近年のゼネコンとの関係性や役割の変化を踏まえて、サブコン業界の職種やキャリアアップついてご紹介します
建設業界において、それぞれの専門分野の工事を担うことからサブコントラクター(以下、サブコン)はゼネコンと同じぐらい重要な役割をになっています。一方でサブコンは社会一般に深く知られておらず、ゼネコンとの区別があまりついていない方や、小規模のゼネコンのことをサブコンと認識している方なども多いのではないでしょうか?
今回は建設業界の中でもサブコンに焦点を当てて、サブコンの概要からゼネコンとの関係性、そして業界における近年のトレンドをご紹介したうえで、一般的なサブコンの職種と各職種へ転職する際に求められる資格や経験についてご紹介したいと思います。
サブコンへの転職に興味がある方やサブコン業界の強みや特徴を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
業界概要
サブコン業界とは
サブコンとは、建設プロジェクトにおいてゼネコンから特定の工事を請け負う企業のことです。
建設プロジェクトでは、ビル建設のような大規模なものを含め、電気工事や空調工事といった多岐にわたる専門的な作業が求められます。
これらの専門工事は、ゼネコン一社だけで対応することが困難であるため、サブコンの企業へと各工事を下請けに出し、サブコンは専門的分野をゼネコンから請け負い、建設工事全体の一部を担当します。
ゼネコンとの違い・関係性
ゼネラルコントラクター(ゼネコン)は、建設プロジェクト全体の計画、管理、実行を担当し、プロジェクト全体の責任を持って施主から直接契約を請け負います。
これに対して、サブコンは、ゼネコンから特定の専門分野、特定の工事を請け負います。
このように、ゼネコンプロジェクト全体を管理を担当するのに対し、サブコンは専門的分野の工事を管理、担当するという違いがあります。
サブコンの種類
専門的な設備工事を担当するサブコンですが、設備工事は以下の4つに分けることができます。
空調設備工事
空調設備工事は、建物内の温度、湿度、空気の質を快適な状態に保つ役割を担います。
この工事には空調機の設計や設置、配管工事が含まれ、工事完了後には担当設備の維持管理やメンテナンスも担当します。
空調設備工事は設備の単なる設置に留まらず、冷暖房、換気、排煙システムなど、その機能範囲は広く、また、商業施設や工場、ホテル、オフィスビルなど建築物の用途に応じた快適な環境を提供することが求められます。
電気設備工事
電気設備工事は、建物内で電気を安全かつ効率的に使用できるようにするための工事であり、電気供給の申請からメーター設置、分電盤の配置、配線作業までを包括します。
この工事は、建物内の電気関連設備の大部分をカバーしており、その業務範囲は広大です。
近年では、建築におけるIoT技術の発達に伴い、情報通信ネットワークの基盤を支える電気設備の重要性が一層高まっており、電気部門では最新の制御や監視技術を駆使したシステムの構築や、電話やインターホンから非常照明、コンサートホールの舞台照明に至るまで、多様な分野での高度な技術と柔軟な対応力を発揮しています。
衛生設備工事
衛生設備工事は、建物内で水の供給と排出を可能にするための専門工事で、生活用水の供給のための給水設備や配管の設置、汚水排出のための排水設備の設置、およびガス設備の工事などを含みます。
具体的な作業には、高架水槽からの水供給や受水槽に溜まった水を給水ポンプで汲み上げる作業、さらに排水ポンプの設置や油分を除去するトラップの設置などが挙げられます。
また、環境保護との関連性も強く、工場排水や汚水の浄化処理に使用される浄化設備や公害防止設備の設計・施工を行うことで、水資源の再利用や環境への配慮も深めています。
消防設備工事
消防設備工事は、建物内で火災が発生した際に迅速な消火活動や避難を支援するための設備を設置する工事で、具体的には、スプリンクラーシステムや屋内外の消火栓の設置、火災報知器の設置、排煙設備、救助袋、避難はしごの設置などが含まれます。
消防法により、これらの設備は建物の安全確保を目的として設置が義務付けられています。
