ゼネコン設計部門への転職のポイントとは? 設計事務所、アトリエと比較してご紹介します

ゼネコン設計部門への転職のポイントとは?            設計事務所、アトリエと比較してご紹介します

建設業界でキャリアアップを考えている方や、他の業界から建設業界への転職を考えている方で、設計業務に興味のある方は多いと思います。

設計職を目指す際には、ゼネコン、設計事務所、ハウスメーカー、アトリエ事務所など、さまざまな選択肢がありますが、今回はその中でも特にゼネコンの設計職に焦点を当ててご紹介します。

ゼネコンの設計部門は、設計事務所やアトリエとは異なる独自の特徴を持っており、本記事では、ゼネコンの設計部門と設計事務所、アトリエとの違いを詳しく解説し、ゼネコン設計部の仕事内容についても掘り下げていきます。

また、後半ではゼネコン設計部門への転職時のポイントやゼネコンの設計部門へ転職することのメリットについてもお伝えしますので、将来的に設計業務に就きたい方や、ゼネコンの中で設計職がどのような役割を担っているかを知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

ゼネコンについて

ゼネコンの設計部門についてご紹介する前に、まずはゼネコン業界について簡単にご紹介します。

ゼネコンとは、建設プロジェクトをクライアントから一括請負し、設計から施工、管理までを一貫して行う総合建設業者のことで、マンションやビルだけでなく、道路や橋、工場、そして公共施設など、大小さまざまな建設物のプロジェクトに関わります。

ゼネコンについては、
トレンドと将来性を考慮したうえで、ゼネコン業界への転職時に重要になるポイントをご紹介します
の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひこちらをご覧ください。

ゼネコン設計部門とは

上記でお伝えしたゼネコンの業務の中で、設計部門は文字通り設計の役割を担います。

設計部門は、建設プロジェクトの初期段階から関与し、設計図の作成から施工計画の立案、プロジェクトの監督まで一貫して行う部門で、ゼネコンの中で設計部門は建築物の全体的なデザインや構造を決定する重要な役割を担っています。

また、ゼネコンのメインとなる業務は全てのゼネコンに設計部門があるわけではなく、比較的規模の大きいゼネコンが設計部門を持っていることは理解しておきましょう。

ゼネコンの設計部門の特徴

ここからはゼネコンの設計部門の特徴をご紹介します。

ゼネコンの設計部門、設計事務所、アトリエはすべて設計を行うという点では共通しています。

では、設計事務所やアトリエと比較したときにゼネコンの設計部門はどのような違いがあるのかをここではご紹介しますので、違いを踏まえてゼネコンの設計部門の特徴を理解しましょう。

設計業務に対するスタンスの違い

まずは、設計業務に対するスタンスについて、ゼネコンの設計部門と設計事務所やアトリエの設計に対するアプローチの違いを説明します。

ゼネコンの設計部門では、自社で施工する建物の設計を担当するため、設計から施工まで一貫して責任を持つ姿勢が求められます。細部まで高い品質を確保することが重要で、曖昧な部分を残しておくと施工段階で問題が発生するため、徹底的な設計が必要です。そのため、ゼネコンの設計部門では、設計フェーズにおいて実施設計が多くを占めるのが特徴です。

さらに、ゼネコンの設計部門では、建物の施工を最終的な目標とし、効率的な施工を意識した設計が求められます。これにより、発注者と直接関わる機会が少なく、特に意匠設計以外ではこの傾向が強いです。

一方、設計事務所やアトリエでは、多くのプロジェクトを同時に手掛けることが一般的で、1つの建物に対して割ける時間やリソースが限られています。これにより、設計フェーズにおいては基本設計が多くを占める傾向があります。基本設計では、建物の全体像や主要な機能を決定し、発注者のニーズやデザインの方向性を具体化します。設計事務所やアトリエは、発注者の期待に応えるために、デザインや機能性に重きを置いています。

対応領域や業務範囲についても違いがあります。

対応領域について、設計事務所は、意匠設計から設備設計まで幅広く手掛ける場合もありますが、一般的には「意匠」「構造」「設備」などの専門分野ごとに担当することが多いです。一方、ゼネコンは構造設計や設備設計に強みを持ちながらも、特定の建築物では意匠設計から対応することもあります。

そして業務範囲については、設計事務所は主に設計図の作成を担当し、意匠、構造、設備などの範囲が明確に分かれていることが多く、これには監理業務も含まれます。
一方、ゼネコンは設計だけでなく施工も行い、工事会社の手配やコスト管理など、プロジェクト全体を運営します。

このように、ゼネコンの設計部門では、施工のしやすさや効率を重視した設計を行い、現場の知識を活かしながら設計を進める姿勢が求められます。また、ゼネコンはプロジェクト全体の運営を担い、設計から施工までを一貫して管理するため、広範な業務範囲をカバーしています。

