【必読】建築・土木設計職の転職・キャリア形成のロードマップ ― 設計経験の「多様さ」と「専門性」で広がるキャリアの可能性

設計職の経験は建設業界で求められている ー設計職としてキャリアを歩むあなたへ
建築・土木の設計職は、建設プロジェクトの中核を担う重要なポジションです。
建築や土木関連の法規に基づく専門性と応用力や、施主の要望をカタチにする提案力は、他の職種や業界においても非常に重宝されるスキルです。
しかしながら、建設業界全体として、設計職がどのようにキャリアを築いていけるのか、具体的なロードマップが示されていないのが現状でしょう。
転職をはじめとするキャリア形成を考えることは、自分自身の知識・経験を棚卸しし、将来に向けて再構築する貴重な機会です。これまでの経験を活かしながら、キャリアの可能性を広げるきっかけにもなります。
そこでBuild Up(ビルドアップ)では、設計職としてキャリアを歩むあなたに向けて、中長期的な視点から、キャリア形成のロードマップについて解説します。
設計職の市場価値とは? ーあなたが持つ職能の棚卸しをしよう
キャリア形成を考えるなかで、まずはじめに重要となるのが、現在のあなたの設計職としての価値(知識・経験)を再認識することです。それがキャリア形成の土台となります。
設計職は建築・土木における計画立案、図面作成、関係者との調整、施工への引き継ぎなど、建設プロジェクトの推進における中核を担っています。
そのなかで、客観的な設計職ならではの強みとしては、以下などが挙げられるでしょう。
・構造・設備・意匠など、専門知識に基づいた設計力
・法令(建築基準法、都市計画法、他)、コスト、施工性などを総合的に考慮した提案力
・施主、施工者といったステークホルダーとの調整経験、要望をカタチにする想像力と実行力
・施工現場の監理を通じた、設計者視点での建設現場の理解、建設全般の実態把握
他にもご自身が設計職に従事するなかで、独自の知識・経験があると思います。
それらを言語化しておくことが重要となります。

設計職の転職・キャリアアップの2つの考え方とは ー専門性を極めるか、領域を広げるか
ここからは転職・キャリアアップを有利に進めるための考え方をご紹介します。
ご自身の現在の環境と照らし合わせながら、どのように取り組むかを考えてみると良いでしょう。
キャリア形成における考え方には2つの方向性があります。
1つ目は「特定の領域の専門性を高めるキャリア」です。
特に構造、設備の領域に当てはまりますが、特定の専門領域の知識・経験を深めていくイメージで、知識で言えば「構造設計一級建築士」や「設備設計一級建築士」の取得などが該当します。経験で言えば、構造設計職や設備設計職などとして組織や業界の中でキャリアを高めていく方向性です。
そして2つ目は「設計職としてのある特定の領域の専門性を軸にしつつ、知識や経験のフィールドを広げていくキャリア」です。
これはキャリアの幅を広げるための考え方で、身を置く環境を変えながら、そのそれぞれの領域で一定の価値を発揮できる程度の知識・経験を重ね、それらを掛け合わせて市場価値を高めていくイメージです。
キャリアアップにつながる5つのポイント ― 専門性、施工の理解、多用途の設計経験、マネジメント経験、資格
設計職としてキャリアの可能性を広げていくためには、日々の設計業務を積み重ねるだけでなく、視野を広げたスキルや経験の獲得が欠かせません。ここでは、今後のキャリア形成において意識したい5つのポイントを紹介します。
(1)設計経験を深める
まずは、現在担当している設計業務の中で、意匠・構造・設備といった専門分野を意識しながら、経験を深めることが重要です。
1つの案件を通じて複数の専門領域に関わることも多いため、それぞれの観点から物事を捉える力を養うことで、設計者としての幅と深さが増していきます。特定分野に強みを持ちながらも、周辺分野への理解を深めることで、キャリア形成の軸となる強みを確立できます。
(2)施工の理解を深める
設計図は最終的に「施工」という工程を通して形になります。
そのため、施工性・実現性を意識した設計の取り組みは、実務力の向上に繋がります。(特に実施設計フェーズ)
具体的には、設計監理を通じた施工の実態把握、施工担当者とのやりとりなどにより、図面と実態を頭の中でリンクさせられるようになるでしょう。それが今後の設計業務においても、実態に即した設計ができる訓練になります。
施工を理解した設計者は、現場との調整力や説得力が高く、プロジェクト全体の質にも大きく貢献できます。
(3)多用途の設計経験を積む
近年の再開発プロジェクトなどでは、住宅、商業、オフィス、ホテル、公共施設など、複数の用途が組み合わさるケースが増えています。こうした複合施設の設計では、それぞれの用途に求められる空間性、法規、設備要件などの理解が求められます。多用途の設計経験を積むことで、応用力が高まり、より大規模かつ多様なプロジェクトにも対応できる需要の高い設計者となることができるでしょう。