そのため、消防設備工事はただ単に安全な環境を提供するだけでなく、法的な要件を満たすためにも不可欠です。
建設業界における近年のサブコンの動き
続いては近年のサブコン業界のトレンドや業界のトピックをご紹介します。
業界研究や将来性を考えるうえでの参考にしてみてください。
発注方式の変化
ゼネコンが施主から工事を一式受注した後、専門工事をサブコン各社に発注する契約方式を「一式請負方式」や「一括発注方式」と言い、従来の建設工事において一般的な方式でした。
一式請負の方式では、施主・元請け・下請けがピラミッドのような構造を形成し、ゼネコンがプロジェクト全体を管理するため、サブコンは個別の工事に関する交渉でゼネコンから不利な条件で案件を受けてしまうなど、ゼネコンとサブコンとの間に明確な上下関係が生まれやすいという特徴がありました。
しかし、近年では新しい取引形態である「分離発注方式」が増加傾向にあります。
分離発注方式は、施主がゼネコンとサブコンにそれぞれ工事を発注する契約方式で、施主がサブコンを選定し、設備工事などを直接発注します。
これにより、サブコンがゼネコン1社に依存するということがなくなりました。
また、施主とサブコンが直接コミュニケーションを取ることができるようになり、施工内容や価格に透明性が高まり、一式請負方式で問題とされていた点を解消することができています。
分離発注においては、施主が直接サブコンを選定し、工事費に現場経費(施工費、人件費 等)を上乗せしてゼネコンに発注を行う、「コストオン方式」も見られ、発注方式も多様化しています。
大型工事の増加
続いては、大型工事の増加です。
東京では2024年から都内大型再開発事業の着工が数多く予定されており、全国的に大型工事が今後増えていくことが予想されます。
また、円安の影響などで海外を拠点としていた日系メーカー系企業の工場が日本に回帰しているほか、熊本や北海道などに新たに半導体関連の工事が増加傾向にあり、プラントや半導体工場、データセンターの需要が高まっています。この領域は投資意欲が高いこともあり工事費単価も高い傾向にあります。、また、プラントは従来の一般的な工事であるマンションや事務所などと比較すると、サブコンが関わる設備工事の占める割合が大きいという特徴があります。
このような大型工事が増加することによって、国内での設備工事需要は、今後も高い水準で持続すると見込まれています。
ゼネコンとの関係性の変化
上記で紹介した2点なども影響し、ゼネコンとサブコンの関係にも変化が見られるようになりました。
一式請負方式の説明でもご紹介したように、従来はサブコンはゼネコンに従う立場として両者の間には主従関係のようなものがありました。
しかし、昨今の工事費上昇もあるなかで、特にエレベーター等の一部の設備の確保が難しい状況となっています。エレベーターは大規模開発であればほぼ全ての工事で必要となるため需要が非常に高く、サブコンが工事を選べる状況に変わってきています。
このような業界のトレンドに加え、高度な技術を要求する半導体工場や製薬工場などの専門工事が増えたこともあり、サブコンはより利益率の高い工事を選べるようになっています。
この結果、ゼネコンからの依頼であっても、サブコンは条件が不利であれば工事の受注を断るようになっています。
また、工場の設備工事などは、メーカーから直接受直接受注したほうが利益率が高いことなどもあり、先ほど紹介した分離発注方式で案件を受注するケースも増えており、こちらもゼネコン依存から脱却が進んでいる要因の1つです。
このように、ゼネコンとサブコンの関係性はより対等なパートナーシップへと変化していると言えるでしょう。
サブコンの仕事を職種ごとにご紹介
ここからはサブコンの仕事を職種ごとにご紹介します。
サブコンといっても専門分野ごとに事業内容が異なるため、職種についても企業ごとに異なる場合がありますが、今回はサブコンにおける代表的な職種を3つご紹介します。
設計職
サブコンの設計職が担当するのは、設計の中でも設備設計と呼ばれる分野です。
設備設計とはサブコンの種類の部分でもお伝えしたように、空調や電気などのことで、営業が集めてきた情報や、建物の環境や用途を検討し、お客様のニーズと、機能とコストのバランスを考えながら設備の設計を行います。
