デベロッパー業界の概要や転職のポイントをご紹介します
デベロッパーは、不動産開発や都市再開発など、私たちの生活環境を大きく変えるプロジェクトを手がける事業を行っているため、転職やキャリアアップに向けて興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
デベロッパーは建設業界全体においてもプロジェクトの企画段階から関与し、資金調達や土地の取得、計画の立案など、街づくりの主体として、また、建設プロジェクトの施主として重要な役割を果たしており、多くの仕事の魅力や特徴があります。
今回はデベロッパー業界について、土地を買収してから販売を行うまでの流れの中でのデベロッパーの仕事をご紹介しながら、ゼネコンや設計事務所との関わりについてもご紹介します。
また、後半では業界の現状や将来性、デベロッパー業界への転職を考えている方や興味を持っている方への転職のポイントについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
デベロッパーとは
デベロッパーとは、土地や街を開発する事業者を指し、都市開発や商業施設、マンション、大規模宅地開発などに携わります。
デベロッパーは土地を取得し、企画・開発を行うことで、地域の価値を高める役割を担っています。
また、オフィスビルや商業ビル、住宅地などの開発を手がけ、時には複数の土地にまたがり、街全体の開発にも関わります。
デベロッパーの種類
デベロッパーは大きく総合デベロッパーと専門デベロッパーの2種類に分けることができます。
総合デベロッパー
総合デベロッパーとは、オフィスビルや商業施設、マンションだけでなく、ホテルやリゾート、都市全体の開発まで幅広い不動産を企画・開発する企業を指します。
一般的にデベロッパーとして有名な、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産、森ビルなどは総合デベロッパーに該当します。
総合デベロッパーの特徴としては、大規模かつ多用途の開発を行い、ランドマークとなるような街づくりに携われることが挙げられ、多岐にわたるプロジェクトに関与し、地域の発展に貢献する役割を担っていることも総合デベロッパーの魅力と言えるでしょう。
専門デベロッパー
専門デベロッパーは、特定の事業に絞って開発を行う企業を指し、マンションや住宅地など特定の分野に特化することで、高い専門性で、独自のブランドを確立しています。
代表的な企業としては、三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスなどが挙げられます。
総合デベロッパーが幅広い不動産を取り扱うのに対し、専門デベロッパーは特定の分野で深い知識と経験を活かし、特定の市場ニーズに応える開発を行っているため、関わりたいアセットの種類が明確な方には向いていると言えるでしょう。
デベロッパー業界の現状と今後
続いては、デベロッパー業界の現状と今後をご説明します。
不動産市場の好況と価格高騰の背景
2024年3月期の決算で、不動産開発大手5社は最高益を更新しました。これは、2012年頃から続く不動産価格の上昇が背景にあります。
価格上昇の要因としては、「アベノミクス」政策の影響、不動産への投資流入、東京オリンピック開催決定による経済活性化、訪日外国人の増加、低金利政策、建築費の高騰等の様々な要因が挙げられます。
特に、首都圏の不動産価格は大幅に上昇しており、新築マンションの高騰が顕著です。
これは、富裕層を中心とした需要の高まりや、建設費の上昇が大きな要因です。
また、中古住宅市場でも価格の高騰が見られ、特にタワーマンションや都心部の好条件物件に対する需要が強いです。
こうした状況は、円安に伴う海外マネーの流入も一因となっており、特定の高条件不動産への集中投資が市場の格差をさらに拡大させています。
このように、不動産市場は全体的に好況を呈している一方で、特定の分野や地域で価格の高騰が顕著になっています。
こうした市場環境の後押しもあり、デベロッパーの売上高や利益の上昇が続いています。
高条件不動産の需要と市場の格差