設計に対する考え方の違い

続いては、設計に対する考えの違いです。

ゼネコンが設計を請ける際は、設計・施工一括で請けることがほとんどです。

設計から施工まで一貫してプロジェクトを管理し、最終的な施工で利益を得ることを重視するため、ゼネコンの設計部門は現場・施工に重きを置きます。

そのため、設計者は施工をスムーズに進めるために、工法的に実現可能となっているかを考慮した図面を作成します。

例えば、構造設計において、余分な鉄筋や鉄骨を減らす作業を行い、施工費を抑えるための詳細な図面を作成します。

これにより、施工時に問題が発生しないよう事前の検討が重要となり、プロジェクト全体の利益を最大化することが求められます。

施主の傾向としても、ゼネコンに設計を依頼する施主はコスト重視の傾向が強く、効率的な施工とコスト削減が最重要項目になることが多いです。

それに対してゼネコン側としては、自社で引いた図面のコストパフォーマンスが悪いと、施主が施工に対して不満を持ってしまうため、設計施工を一括で請ける際には、コストパフォーマンスを担保した設計が重要となります。

一方、設計事務所やアトリエでは、設計業務そのもので利益を得るため、設計が完了した時点で業務が終了し、施工コストに責任を持つ必要はありません。

設計事務所は、設計費用内で業務を完了させることが求められ、発注者のニーズに応じた設計を行いながら、デザイン性や機能性に重点を置きます。

施主の傾向としても、設計事務所は意匠や高機能を重視するため、建物のデザインや機能性に対する期待が高いです。

ゼネコンでは、設計が赤字になっても施工で挽回できるため、施工費の低減と施工時の問題回避を目的とした事前検討を行い、プロジェクト全体の利益を見据えた設計が求められ流のに対し、設計事務所は設計業務での効率的な利益確保が重視されるという特徴があります。

設計者と施工者の関係性の違い

設計者と施工者の関係性にも大きな違いがあります。

ゼネコンの設計部門では、設計者と施工者が同じ組織内に所属しているため、連携しやすい環境が整っています。

同じ企業内だと情報の共有、把握がしやすいため、設計者は自社の施工者が持つ技術や能力を把握したうえで、細部まで計画し、図面に反映することができます。

一方、設計事務所では、施工者は外部のパートナーとなります。これにより、施工者の技術や限界を完全には把握できないため、設計図面に盛り込める内容が大まかになりがちです。その結果、設計者の意図通りに建物が完成しないこともあります。

ゼネコンの設計部門でのデメリットとしては、施工者からの要望を断りづらいことが挙げられます。

例えば、施工段階での変更や調整が必要な場合、設計者は施工者の提案を受け入れ、図面を修正することがあります。

これは、施工者の提案を取り入れることで、プロジェクト全体の利益を最大化するためです。

一方設計事務所では、図面に記載された内容を厳守することが求められ、施工者がそれに従うことが基本です。

仕事内容について

ゼネコンの設計部門、設計事務所、アトリエは設計を行うという点では共通ですが、ゼネコンの設計部門には以下のような特徴があります。

大手ゼネコンではフロントローディングの取り組みが積極的に行われており、設計の早い段階でプロジェクトの所長が選定され、その意見を取り入れながら設計を進めます。これにより、着工後の施工計画に基づく変更を最小限に抑え、手戻りの少ない効率的な設計が可能となります。

また、ゼネコンではBIM(Building Information Modeling)を積極的に活用しているため、設計段階から3次元モデルを作成し、意匠・構造・設備の納まりを3次元的に検討することが一般的です。このため、BIMソフトのスキルや3次元検討の技術を持っていることは、ゼネコン設計部門での大きな強みとなります。

これらの取り組みにより、ゼネコン設計部門は効率的かつ精度の高い設計を実現しており、施工段階での問題を最小限に抑えながらプロジェクトを進行させることができるのが特徴です。

設計事務所とゼネコン設計部門のJV(共同事業体)について

ゼネコンの設計部門の特徴や、設計事務所やアトリエとの違いについてご紹介しました。

それぞれの特徴があるなかで、実際に建築プロジェクトを進めていく過程では、ゼネコン設計部門と設計事務所でJV(共同事業体)を組成し、どちらの良さを取り入れながら役割分担をする場合もあります。

設計事務所は、施主の意向を汲み取りニーズに合わせた設計が得意で、ゼネコン設計部門は施工側・現場側に重きを置いた設計が得意なため、施主と現場をスムーズに繋ぐことを目的にJVでの設計を行うケースも多く見られます。

特に複合開発・大規模開発、特殊な工法・構法が求められるプロジェクトで多く見られます。

経緯は様々ですが、一般には先に設計事務所が基本構想、基本計画などの上流のプランニングをしたうえで、工事を見据えた設計が必要となる基本設計や実施設計段階からJVを組むケースが多いです。