また、一つの建物でも、設備の種類ごとに担当する企業が異なる場合が多いため、他社の担当者と連携を取りながら設計のルールを決めたり、社内の営業や施工管理職と関わることも多いため、設計のスキルだけでなくコミュニケーションスキルも重要になります。
施工管理
ゼネコンの施工管理職と同じく、サブコンでも施工管理の主な仕事は現場のマネジメントです。
ゼネコンとの違いとしてお伝えしたように、ゼネコンがプロジェクト全体の管理を担当するのに対し、サブコンは専門的分野の工事を管理します。
そして、設備にはいくつかの種類がありますが、施工を進めていくうえで関連する部分も多いため、設計職と同様に他のサブコンとも協働しながら担当範囲の施工を管理していきます。
研究開発
サブコンならではの知識をもとに、新しい技術を開発するのが研究開発職です。
具体的には、市場ニーズや現場が抱えている課題をもとに開発テーマを決め、テーマに沿ってデータ収集や分析、実験、検証など行いながら新製品を研究開発していきます。
新製品や新技術は今後の企業の強みや特徴となっていく可能性があるため、企業の将来性を担うという点に置いても研究開発職は重要な職種と言えるでしょう。
サブコンへの転職のポイント
最後にサブコンの企業へ転職する際に求められるスキルや資格についてご紹介します。
サブコンはといっても専門分野によって求められるスキルや資格は異なります。
そのため、今回はサブコン全般で求められるスキルや資格と、分野ごとに求められる資格に分けてご紹介します。
サブコン全般で求められるスキルや資格
サブコンに限らず、転職の際には経験とスキルが求められます。
サブコンへの転職の際に特に重要視される資格が管工事施工管理技士です。
管工事施工管理技士には一級と二級の資格がありますが、転職をスムーズに進めたい方は一級も取得したうえで転職を行いましょう。
また、設備設計職では建築設備士の資格が必要資格として求められる場合もあるため、設計職への転職を目指している方はこちらの資格も取得することが望ましいです。
経験の面では、施工管理に関連する工事の施工計画や進捗管理、品質管理、 安全管理などの経験が求められるケースが多いようです。
分野ごとに求められる資格
こちらでは各分野ごとに求められる、資格についてご紹介します。
今回はサブコンの種類でもお伝えした4つの分野ごとに必要となる資格をまとめました。
これらの資格は、実務経験がなければ取得できないものが多くあります。
そのため、未経験であればまず他の企業に就職して経験と資格を得ることを検討したり、入社後に実務経験を積んだのち、資格を取得するまでのキャリアプランを明確にしたうえで転職活動を行うようにしましょう。
まとめ
今回はサブコンのトレンドや業界の将来性をご紹介したうえで、各職種ごとの仕事内容や転職の際に重要となる資格や経験についてご紹介しました。
サブコンに入社した場合、1つのものに対して専門知識を深めることができ、経験を積むことができるというメリットがあります。
また、サブコンの中でも専門分野や得意とする分野や技術によって企業の強みや将来性は異なり、先述したように従来の施主やゼネコンとの関係性も良い方向に変わってきているため、専門性をもとにキャリアアップした方にはおすすめの業界です。
そのため、今回ご紹介した情報をもとに、サブコンに興味のある方は企業ごとの分析、研究を進め、転職に必要なスキルや経験を準備していきましょう!
ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を
先述したように管工事施工管理技士の資格は、サブコンはもちろん、さまざまな業界でキャリアアップに繋がる資格です。
また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、建築士をはじめとする様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。
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