道路交通ネットワーク設計の専門家 「交通コンサルタント業界」をご紹介します
新しく道路を作ると聞くと、多くの方が関係者として思い浮かべるのは、現場で作業を行う施工業者や、依頼主かつ管理者である行政ではないでしょうか。
しかし、実際には実務上とても重要な役割を担う「交通コンサルタント」という存在がいます。
交通コンサルタントは、道路や交通ネットワークの整備計画を支え、効率的かつ安全な社会基盤の構築に貢献しています。
今回は、この交通コンサルタント業界について、その仕事内容や魅力を詳しくご紹介します。
交通コンサルタント業界とは
交通コンサルタント業界は、主に道路を中心とした交通インフラに関する課題解決を専門とする業界です。
都市や地方の交通ネットワークの効率化、安全性の向上、環境負荷の軽減を目的に、計画立案から運用改善まで幅広い業務を行います。
例えば、交通量の多い交差点の設計見直し、渋滞緩和策の提案、道路整備計画の立案など、多岐にわたる業務があります。
公共機関からの発注が多い
道路などの交通インフラが対象であるため、それらを管理する地方自治体や国土交通省などの政府機関からの受注が多いです。
例えば、新しい道路の建設計画の立案、既存の交通網の再構築、交通渋滞の解消策の提案、観光地における交通管理プランの策定などが事業の一例です。
公共機関と仕事をするため、案件の規模が大きく、地域社会に直接貢献できるといったメリットが挙げられます。また、長期的な視点で計画を進められるため、安定したプロジェクト運営が可能です。
一方で、行政手続きや交通管理者である警察との協議・調整など、多くの関係者との調整が必要になるため、進捗に時間がかかることや、政策変更の影響を受けやすいといった留意点もあります。
だからこそノウハウや実績が重視される業界であり、参入障壁の高い分野と言えるでしょう。
交通コンサルタント業界の事業内容
より交通コンサルタント業界が何をやっているかイメージを持てるように、ここでは事業内容の例をいくつかご紹介します。
道路整備計画
交通量の増加や地域開発の進展に対応するため、新たな道路の整備計画を立案します。地形や交通需要、環境への影響を考慮し、効率的かつ安全な道路網の構築を目指します。周辺住民との合意形成も重要な業務の一部です。
渋滞対策
都市部や幹線道路で発生する渋滞を解消するための対策を検討します。交差点の信号調整、道路拡幅、新たなアクセス道路の整備など、多角的なアプローチで渋滞緩和を図ります。
道路工事による影響、対策検討
道路工事が交通に与える影響を最小限に抑えるため、工事スケジュールや迂回ルートの検討を行います。夜間施工や一時的な交通規制の案内方法など、安全性と利便性を両立させる対策を提案します。
道路事業評価
新規道路や改良道路の計画が経済的・社会的に妥当であるかを評価します。
費用対効果分析や環境影響評価を通じて、公共投資としての適正性を検証し、計画の実現可能性を高めます。
安全対策
交通事故を減少させるため、道路や交差点の設計における安全対策を検討します。視認性の向上や交通標識の配置、歩行者や自転車利用者の安全確保など、交通事故を未然に防ぐための施策を提案します。
パーソントリップ調査
パーソントリップ調査は、地域の住民や通勤・通学者の移動パターンを調査し、移動の目的(通勤、買い物、レジャーなど)や交通手段(徒歩、自転車、車、公共交通機関など)、出発地・目的地を把握します。
このデータを基に、地域ごとの交通需要や混雑状況を分析し、より効率的で快適な交通システムの設計に活用します。
また、パーソントリップ調査は交通ネットワークの改善だけでなく、商業施設や企業の立地戦略等においても活用されます。
交通コンサルタントの仕事内容
ここまで、交通コンサルタント業界の概要と事業内容について説明してきました。
ここからは交通コンサルタントの仕事内容についてご説明します。
調査・分析
交通コンサルタントの最初のステップは、対象の地域の交通状況を調査し、データを収集することです。交通量、渋滞状況、事故発生場所、交通の流れなど、さまざまな要素を詳細に調べます。
これにより、問題点や改善が必要な箇所を特定し、今後の施策に向けた基盤を作ります。
調査手法は、現地での観測、センサー設置、アンケート調査、パーソントリップ調査など目的によって様々です。
データを収集したら、具体的な解決策を立案するために分析が行われます。
例えば、交通量のピーク時において、混雑の原因となっているボトルネックの箇所の特定や、信号タイミングが渋滞に与える影響の検証などを行います。
また、交通シミュレーションソフトウェアを使い、将来的な交通需要や改善案の効果を予測します。
これらの検証や予測の分析結果を基に、効果的かつ実行可能な解決策を提案するための基盤を構築します。
計画
調査・分析を基にして、交通インフラの改善に向けた計画を策定します。
例えば、新たな道路や交差点の設計、交通渋滞を緩和するための信号調整案、環境負荷を抑えた都市計画案などが挙げられます。
計画の策定では、交通量の将来的な変化を予測しながら、住民や地域の特性に合った提案を行います。また、計画段階での経済的評価や環境影響評価も欠かせません。これらを総合的に考慮し、実現可能な具体案を提示します。
交通コンサルタントは、行政機関に助言を行う立場であるため、提案内容が行政内部での検討や意思決定に役立つ形であることが重要です。
そのため、計画案をわかりやすく整理し、行政担当者が庁内で議論しやすい資料を作成します。また、市民への説明や理解を得るためのわかりやすい表現が求められます。
関係者との調整
計画を進めるためには、地方自治体や国土交通省、施工業者、住民などの意見を取りまとめ、合意形成を図ることが必要です。
特に大規模なインフラ整備では、地域住民の理解を得るための説明会や協議を重ねることが重要です。また、異なる関係者の意見や利益を調整する役割も果たします。
これにより、計画が円滑に進行し、地域社会に受け入れられる結果を生むことを目指します。
実施支援
計画が承認された後、交通コンサルタントは事業の実施を支援します。
具体的には、工事の進行状況を管理したり、施工業者との連携、交通規制や迂回路の設置を検討したりします。工事が交通に与える影響を最小限に抑えるため、夜間施工の提案や安全対策の策定も行います。
このように、調査、計画段階から施工現場まで一貫して支援することで、計画が確実に実行されるよう取り組みます。
交通コンサルタント業界の企業
交通コンサルタント業界の企業は、大きく2つのタイプに分類されます。
一つは、交通コンサルティングに特化した専業企業で、もう一つは、建設コンサルタントの事業の一部として交通分野を手掛ける兼業企業です。
専業企業は、交通計画や渋滞対策、交通シミュレーションなど、交通に特化した高度な専門知識を活用して業務を行うのが特徴です。
測量業界など他の土木関連分野と比べると、交通コンサルティングを専業とする企業はそれほど多くありません。
一方、兼業企業は、道路や橋梁の設計、土木工事の計画といった建設関連業務の一環として、交通コンサルティングを提供します。
交通調査の結果を基に、施工計画や設計と密接に連携しながらプロジェクト全体をサポートできる点が、建設コンサルタントと兼業している企業の強みです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
交通コンサルタント業界について、概要、事業内容、仕事内容、業界の企業についてご説明しました。
交通コンサルタント業界は道路を中心とした交通インフラに関する課題解決を専門とする業界で、事業内容は道路整備計画、渋滞対策、道路工事による影響、対策検討など、道路に関する計画全般に関わります。
公共インフラ整備という安定した需要がある一方で、持続可能な交通システムへの注目が高まる中でさらなる成長が期待される業界です。
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