環境配慮建築の世界標準「LEED」とは? 評価体系・種類・知ることのメリットをご紹介

環境配慮建築の世界標準「LEED」とは? 評価体系・種類・知ることのメリットをご紹介

世界中で環境配慮型の建築づくりが進むなか、建物の環境性能を客観的に評価するための指標として注目されているのが LEED(Leadership in Energy & Environmental Design) です。アメリカで生まれたこの認証制度は、国際基準として多くの国で導入が進み、日本でも大規模再開発や外資系企業のオフィスビルなどで取得が増えつつあります。

建築・不動産分野に関わる方であれば一度は耳にしたことがある制度ですが、「名前は知っているものの、どのような仕組みで評価されているのかは曖昧」という声も多いテーマです。本記事では、LEEDの全体像と評価方法、日本での活用例、そして理解することで得られるメリットを分かりやすく整理します。

LEEDの基本概要

LEEDとは?

LEEDは、建物がどれだけ環境に配慮してつくられ、どのように運用されているかを総合的に評価する国際的な認証制度です。アメリカのUSGBC(U.S. Green Building Council)が1990年代後半に創設し、現在では100か国以上で導入されています。

特徴は、単に「省エネ建物」を評価するだけではなく、建物のライフサイクル全体(立地選定・設計・施工・運用)を通して環境負荷を減らす仕組みを備えている点です。

評価対象となるプロジェクトは幅広く、以下のような種類があります。

  • 新築建築物(LEED BD+C)
  • 既存ビルの運用段階(LEED O+M)
  • オフィスや商業施設の内装(LEED ID+C)
  • 街区や都市レベルでの開発(LEED ND)
  • 住宅プロジェクト(LEED Homes)
  • 都市・自治体単位の包括的評価(LEED for Cities and Communities)

つまりLEEDは、建物そのものの性能だけでなく、「どう建て、どう使い続けるか」まで評価する包括的なフレームワークとして機能しています。建築・不動産の現場で環境性能を俯瞰できる基準として国際的に支持されています。

出典:LEEDとは | Green Building Japan

ポイント制とクレジットの考え方

LEEDの中心になるのが 「クレジット(評価項目)」ごとにポイントを積み上げる仕組み です。環境配慮に関する取り組みを行い、設計図書・素材の証明書類・施工記録・運用データなどを提示することで、該当するクレジットのポイントを獲得します。

評価対象は設計段階だけではなく、施工中の品質管理や運用後の省エネ実績など、多岐にわたります。

認証レベル

取得ポイントの合計によって、次の4段階で評価されます。

  • Certified
  • Silver
  • Gold
  • Platinum(最上位)

上位レベルを目指すほど、設備計画、素材選定、運用計画などの綿密な検討が求められます。

出典:LEEDとは | Green Building Japan

評価カテゴリ

LEEDでは、建物の環境性能を 6つの主要カテゴリ に分けて評価します。ここでは、実際の分類名称を使いながら内容を分かりやすく整理します。

  1. Location and Transportation(立地と交通)
    公共交通機関へのアクセス、駐輪設備、駐車場の最適化など、建物の立地が移動手段・環境負荷にどのように影響するかを評価します。渋滞緩和やCO₂排出削減につながる計画が重視されます。
  2. Sustainable Sites(持続可能な敷地)
    建設地の生態系保護、雨水管理、ヒートアイランド低減など、敷地そのものの環境性能に関わる項目です。周辺環境への影響を最小限に抑える工夫が求められます。
  3. Water Efficiency(水効率)
    節水型器具の導入、雨水・雑排水の再利用、屋外散水の削減など、水資源の効率的利用を評価します。特に近年は水不足問題への対策として重視される傾向があります。
  4. Energy and Atmosphere(エネルギーと大気)
    建物の省エネ性能、空調設備の効率、再生可能エネルギー導入、エネルギーモニタリングなど、最も配点の大きいカテゴリです。CO₂排出削減に直結するため、評価への影響が大きい分野です。
  5. Materials and Resources(材料と資源)
    リサイクル材の活用、環境負荷の少ない建材選定、施工中の廃棄物管理などを評価します。建物のライフサイクルで発生する資源消費を減らすことが目的です。
  6. Indoor Environmental Quality(室内環境の質:IEQ)
    空気質、換気量、化学物質の削減、自然光の取り入れ方、温熱環境など、室内での快適性と健康性を評価します。オフィス・教育・医療施設では特に重要視されます。

これら6分類に加えて、地域特性に応じた加点項目「Regional Priority」などが設定されることもあります。LEEDは建物・敷地・利用者のあらゆる側面を総合的に評価するための多層的な仕組みである点が、日本のCASBEEなどと比べても特徴的です。

日本におけるLEED事例

日本国内でLEED取得プロジェクトは確実に増加しており、特に大規模再開発・外資系企業オフィス・教育医療施設での採用が目立ちます。また、国内では LEED NC(新築部門)でPlatinum認証を初めて取得した建物 も登場し、国際基準を満たす建物づくりが本格的に広がり始めています。ここでは、元記事の情報をもとに、各プロジェクトが「どの部門(レーティングシステム)で、どの認証レベルを取得したか」を明確にしながら紹介します。

大規模再開発(虎ノ門・麻布台)

