【2025年最新】サステナブルな建築トレンド「木造の中高層建築」の現状と事例を解説

【2025年最新】サステナブルな建築トレンド「木造の中高層建築」の現状と事例を解説

建築業界で長らく主流とされてきたのは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造による構造形式でした。

特に中高層建築においては、重量構造であることが安全性や耐火性を担保する前提とされてきたため、木材の活用は限定的でした。

しかし、ここ数年、木造の中高層建築が国内外で脚光を浴び始めています。特に欧米では高層木造ビルがトレンドになり、日本においても同様の流れが進みつつあります。

建設業界での中長期的なキャリア形成を考えるうえで、こうした業界のトレンドを知っておくことは非常に重要です。今後の建設業界で求められる力やチャンスが広がっている分野を知ることが、将来の選択肢を広げるヒントになります。

今回は、皆さんが今後のキャリアの視野を広げる一助となるよう、木造中高層建築の動向や技術的進化・制度改革・将来性について掘り下げて解説します。

木造建築のこれまで

日本は国土の約66%を森林が占める森林大国であり、資源が豊富にある点や、日本人が木を好む点からも、日本は木造建築と相性がいい国と言えます。

歴史的にも法隆寺や多くの社寺建築など、木造による大規模建築において世界でも随一の技術を培ってきました。

しかし、近代化以降は耐震性や耐火性、そして都市部での高密度開発のニーズから、鉄筋や鉄骨の構造が主流となり、木造は主に戸建住宅にとどまっていました

なぜ今、木造中高層建築が注目されているのか?

建築資材としての木材が再評価されている要因には、以下のような社会的・技術的背景があります。

木造技術CLTの登場が技術的転換点に

これまで木造建築が中高層に適さないとされた理由には、耐火性や構造強度への不安がありました。こうした課題を克服するために登場したのが「CLT(Cross Laminated Timber)」です

CLTはひき板を交互に積層・接着した構造材で、耐震性・耐火性・耐久性のすべてにおいて高い性能を発揮します。欧州では中高層建築への導入が進み、生産量も急増し、日本でも大手ゼネコンやハウスメーカーが本格採用を検討しています。

日本国内においてはCLTの知名度や実績こそ欧米に比べて低いものの、震度7相当の実験に耐えた記録や、一定時間の耐火性能も認められたことで、今後の普及に期待が寄せられています。

耐火性の向上

建築基準法では防火地域などにおいて5階建て以上の建物に木材を用いる場合、構造体に「2時間耐火性能」を持たせることが義務付けられています

これは、中高層ビルでは上層階からの避難に時間を要するため、構造体が火災に耐えられる時間を確保する必要があるためです。

CLTの表面を強化石膏ボードや軽量気泡コンクリートなどで適切に被覆する技術が開発されたことで、CLTで2時間耐火構造を作れるようになったことも、​​木造中高層建築が普及してきている理由の一つといえます。

法律緩和による木材利用の推進

技術革新に加え、制度面でも木造建築の推進が進められています。

2010年には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、公共建築における木材利用の優先が明文化されました。さらに2016年のCLTに関する建築基準法告示の改正により、構造計算や審査手続きが簡素化され、CLTを含む木造建材の使用が大幅にしやすくなりました。

これにより、これまでハードルの高かった中高層建築での木材利用が、実務レベルでも現実的な選択肢となりました

木造×中高層のメリットとは?

国産材の活用と林業の再生

CLTは、これまで建材に適さないとされていた木材も再活用できるため、未利用資源の有効活用が可能です。建築業界がこうした木材を積極的に採用すれば、林業の活性化や森林保全にも寄与します。

工期の短縮と現場の省力化

木材は加工・搬入が容易で軽量なため、施工のスピードアップに貢献します。鉄骨やRCと比較して躯体工事の工程が短縮される傾向にあり、全体の工期や人件費にも好影響を与える可能性があります。

カーボンニュートラルへの貢献

木造建築は環境に配慮した建築手法として注目されていますが、その効果は感覚的なイメージにとどまらず、科学的な裏付けも得られつつあります。

イェール大学の研究者らが発表したデータによると、木造建築の普及は温室効果ガスの削減に寄与する可能性があるとされています
(参考:WIRED「木造の高層ビル」が増えれば、気候変動にも対抗できる? 論文で示された木造建築の有用性