(4)マネジメントの経験を積む
設計業務に加えて、企画段階から関わるプロジェクトマネジメント、チームの進行管理、若手指導などのマネジメント経験も重要なキャリア資産になります。
設計者としての視点を持ちながら、施主や他のステークホルダーとの調整をリードできる力が求められる場面は今後ますます増えていきます。マネジメント経験を積むことで、管理職や専門領域のリーダーとしてのキャリアも開けていくほか、デベロッパーや建設コンサルといった、プロジェクト全体をマネージメントする職種・業界への転職にも役立つでしょう。
(5)資格の取得で専門性と信頼性を強化する
設計者としての専門性を可視化し、キャリア形成における客観的な信頼性の担保として資格の取得が大きな武器になります。
代表的なものとしては建築士(一級・二級)をはじめ、一級建築施工管理技士、建築設備士、技術士(補含む)などが挙げられます。資格は単なる肩書きではなく、自身の技術力・知識の証明であり、転職や独立、社内昇進などあらゆる場面でプラスに働きます。

設計職からの転職パターン ー意外と知らないキャリアの可能性とは
ここまで、キャリア形成の考え方について整理してきました。
ここからは、実際に設計職が持つキャリアの可能性を把握するために、可能性の高い転職のパターンについて、概要、求められる能力、得られる経験について、それぞれ解説していきます。
まず設計職の転職は、大きく2つの方向性に分けられます。
ひとつは、設計職のまま転職をするパターン。そしてもうひとつは、設計の経験を活かしながら、異なる職種へとキャリアの幅を広げるパターンです。
それぞれ詳しく解説していきます。
(1)設計職として転職
組織設計事務所
まず設計職の代表的な業界として、組織設計事務所業界があります。
組織設計事務所は、ご存知の通り、大規模かつ複合用途の建築プロジェクトを手がける設計組織で、数百人から千人規模の体制で業務を分担しながら進めます。
プロジェクトは住宅・商業施設・オフィス・ホテル・公共施設など多岐にわたり、用途の異なる設計経験が重視されます。求められるのは、高度な意匠設計力や法規知識、BIMなどの設計ツールの活用スキル。各専門分野の担当者との連携も重要で、チーム設計に慣れていることも求められます。
ここで得られるのは、大規模建築の構造や設備との調整力、複合用途の企画設計力、都市スケールでの空間構成力など。幅広い知見とスケール感のある設計経験がキャリアの厚みを増します。
ハウスメーカー・工務店
ハウスメーカーや工務店では、主に戸建住宅の設計に携わり、施主との打ち合わせからプラン提案、確認申請、現場対応まで一貫して関わるケースが多くあります。業務の特徴は、住まい手との密なコミュニケーションと、営業・施工との連携を通じたスピーディな対応力です。
求められるのは、住宅設計に関する実務経験、木造住宅の構造知識、住環境やライフスタイルへの理解力などです。
業務を通じて得られるのは、顧客視点に立った提案力、設計と現場の一体的な判断力、地域特性を踏まえた設計対応力です。住宅設計の現場力を磨きたい方や、住まいの提案に深く関わりたい方に向いています。
ゼネコン・サブコン
ゼネコンやサブコンにおける設計職は、施工部門と密接に連携しながら、実施設計・施工図の作成、設計監理を担います。
設計の意図を施工に正確に反映させる役割を果たすため、施工性・安全性・コストを意識した実践的な設計力が求められます。また、図面の整合性確認や施工現場とのやり取りも日常的に発生します。
必要な知識は、RC造やS造を中心とした構造理解、施工工程への理解、CAD・BIMの操作スキルなどです。
ここで得られるのは、実務に即した設計対応力や、施工現場での調整・監理能力、建築全体の工程に対する把握力です。実務重視の設計キャリアを築きたい人に適した職場です。
(2)設計職から別の職種へのキャリアチェンジ
ここからは設計職の方があまり認識していない、別職種への転職の可能性について解説していきます。
なぜ転職が可能なのかについてもご紹介します。
建設コンサルタント業界への転職
建設コンサルタントは、都市計画・再開発・公共施設整備などの上流工程に関わる職種で、民間や行政の事業を技術的に支援する役割を担います。業務の特徴は、設計にとどまらず、課題解決型の提案や各種調整、プロジェクトマネジメントなど多岐にわたることです。
設計職からの転職が可能な理由として、実際に土木設計職が建設コンサルの業務の一つであることと、設計業務の理解がある人材がプロジェクトのコントロールや推進に貢献できる可能性が高いことが理由です。
そのため求められるのは、建築設計に関する実務経験、調整能力、資料作成力に加えて、建築士や技術士補などの資格があると有利でしょう。
