要から、技術士を活かせる業界、取得するまでの流れ、取得する意義をご説明します。
建築業界でのキャリアアップや転職活動を検討されている方は、ぜひこの記事を読んで技術士資格がご自身のキャリアに有用であるか確認してみてください。
技術士とは
技術士は、日本における技術者向けの代表的な国家資格の一つで、科学技術分野における高度な専門知識と技術、さらには技術者としての高い倫理を有することを示す資格です。
つまり、技術士を取得するには専門性の高さに加え、公共の安全性や、持続可能な社会の実現、法令の遵守といった内容への理解が必要であるということです。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)として、「専門的学識」「問題解決」「マネジメント」「評価」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「技術者倫理」が挙げられ、これら各項目において技術士として備えるべき最低限の資質能力が定められています。
この資格は、特定の技術分野における専門性と、複雑な技術的課題に対処するための能力の証明として機能し、様々な業界で計画、研究、設計、分析、試験などの業務を行う技術者のキャリアにおいて重要な役割を果たします。
技術士の技術部門
技術士は、建設、機械、電気電子、化学、情報工学、農業、林業、環境工学など多様な部門に分かれており、自身の志向や専門性に応じて部門を選択し、試験に合格することによって取得が可能です。
こうした部門別の資格システムにより、それぞれの技術分野での専門知識と能力を社会に対して示しやすくなります。専門性に応じて分かれた21の技術部門と、それぞれの技術士の人数を以下の表に示します。(参照:『技術士登録者数の技術部門別一覧』 公益社団法人日本技術士会)
技術士の資格を活かせる業界
ここからは、技術士の資格を活かせる業界についてご紹介します。
建設業界
先ほどの表に記載した技術士の部門別人数を、円グラフで示すと分かるように、技術士取得者の4.5割は建設部門で資格を取得しています。
建設部門の技術士資格は建設業界での業務に直接的に役立てることができます。
建設コンサルタントでは建設プロジェクトの企画、設計、施工、運用の専門的なアドバイスやサポートを行います。建設を行う際には建設に関する知識だけでなく、電気設備や上下水道、環境工学など様々な知見が必要となります。
そのため、建設部門以外にも電気電子、環境工学、上下水道など、様々な部門の技術士資格を建設コンサルタントでは活かすことができます。
また、施工管理業者や建設コンサルタントでは技術士等の資格を有していないと就けないポジションがあり、技術士を取得することは社内でより良いポジションに就くことにも繋がります。
例えば、建設部門の技術士を取得すると、様々な建設工事の監理技術者や主任技術者になることができます。
建設工事をする際、工事現場には必ず監理技術者や主任技術者を設置する必要があり、技術士の資格を持っていることでこれらのポジションに就くことができます。
さらに、建設業界においては公共工事の入札・発注の際に、技術士の人数が企業の評価や受注金額に直接的に影響します。
このように、技術士の資格を取得することは建設業界で働く上で個人にとっても企業にとってもメリットがあります。
メーカー・サブコン
特に機械や電気系の製品を製造するメーカーやサブコンにおいて、機械部門や電気部門の技術士資格を役立てることができます。
この資格を持つことで、エレベーターや空調などの機械設備や、照明や配電といった電気設備の設計、開発から品質管理、生産技術まで、幅広い領域で知識とスキルを活かすことできます。
取得するまでの流れ
技術士資格を取得するためには、技術分野を選択し、技術士第一次試験と技術士第二次試験に合格する必要があります。
技術士第一次試験
第一次試験はマークシートによる筆記試験によって行われます。
以下の3つの科目から構成され、それぞれによって科学技術全般の基礎知識、技術者としての倫理や規定に対する知識、専門分野の知識を評価します。
(1) 基礎科目:科学技術全般にわたる基礎知識
(2) 適性科目:技術士法第4章の規定の遵守に関する適性
(3) 専門科目:受験者が選択した技術部門の基礎知識及び専門知識
第一次試験には受験資格の制限がなく、誰でも受験することが可能です。
一年に一度実施され、合格率は30%〜50%ほどです。
試験の頻度も高くなく、半数以上が不合格になる難易度の高い試験であるといえます。
第一次試験の免除が受けられる