虎ノ門・麻布台プロジェクト(Azabudai Hills)は、LEED ND v4 Plan(Platinum) を取得した、日本を代表する街区開発プロジェクトです。個別の建物単体ではなく「街区全体の持続可能性」を評価するND(Neighborhood Development)部門で、日本初のPlatinum認証取得となりました。

約8.1ヘクタールの広大な敷地では、歩行者中心の安全な動線設計、広大な緑地の整備、生物多様性の保全、公共交通機関への高いアクセス性などが高く評価されています。住宅・オフィス・商業施設・レクリエーション・教育施設といった複数用途が融合する“ミクストユース”の構成も、街区の持続可能性向上に寄与しています。

また、エリア内の複数建物で LEED BD+C の活用も進んでおり、建物単体の環境性能向上と街区全体のサステナビリティをセットで実現しています。都市再開発におけるLEED活用の先進事例として位置づけられています。

オフィスビル(YKK 80ビル)

YKKグループ本社である YKK 80ビルは、LEED BD+C(Core & Shell)Platinum を取得した、日本初のCore & Shell部門Platinum認証ビルです。建物の“外装・構造・共用部”といった枠組みを評価するCore & Shell分野において、国内で最高ランクの評価を得た先駆的プロジェクトです。

同ビルでは、ダブルスキンファサードによる日射遮蔽・断熱性能の強化、高効率空調システムと照明制御、自然採光の積極的活用など、環境性能と運用効率を両立させる設計が特徴です。また、雨水利用や再生可能エネルギー活用といった取り組みも行われ、国内のオフィスビルの中でもトップクラスの環境性能を実現しています。

教育施設(順天堂大学 新研究棟)

順天堂大学本郷キャンパスに建設された新研究棟は、LEED NC(New Construction)Platinum を取得した国内初の大学施設です。LEED NCは新築建物を対象とし、設計から施工、竣工後の運用を見据えた総合的な取り組みが求められます。

評価の中心となったのは、研究活動に適した自然採光・通風の導入、温熱環境の均一化、空気質改善を目的とした高性能フィルターの導入など、快適性と健康性を両立させた室内環境の設計です。また、省エネ性能の高い空調・照明・断熱材の採用により、大幅なエネルギー使用量削減を実現しました。

医療施設(順天堂医院 B棟ほか)

順天堂医院の新棟では、医療施設特有の空調・衛生計画を踏まえつつ、LEEDの考え方を取り入れた環境改善が行われています。具体的な認証レベルは建物によって異なりますが、医療施設では特に IEQ(室内環境)・WE(水効率)・EA(エネルギー性能) のクレジットが取得しやすく、患者・医療従事者にとって快適かつ安全な環境づくりが評価されます。

教育・医療施設は従来CASBEEで評価されることが多かったものの、近年は国際基準による“室内環境の質”が重視されるようになり、LEEDの取得例が着実に増加しています。

他の環境認証制度との違い

CASBEE・BELS・WELLとの比較

日本ではCASBEEやBELSなど、複数の建物評価制度が活用されています。

  • CASBEE:日本の代表的な建築環境総合性能評価。自治体による届出制度にも使われる。
  • BELS:建物の省エネ性能を星で評価する制度。住宅や小規模建築でも普及。
  • WELL:建物の“健康性”に特化した国際基準。

LEEDは「環境性能全体」を国際基準で評価できる点が最大の違いです。

使われる用途の違い

  • 国内開発の標準 → CASBEE、BELS
  • 外資系企業・グローバル開発 → LEED、WELL

プロジェクトの性質や参画企業の意向により制度が使い分けられています。

LEEDを知ることのメリット

建物の環境性能を多角的に理解できる

LEEDは幅広いカテゴリを扱うため、設計・施工・運用のどの段階でも環境配慮が必要なポイントを体系的に整理できるようになります。環境性能の強み・弱みを見極める視点が身につきます。

海外基準の“考え方”に触れられる

海外企業のオフィスやグローバルプロジェクトでは、LEEDが「共通言語」として扱われます。外資系企業との仕事が増えるほど、国際基準を理解している価値が高まります。

環境配慮型プロジェクトの理解が深まる

LEEDは設計から施工、運用まで一貫した取り組みを求めます。そのため、各フェーズで「どの環境項目が影響するのか」を理解しやすくなり、実務での指摘力・判断力向上につながります。

転職に活かせるポイント

環境配慮への関心が高まるなか、LEEDの知識は“専門性”として評価されるケースがあります。特に、

  • どの評価カテゴリに関わる業務を担当したか
  • 省エネ・室内環境・素材など環境性能を意識した提案をした経験
  • 運用データの改善や設備効率向上に携わった経験

は職務経歴書でアピールしやすいポイントです。

また LEED GA/AP といった資格は、環境建築を体系的に学んだ証明となり、外資系企業や環境配慮型プロジェクトへの関与を希望する場合にプラスに働きます。

まとめ

LEEDは建物の環境性能を総合的に評価する国際基準であり、環境配慮が求められる現代の建築・不動産分野において重要性が増しています。日本国内でも取得例が着実に増えており、制度を理解することでプロジェクトの見方や判断軸が大きく広がります。

環境性能への要求が今後ますます高まる中、LEEDの仕組みを押さえておくことは、実務に携わる上で大きな強みとなるでしょう。

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