ここで得られるのは、企画・計画段階における思考力やマネジメント力、法制度や都市計画に関する知識などが挙げられます。設計者から一歩引いた立場でプロジェクト全体を支える視点が養われ、より広範なキャリア展開が可能になるでしょう。
デベロッパー業界への転職
デベロッパーは、用地取得から企画、設計・施工の推進、完成後の運用まで、プロジェクト全体を統括する事業主側の立場にあります。実際に設計業務を行うわけではありませんが、設計会社との連携や商品企画の検討などで、設計的な知識や経験が強く求められます。
特に、大規模再開発などの複合開発プロジェクトにおいては、用途構成・動線計画・法規制への理解など、設計出身者でなければ担いきれない検討が増えています。
また、企業によっては社内にボリューム設計部門を持ち、基本計画レベルの図面作成を行うケースもあります。
得られるのは、事業視点での設計理解、コストや収益性を踏まえた計画力、関係者との交渉・調整スキルなど。設計の経験を活かして、より広い視野から建築に関わりたい人に適した選択肢です。

転職活動のスケジュールと進め方
転職活動は一度にすべてを進めるものではなく、段階ごとに計画的に進めることが成功の鍵です。
特に在職中に転職を考える場合、日々の業務と両立しながら無理なく準備を進めるためには、スケジュールと手順の整理が欠かせません。
以下の5つのステップを参考に、転職活動を進めましょう。
(1)自己分析と方向性の明確化
転職活動の第一歩は、自分自身の整理から始まります。
まずは「転職したい業界・職種」と「転職が可能な業界・職種」を棚卸しし、視野を広く持つことが重要です。設計職の経験は多くの業界で活かされる可能性があるため、自分では気づいていない選択肢にも目を向けましょう。
次に、自身の強みや実績を言語化し、それがどのような業務・企業で活かせるかを明確にします。たとえば、設計プロジェクトのマネジメント経験やBIM運用スキルが、他職種でどう評価されるかを整理しておくと、書類作成や面接でも説得力が増します。
この段階でキャリアの方向性を定めておくことが、後のエントリー・面接準備をスムーズに進めるための土台になります。
(2)エントリー準備
自己分析の内容をもとに、応募書類を準備します。
履歴書や職務経歴書は、志望先企業の業務内容や職種に合わせて調整し、汎用的なものではなく「伝わる内容」に仕上げることが大切です。
並行して、希望条件に合う求人を探し、複数社に応募する前提でスケジュールを組みましょう。求人の選定は、業界・職種・働き方などの優先順位を明確にすると判断しやすくなります。
また、面接に向けた準備もこの段階で始めます。業界・企業研究、ポートフォリオの整理、過去の実績や設計プロセスを説明する練習を行い、設計者としての考え方やスキルを的確に伝える準備を整えましょう。
(3)選考・内定
書類選考を通過すると、いよいよ面接フェーズです。設計職の面接では、設計責任者や役員、人事担当などとの複数面接が一般的で、設計の考え方、業務プロセス、クライアント対応力などが評価対象になります。
プレゼン形式でのポートフォリオ説明を求められることもあるため、構成や説明方法を事前に整理しておきましょう。
内定が出た際には、条件交渉や入社時期の調整を行います。給与・ポジション・勤務地などの条件が希望と異なる場合は、無理のない範囲で交渉することも可能です。最終的に企業から内定通知を受け取り、入社に向けた準備に入ります。
(4)入社スケジュールの確認、退職手続き
内定後は、現職の業務状況を踏まえたうえで、退職時期と入社時期を慎重に調整します。特に設計職はプロジェクト単位での業務が多く、引き継ぎや納期との調整が必要となるため、現場との丁寧な相談が不可欠です。
(5)転職時は余裕を持ち、休暇を取ろう
可能であれば、前職と新天地の間に1〜数週間の休暇期間を設けることをおすすめします。転職活動の疲れを癒し、心身を整えたうえで新たな職場に臨むことで、良いスタートを切ることができます。また、引越しや家族との時間確保など、私生活の調整もこの期間に済ませておくと安心です。余裕のあるスケジューリングは、転職成功の大切な要素のひとつです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
設計職は建設プロジェクトの中核を担う重要な職種です。そのためプロジェクトに関わる多くの業界から、その知識や経験が求められています。
専門性と設計経験の多様さによって、キャリアの幅も変わり、建設コンサルタント業界やデベロッパー業界といった異業種へのキャリアチェンジも図れます。
キャリアのロードマップを描いたうえで日々の業務に取り組むとともに、逆算して知識や経験を身につけていきましょう。
ビルドアップで有利なキャリアアップを
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