大学などの教育機関で文部科学大臣が指定した専攻を修了することで、JABEE認定プログラム修了者となり、第一次試験が免除されます。
JABEE認定プログラム修了者の対象かどうかは文部科学省のこちらのページをご確認ください。
技術士第二次試験
技術士第二次試験は筆記試験と口頭試験から構成されます。
筆記試験は必須科目と選択科目から分かれており、マークシート式と記述式2つの形式の試験を受けます。
筆記試験を通過することで口頭試験を受けることができます。
口頭試験は評価項目が①技術士としての実務能力②技術士としての適格性の2つから構成され、実務経験や一般的知識の質問への回答から評価をされます。
口頭試験にも合格した後、登録することで技術士になれます。
記述式や口頭試験など、第一次試験と比べて試験方式が複雑になっただけでなく、出題される問題も難しくなっており、合格率も10%ほどと非常に難易度が高い試験であることが分かります。
第二次試験の受験資格
技術士第二次試験は一次試験を合格すれば誰でも受けられるわけではありません。
一次試験に合格し、登録手続きによって「技術士補」の資格を得たうえで、以下の業務経歴のどれかを有する必要があります。
(1) 技術士補として、技術士の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
(2) 職務上の監督者の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
(3) 指導者や監督者の有無・要件を問わず、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験
(1)、(2)は技術士補の資格を得た後から実務経験年数を計算し、(3)は技術士補以前の実務経験年数も含むことに注意が必要です。
取得する意義
専門性の証明になる
技術士資格は文部科学省所管の資格認定制度の1つであり、技術系の資格の中で非常に難易度の高い資格だといえます。
取得をするためには特定分野の専門知識だけでなく実務経験も必要であることから、知識と経験の両面を持つ人材として、企業に対して非常にアピールがしやすい資格となっています。
キャリアアップに繋がる
先ほど「技術士の資格を活かせる業界」でご説明した通り、技術士を取得すると様々な建設工事の監理技術者や主任技術者になることができたり、公共工事の入札・発注の際の評価や受注金額の向上に繋がるなど、社内外で自身のポジションを高めることに役立ちます。
特に建設コンサルタント企業では、技術士の資格を持つことが高く評価されやすいです。
「建設コンサルタント登録制度」という、国土交通省から建設コンサルタントとしてお墨付きがもらえる制度があります。その要件を満たすために、技術管理者を置く必要があり、技術管理者になるためには、①技術士であること、②一級建築士であること、③国土交通省の認定を受けたもののいずれかの条件を満たす必要があります。
そのため、技術士を雇うことで建設コンサルタントは建設コンサルタント登録制度に登録することに繋がり、他企業からの信頼性を向上させることができます。
このように、技術士の資格を持つことは個人にとっても、所属する企業にとってもメリットがあり、社内でのキャリアアップや転職に有利に働きます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
技術士は技術者としての専門知識や倫理の高さを示す資格であり、技術領域ごとに様々な部門が設けられています。
なかでも、建築部門の取得割合が高く、建築部門で技術士を取得した人は建設業界の施工管理や建設コンサルタントとして資格を業務に活かしています。
建設事業にまつわる幅広い知識を得られるため、建設事業におけるマネージャーや専門的な職種など、様々なポジションに着く足掛かりとなります。
技術士の資格を取得するには第一次試験と第二次試験の厳しい選考に合格する必要があるだけでなく、実務経験を積み受験資格を得る必要がありますが、取得するハードルが高い分、資格取得にはメリットがあり、自身の専門性を示し、社内外でのキャリアアップに繋がります。
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先述したように技術士の資格は、施工管理業者や建設コンサルタントでキャリアアップに繋がる資格です。
また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、他にも様々な資格を取得した方が良いケースもあります。
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