近年、高条件不動産への強い需要が市場の格差を拡大させています。
特にタワーマンションや都心・駅近の物件など、利便性の高い不動産には、富裕層や、国内外の投資家からの強い需要があります。
これらの物件は、その立地や利便性の高さから購入希望者が集中し、価格が高騰しています。
一方、利便性や流動性に欠ける物件は需要が低迷し、価格が上昇しにくい状況が続いています。資産価値や希少性の高い物件は価格上昇が続き、そうでない物件は売行や稼働が低下するかたちで、二極化が進んでいる状況です。
また、円安の影響もあり、海外投資家が日本の好条件不動産を積極的に購入していることも、価格高騰の一因となっています。
このように、特定の高条件不動産に対する需要が集中することで、市場全体で価格の二極化が進行しています。
デベロッパーにとっては、この格差を理解し、高条件不動産の開発や投資に注力することで、競争力を高める戦略が求められます。
オフィス市場の現状と二極化の加速
用途別に直近の状況を見ていくと、コロナ禍以降、特にオフィス市場の動きに大きな変化がありました。
2023年6月時点で、東京都心5区のオフィス平均空室率は6.48%に達し、一般的に供給過剰の目安とされる5%を上回っています。このため、賃料は下落傾向にありますが、コロナ禍の収束に伴い、出社を再開する企業が増えています。企業は立地や機能、環境性能に優れたオフィスを選ぶ傾向が強まっており、高性能なオフィス物件への需要が高まっています。
これにより、オフィス市場では「二極化」が加速しています。具体的には、立地や設備が充実している高性能オフィスは引き続き高い需要を維持し、賃料も安定または上昇傾向にあります。一方で、古いビルや立地が劣るオフィスは空室が増え、賃料が下落する傾向が強まっています。この二極化現象により、オフィス市場では地域や物件ごとに人気と需要の差が一層顕著になっています。
オフィス大手では、入居・退去時のコストを抑え、短期で契約しやすい物件の提供が広がっており、これがさらなる二極化を促進しています。このような状況を受けて、デベロッパーは競争力を維持するために、より魅力的で機能的なオフィス環境の提供に注力する必要があります。
以上のような、経済全体の動向や、用途ごとの市場動向を注視しながら、開発を進めていくことがデベロッパー各社で求められています。
デベロッパーの仕事の流れ(職種について)
続いては、デベロッパーの仕事について土地の取得から販売に至るまでの流れを順番にご紹介します。
デベロッパーは各仕事でゼネコンや設計事務所への依頼を行い、協力しながらプロジェクトを進めていくことになるため、それぞれがどのように関わっているのかもぜひ参考にしてください。
デベロッパーの仕事は大きく買収担当と計画担当、販売運営担当の3つに分類されます。
今回は各担当がどのような仕事を行っているかを順番にご紹介します。
買収担当
デベロッパーの買収担当の役割は、プロジェクトの基盤となる土地の取得から始まります。
まず、デベロッパーは市場調査を行い、地価の動向、周辺の開発状況、交通の利便性、おおよその施設規模、開発利益など多くの要素を考慮したうえで、開発に適した土地を見つけ出します。その際、不動産仲介業者や地場不動産会社からの紹介も多くあります。
適切な土地を見つけた後は、所有者と交渉や入札への参加をし、土地を買収することで開発用地を取得します。
次に、デベロッパーは計画の具体化に向けて設計事務所への見積依頼を行います。
ここでは、土地の特性や開発の目的に応じた設計案を作成してもらうために、複数の設計事務所を比較するケースも多いです。
設計事務所はデベロッパーからの依頼を受け、基本計画を作成します。
この基本計画には、建物のデザイン、構造、設備、工期などが含まれ、プロジェクトの全体像が描かれており、デベロッパーはこれを基により詳細の基本設計、実施設計といった次のステップに進みます。
設計が進むにつれて、徐々に次でご説明する計画担当に引き継いでいきます。
計画担当
続いて計画担当の仕事をご紹介します。
計画担当の役割は、プロジェクトの具体化から完成までの各ステップを管理することです。