現在、建築に広く用いられている鉄やコンクリートは、製造プロセスにおいて大量のエネルギーを消費し、その過程でCO₂を多く排出します。一方で、木材は生育中に光合成によってCO₂を吸収します。

森林が持続可能な形で管理されていることや、使用後の木材が他の建材などに再利用されることなど、一定の条件が必要となりますが、もし都市部に木造建築が広く導入されれば、年間で最大6.8億トンのCO₂を大気中から吸収することが可能だという試算もあります

これは、鉄やコンクリートによる建築を続けた場合に排出されるとされる年間約6億トンのCO₂と比べても、環境負荷の低減効果が大きいことを示しています。

このように、木造建築は持続可能な都市づくりや地球環境の保全においても大きなメリットがあります。

国内で進行中の木造中高層プロジェクト

ここでは、日本国内で計画されている先進的な木造高層建築の事例をご紹介します。

日本橋で進む国内最大級の木造オフィスビル(三井不動産・竹中工務店)

三井不動産と竹中工務店が2026年竣工を目指して日本橋で計画中のオフィスビルは、木造と鉄骨のハイブリッド構造を採用。地上17階・高さ約70mという規模で、完成すれば国内最大・最高層の木造建築になります。

構造部材には、竹中工務店開発の耐火集成材「燃エンウッド」を使用し、従来の鉄骨造と比較して約20%のCO2排出削減効果が期待されています。

画像引用:三井不動産 ニュースリリース「三井不動産と竹中工務店、日本橋に国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビル計画検討に着手(https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2020/0929_02/

70階建の木造建築の開発構想(住友林業)

住友林業は2041年を目標に、地上70階・高さ350mの木造超高層ビルの実現を目指す研究技術開発構想「W350計画」に取り組んでいます

「街を森にかえる」をコンセプトとしたこのプロジェクトは、木材と鉄を組み合わせたハイブリッド方式を採用予定で、木材の使用比率が約9割と非常に高く、建築物全体に木の存在感を強く打ち出す設計が検討されています。

現在は、超高層の木造建築に向けて必要となる技術的課題の洗い出しが進行中です。

日本国内で最も高いビルである「あべのハルカス」(約300メートル)を上回る規模を想定しており、このプロジェクトが実現すれば、日本が木造超高層建築の分野で世界をリードする存在となる可能性があります。

画像引用:住友林業HP ニュースリリース(https://sfc.jp/information/news/2018/2018-02-08.html

技術普及の壁と今後の可能性

木造中高層建築の普及には乗り越えるべき課題も存在します。

コスト面のハードル

現時点ではCLTの加工コストが高く、材料費だけで見るとRCや鉄骨造に比べて不利な面もあります。ただし、今後の量産化や生産技術の向上によりコストダウンが進むと考えられています。

性能の更なる向上

高層化すればするほど求められる耐火性能・構造安定性・風や地震への対応能力は上がります。CLTや木造ハイブリッド構造における性能向上の研究は、引き続き業界全体の重要課題です

まとめ

いかがでしたでしょうか。

木造中高層建築は、まだ発展途上の分野であるため、設計・施工・構造計算・建材開発など、さまざまな技術職が新たに求められる分野です。これまでRC造やS造を中心にキャリアを積んできた方でも、木造プロジェクトに参加することで、新たな技術的知見を得るチャンスがあります。

特に、環境負荷軽減やサステナブルな社会構築に貢献したいという志向を持つ方にとっては、自身の技術と社会的意義がリンクする貴重なフィールドになるでしょう。

土木建築業界での中長期的なキャリア形成を考えるうえでは、業界が直面している課題やその背景、そして今後の方向性を正しく理解しておくことが重要です。
業界のトレンドや技術動向を把握することで、変化の中で自らの立ち位置を再確認することや、将来のキャリア戦略を立てる参考になります。

木造中高層建築に興味を持った方は、これからのキャリアを切り開くヒントとして活用してみてください。

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