ゼネコン設計部への転職を考えている方へ

最後にゼネコン設計部への転職を考えている方に向けて、設計事務所、アトリエと比較した際のゼネコン設計部へ転職するメリット、そしてゼネコン設計部へ転職を目指す際にポイントとなる項目についてご紹介します。

ゼネコン設計部へ転職するメリット

まずはゼネコン設計部へ転職するメリットについて、設計事務所、アトリエと比較した際にゼネコン設計部へ転職することに以下の点がメリットとして挙げられます。

転職後のキャリアステップ

ゼネコンはアトリエや設計事務所と比較すると組織としての規模が大きく、企業内に様々な部門、職種が存在するため他部署への異動が比較的容易です。

このため、ゼネコン内でのキャリアパスは多様であり、またゼネコンで培った経験を活かし、将来のキャリアアップとして中小の建設会社で管理ポジションに転職することも可能です。

設計以外のスキル取得の機会

ゼネコンは設計から施工、維持管理まで幅広い業務を担当するため、設計者は実際の工事費用や工期を考慮した設計が求められます。

また、ゼネコンの設計部門では設計だけでなく施工管理や維持管理にも関わるため、プロジェクト全体を通して幅広い経験を積むことができます。

これにより、総合的なスキルを身に付けることができ、キャリアの幅を広げることができます。

そして、教育制度や研修制度も充実している場合が多いため、転職後も実際の仕事を経験しながら、自らのスキルを伸ばせる可能性もあります。

事業の安定

ゼネコンは公共事業に関わることも多く、安定した経営のもと仕事ができるというのも魅力の1つです。

また、設計部があるゼネコンはゼネコンの中でも比較的規模が大きい企業になるため、福利厚生も充実している企業で安定した収入が得られるというのもメリットになります。

転職時のポイント

一般的に大手ゼネコンへのキャリア採用は採用人数も多くないため、難しいと言われています。

その中で、ゼネコン設計部への転職を成功させるためには、以下のポイントを抑えるようにしましょう。

資格の取得

ゼネコン設計部で働くためには、一級建築士の資格が重宝されます。

2020年に建築士試験の受験要件が変更され、実務経験がなくても指定科目を履修していれば一級建築士の資格を取得できるようになりました(※建築士登録には実務経験が必要)ので、ゼネコン設計部に限らず、設計の仕事を希望する方はまずは一級建築士の資格取得を目指しましょう。

CADスキルの習得

ゼネコンの設計部門では、CADスキルが必須です。

特にAuto CADとの互換性があるDWG形式の編集が可能なCADが望ましいです。

また、近年のゼネコン業界ではBIMが普及しているため、BIMのスキルや経験があると、入社後の仕事をスムーズに行うことが可能となります。

実務経験

転職で設計職を希望する場合、新卒入社とは異なり、ある程度の知識とスキルを持っていることが求められ、即戦力としてプロジェクトに携わることが要求されます。特に様々な用途、複合開発、大規模開発等の設計経験があると尚良いでしょう。

そのため、資格だけでなく、実務経験が重要視されるため、現時点で転職時にアピールできる経験を積むようにしましょう。

設計や施工現場での経験を積み重ねることで、転職活動においてのアピールポイントとなります。

まとめ

今回はゼネコン設計部門について、設計事務所、アトリエと比較しながら特徴をお伝えしました。

ゼネコンの設計部門は、自社で施工を行う強みを活かし、設計から施工まで一貫して管理する姿勢が特徴で、設計事務所やアトリエと比べて、プロジェクト全体の効率やコストを重視した設計が求められます。

一方で、設計事務所やアトリエはデザイン性や機能性に重きを置き、発注者のニーズに応じた創造的な設計が行われます。

その中でも以前と比較すると、ゼネコンの設計部も高いデザイン力を持ち、質の高い建築を提供するようになってきたようです。

ただし、ゼネコンの設計部の大きな建設会社の一部門であるため、会社のルールに従った現実的な提案が求められるのは事実ではあります。

ゼネコン設計部への転職は難易度が高く、即戦力が求められるため、資格取得や実務経験が重要になります。

特に一級建築士の資格やCADスキルは重宝されますので、早めに準備を始めることが大切です。

また、実際の設計や施工現場での経験を積み、転職時にアピールできる実績を築くこともポイントです。

ゼネコン設計部への転職を考えている方は、資格取得や実務経験の積み重ねを計画的に行い、希望の企業や職種に就けるように準備を進めていきましょう。

ビルドアップで有利なキャリアアップ・転職を

一級建築士の資格は、設計職を希望の方はもちろん、さまざまな業界でキャリアアップに繋がる資格です。

また、建設業界における有利なキャリアアップのためには、様々な資格を取得した方が良いケースも多くあります。

ビルドアップでは、資格の活かし方や、建設業界のあらゆる職種についてどのように転職した方が良いかといった専門性を有した、建設業界に特化したエージェントが多数在籍しております。

建設業界でのキャリアアップ・転職を少しでも有利に進めたい方は、こちらからご登録ください。