まず、設計事務所は前章作成した基本計画をもとに、さらに詳細な基本設計を行い、建物のデザインや構造、設備の具体的な仕様を決定します。
この段階でデベロッパーは1社または複数のゼネコンに対して概算の見積もりを依頼します。
次に、デベロッパーはゼネコン選定のプロセスに進みます。
ゼネコンは基本設計を基に概算見積を提出します。デベロッパーは複数のゼネコンから概算見積を取り寄せ、比較検討します。
この過程で、デベロッパーはコスト、工期、品質などを総合的に評価し、最適なゼネコンを選定します。
並行して、設計事務所は基本設計からさらに詳細な実施設計へと進みます。
実施設計では、具体的な施工図面が作成され、工事の全体計画が明確になります。
ここではより精度の高い見積を受領し、事業収支の精度を高めます。
着工前に選定後、ゼネコンとの工事金を最終的に決定し、正式なゼネコン工事契約を締結します。
この詳細な設計情報を基に、ゼネコンは施工図とよばれる施工用の図書を作成し、工事の準備を進めます。
ゼネコンとの工事契約が締結されると、実際の建設工事が開始されます。
ゼネコンは設計事務所の実施設計を遵守しながら、工事を進行します。
デベロッパーは工事の進捗を管理し、定期的なミーティングや現場視察を通じてプロジェクトが計画通りに進むよう監督します。
工事が完了すると、ゼネコンは竣工検査を行い、設計事務所とデベロッパーに引き渡しを行います。
この時点で、デベロッパーは最終的な品質チェックを行い、問題がなければプロジェクトは竣工となります。
デベロッパーはこの後、プロジェクトの販売や運営に移行します。
販売・運営担当
建物が竣工した後、デベロッパーの販売・運営担当がその役割を引き継ぎます。
販売担当は、完成した建物をマンションなら一般消費者に、オフィスや商業施設なら企業やテナントに向けて販売や賃貸を行います。
マンションは販売後、管理運営業務を専門の管理会社に委託することが多いです。
一方、オフィスや商業施設の場合、テナントへの賃貸が主な業務となります。
この際、施設の管理運営を社内の専門部署が担う場合もあれば、外部の管理会社に委託する場合もあります。
デベロッパーへの転職のポイント
最後にデベロッパー企業への転職の際に求められることやポイントについてご紹介します。
デベロッパー業界に限らず、転職を考える際には、経験とスキルが重要となります。
特に一級建築士の資格は、計画担当として設計事務所やゼネコンと一緒に仕事をする際に図面を扱うため、この資格を取得していると、プロジェクトの詳細な計画立案や設計において信頼を得やすくなり、転職の際に有利に働きます。
また、今回紹介した買収担当や計画担当以外にも、デベロッパーには販売・運営やコストマネジメントの部門も存在します。
不動産仲介会社や運営会社、ゼネコンからの転職を考える方は、これまでの専門性を活かすことができるため、不動産仲介や管理運営の経験がある方は、デベロッパーの販売運営担当としてのキャリアパスが広がります。
まとめ
今回は、デベロッパー業界について、その仕事内容や現状、ゼネコンや設計事務所との関わり、さらに転職のポイントまで幅広くご紹介しました。
デベロッパーは、不動産開発や都市再開発を通じて私たちの生活環境を大きく変える重要な役割を果たしています。
また、デベロッパーと一括りに言っても、今回ご紹介した総合デベロッパーと専門デベロッパーや、企業によっても得意な事業領域や、事業展開をしている地域が異なるため、それぞれの違いや強みを理解するようにしましょう。
転職を成功させるためには、経験とスキルをしっかりとアピールすることが重要です。
デベロッパー業界に興味のある方は今回ご紹介したポイントを参考に、転職に向けて準備を進めていきましょう!
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先述したように一級建築士の資格は、デベロッパーはもちろん、さまざまな業界でキャリアアップに繋がる資格です。
また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。
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